「正否」「当否」「適否」の3つの世界を行き来する

いなたくんへ

人生をやり直せたら、というのは誰もが思うことだろう。
高校の部活、受験する大学、あのときあの人とこうしていたら。

そうした「if」のひとつには職業選択もあるだろう。
私はいま知財業界に身を置いているが、人生をやり直したとしてもう一度知財業界を目指すだろうか。弁理士試験を受けるだろうか。これは何度も考えてしまうテーマだ。

正直、「強くてニューゲーム」なら次のリプレイ人生でも知財に進んで「オレTUEEEEEEEEEE!!!!」やるのも悪くないけど、脳みそリセットされて再度あの試験とか下積みとかやるのはちょっとな……という気もしないでもない。

とはいえ、「知財業界に入ってよかった!」と思えることは確実にある。それはそれ以前の人生との比較において、私が知財業界に入って初めて体験できたことだ。

後で説明する通り、実際には知財以外の職種でも多かれ少なかれ似た考え方はするかもだけど、私としては、それは知財という業界に入ることで初めて得られた景色だった。

ということで今回はそんな「初体験」の話をしたい。

本日7月1日は弁理士の日。@dokugakuさんのブログ「独学の弁理士講座」にて、弁理士の日を勝手に盛り上げる「弁理士の日記念ブログ企画2019」なる企画が開催され、今年のテーマは「知財業界の初体験」なので、私もこの記事にて参加する次第である。


技術は正否を、法律では当否を、経営では適否を考える

私は理系大学に進学したものの、このままエンジニアに進むのでいいんだっけ、な疑問に駆られた。特に、大学1年次にプログラミングやHW製作を行う同級生を見て「勝てない」と思ったことが大きかった。

他の友だちにはない、何か強みが必要だ。そうだ、何か資格を取ろう。
ということで安易に資格試験に逃げ、弁理士になり、せっかく弁理士なんだし知財に進むか、ということで知財業界に入った。

そういう成り行きではあったのだけど。知財業界は私に新しい景色を見せてくれた。
端的には、「正否」「当否」「適否」の3つの世界である。

正否:科学技術は宇宙の法則の上に成り立っている

エンジニアリングは基本的には科学や技術や科学技術に立脚していて、それは再現性のある法則の上に成り立っているということである。つまり、純粋な技術の問題においては、「正しいか否か」を答えることができる。

もちろん技術の問題に落とし込むこと自体が難しかったり、未解明でわからないこと、統計的にしか答えられないこともあるのだけど、基本的には、そこには「正否」が存在する。

私がいた理系の世界というのは「正否」の世界だったし、大人になった今も、当時の友人たちは「正否」の世界に生きていると思っている。だから彼らは正直だし、合理的だ。

当否:法律は現実世界の規定を目指す

プログラムによく似たものに「法律」がある。ある変数(法律要件)に応じて出力(法律効果)が定められ、ある条文は定義を宣言し、またある条文は他の条文を参照し、あるいは法律そのものが他の法律のサブクラスであったりする。

法律がプログラムと異なるのは、それが現実という複雑系を扱う点だ。法律は揺れ動く現実世界の全てを記述することはできなくて、人間の起こす様々な事象を、あるいは人間特有の多面性を、なんとか「解釈」を用いてこなそうとする。

必ずしも唯一無二の正解はなく、それが「妥当であるか否か」の当否の判断があるのみである。

適否:経営判断に正解はない

最も自由度が高いのが経営の判断だ。経営、というと大仰だが、例えば仕事が終わって疲れて家に着いて「何をするか」とか、じゃあビール飲んでくつろぐことに決めたと思ったら風呂場が爆発して黒ずくめの不審者が闖入してきて「さあどうするか」とか、環境や他者がある中での、その場その場での判断である。

そこに正解はなく、当否を決める定式的な基準もない。あるのは、それがその状況において「適切であるか否か」の判断である。


知財業界で初めて3つの世界に触れた

説明するまでもないが、知財は「正否」「当否」「適否」の3つを扱う仕事である。

知財業界に入ることで初めて、私は「正否」のみならず「当否」「適否」の世界に触れた。
判断基準が変われば人も変わる。それぞれの世界には、それぞれの考え方に適応したそれぞれの人たちがいて、そうした人たちとの関りも私には新しかった。

そんなの知財に限らないでしょ

「正否」「当否」「適否」の3つを使うのは何も知財に限らないぜ、とツッコまれれば、それはその通りである。

例えばエンジニアでも、標準仕様や準拠法は押さえるだろうし(当否の判断)、経済活動である以上は外部環境や競合は調べて価値提案キャンバスくらい描くだろうし(適否の判断)、いっしょである。

広告とか、報道とか、あらゆる仕事においてもこの3つの世界に関わることはあるだろう。

その点では、これは知財の専売特許(知財だけにwww)とは思わない。あくまで私が私的な体験として得た感動である。

とはいえ知財

そう。とはいえ、である。とはいえ知財は特別な立ち位置にあると思う。
知財法の専門家として当否判断に立脚しつつ、様々な領域の技術を広く扱い、かつその活動は競争戦略上の要請に直結する。

足場が「当否」のところにあるのもポイントで、技術に対しては、純粋な技術的解決から経営戦略上の差異化要素(それは必ずしも技術的に高度とは限らない)まで、抽象度のダイナミックレンジを広く持つ。

さらに言えばこの「当否」は、その技術的解決が果たしてクリティカルであるか、という、技術の価値そのものを(ひとつの側面として)測るものであったりする。

そもそも弁理士として当否の世界の奥深さを知り、その上で正否の世界を広く俯瞰し、適否の世界と深くかかわる、ということは、知財業界に入ることで得られた私の「初体験」であった。


人生をやり直せたらまた知財業界に進むか?

さて、改めて冒頭の仮説に戻ろう。人生をやり直したとして、もう一度知財業界を目指すだろうか。

私としては、エンジニアに進まなかったことには未練がある。やっぱり自分で物を作る、というのはやりたいんだよね。ソフトウェアであれば(今やハードウェアであっても)そのハードルは限りなく低くなっていて、知財業界に入らずそちらに進んでいたら、色んなものを作っていただろうと思ってしまう。

その一方で、モノを作るのに重要なのは実装工程そのものよりは、その一段前にあるということもわかってきて、そこではむしろ知財の経験をこそ活かせることも多分にありそうなので、そうするとまあ知財も悪くなかったかな、とも思ったりする。

 

ということで、「弁理士の日記念ブログ企画2019」の一環としてテーマ「知財業界の初体験」で思うところを述べてみた。

前回の参加記事はこちら(テーマは「知財業界でホットな物(又は新しいもの」)。

 

  

 

Pocket

2040年の17歳・鷲尾野ゆずりはの1日を考える(5)ゆずりはのキャラ設定と適職診断やってみた

いなたくんへ

未来予測のアプローチの1つとして、ある年代の具体的なペルソナを設定し、その生活レベルで考えてみる。というコンセプトでスタートした「ゆずりはPj」。2040年の高校2年生・鷲尾野ゆずりは(17)の目線で、その日常を考えていく。

第一回と前回記事はこちらから。

さて今回なんだけど、最近私の中で大流行のパーソナリティ理論に基づき、ゆずりはのペルソナ設定をさらに深めてみたいと思う。パーソナリティ理論とは、人のパーソナリティをいくつかの評価軸に写像し、特性や類型を定義したもの。統計的有意性が学術的に担保された性格診断、と言えばわかりやすいか。

関連記事はこちら。

また、パーソナリティ特性に基づき各性格の適職を整理した『あなたの天職がわかる16の性格』(2016)がよくできていたので、こちらを参考に2040年の職業観と、そのゆずりはへの影響も考えてみる。

Summary Note

ゆずりはのパーソナリティは「主人公」型(ENFJ型)

ゆずりはは自分のパーソナリティにどう向き合うのか

ゆずりはの適職はAIに代替されるか


ゆずりはのパーソナリティは「主人公」型(ENFJ型)

さてパーソナリティ理論。ビッグファイブやMBTI法が有名だが、今回は分類論を使いたいのでMBTI法を採用した。

MBTI(Mayers-Briggs Type Indicator)はユングのタイプ論をもとにした国際規格に基づく性格検査手法である。次の4つの評価軸に基づき、人を16種類に分類する。

  • 外向(E)/内向(I):他人といるか独りでいるか、どちらが元気が出るか
  • 五感(S)/直観(N):五感(現在)と第六感(将来)のどちらに注意を払うか
  • 思考(T)/情緒(F):決断にあたり感情を優先するか否か
  • 決断(J)/柔軟(P):早めに決断するか、情報を取り入れてから決断するか

次のサイトではWeb上で簡単に自分の16分類を知ることができるのでおススメ。

性格因子を決める

ではさっそくゆずりはの性格を決めていこう。決め方は「私の好み」である。

まず「外向」か「内向」か。私自身は内向型だけど、なんか外向型のが楽しそうだし「外向」とする。
次に「五感」か「直観」か。現実は直視しないというか現実にこだわりすぎない方が好みなので「直観」で。
「思考」か「情緒」かでは、理屈っぽいのは嫌なので「情緒」。
「決断」か「柔軟」も、優柔不断は面倒くさいので「決断」とする。

ということで鷲尾野ゆずりは(17)の性格因子は次のように決めた。ENFJ型である。

  • 外向(E)…他人といると元気が出る
  • 直観(N)…第六感や将来のことに注意を払う
  • 情緒(F)…論理よりも感情を優先して判断する
  • 決断(J)…すぐに判断を行う

ENFJ型は『16 Personalities』によれば「主人公」型に分類される。


『16 Personalities』より

またMBTI法に基づき16分類ごとの適職を整理した『あなたの天職がわかる16の性格』(2016)では「チームプレイヤー」という名称がつけられている。『あなたの天職がわかる~』ではENFJ型の性格が詳細に記されていたため、ここでは『あなたの天職がわかる~』から、鷲尾野ゆずりは(17)の性格を記述したい。

ENFJ型の特徴

『あなたの~』によれば、ENFJ型は端的には「人の幸福を願う人」「PRが得意な社交家」と表現される。キーワードは「人助け」「誠実」「協調性」「社交上手」。

おお、なんかものすごくイイ人そう。いいじゃんいいじゃん。
というか私とはかけ離れた性格でむしろ眩しい。

ENFJ型は例えば次のような特徴を持つ:

  • 人間が大好きで、人への思いやりが深く、人との付き合いを大切にし、いつも人のことを気遣っている
  • 穏やかで寛容で、周囲の人と協調して円滑な人間関係を築くことができる
  • その場にふさわしい行動を心得ており、礼儀正しく、社交上手で、人から好感を持たれる
  • リーダーの資質を備えており、人気者で、時にカリスマ的資質を備える
  • コミュニケーションをはかるのが得意で、たいてい話し上手で、感情を表現豊かに伝えることができる
  • 人に共感をあらわにし、相手を理解していることを示す
  • 人の気持ちがよくわかり、責任をもって相手の世話をしようとする
  • 部下や生徒の才能を伸ばすのが上手い
  • 自分には厳しく、自分のことをつい批判しがちだが、他人には寛容で、人前で誰かを批判することは滅多にない
  • 自分の理想や価値観を大切にする
  • 尊敬する人には誠実を尽くす
  • 大義名分に忠実で、組織の一員としてまじめに働く
  • 規律を守って暮らすのを好むため、組織の一員でいると居心地が良い
  • 実際の状況を考慮するよりは、自分がどう感じているかを基盤に判断を下す

ENFJ型の短所

一方、例えば次のような短所も併せ持っている:

  • 人に同情しすぎたり、感情移入しすぎる傾向にあるため、つい人が抱えている問題に深入りし、干渉しすぎる
  • 人に期待しすぎて幻滅することもある
  • 失意が重なると、自分は感謝されていない、評価されていないと感じ、引きこもってしまう
  • 周囲と協調して暮らしていきたい願望が強すぎるため、自分の欲求を見過ごしたり、現実の問題を無視したりしがち
  • 同情心が強すぎて相手を批判できないこともあるし、相手の感情を傷つけまいとするあまり、重要な事実が眼に入らない場合もある
  • 対立や逃走を避けようとするため、平等で気持ちのいい無理のない人間関係を維持できないことがある
  • 自分が信じている者にマイナスとなる情報があっても、それを見ないようにしたり、無視したりしがち
  • 褒められれば素直にうれしいが、ちょっとした批判にも傷つくため、「怒りっぽい人間」「扱いにくい人間」とみられることもある
  • せっかちなところがあり、必要な情報をすべて集めないうちに慌てて決断することもある


ゆずりはは自分のパーソナリティにどう向き合うのか

すでに挙げた通り、2040年においては教育のあり方が今よりも変わっている可能性が高い。具体的には、データドリブンの適応学習や、アクティブラーニングが普及している。こうした個人化された学習は、対象者の個性を特定することが前提となる。

すでに高校生になったゆずりは自身も様々な場面で、自信のパーソナリティの特徴を知らされているだろう。それは必ずしもMBTI法によるものではないだろうが、ゆずりはは自身の長所と短所、特性をきちんと自覚したうえで、他人との関りや、将来のことを考えている。

また、教育システムや、あるいはゆずりはに対して種々の推薦・助言を行うAIエージェントのようなサービスも、ゆずりはのパーソナリティ特性を踏まえたパーソナライズがされている。

強みを伸ばし、弱みを減らす

AIエージェントによる推薦は、商品推薦だけでなく、日々の行動にも及ぶかもしれない。基本的にはゆずりはの強みを伸ばし、弱みを減らす助言を行う。

例えば学習。2040年の進研ゼミは、ユーザのパーソナリティに応じて個別化した支援を行う。コミュニケーションを好むゆずりはの場合、他者と協調しての学習や、ゆずりはが他のユーザに教えることを通して学ぶ、といったアプローチが良いかもしれない。

あるいはストレス。ゆずりはの場合、「きちんと人に感謝してもらえないこと」「対立が起こること」がストレス要因。そして実際にゆずりはがストレス状態にあるとき、AIエージェントはこれら観点で原因を伝え、適切なリカバリ方法を示すだろう。

スクリーンの景色が変わる

ターゲティング広告も、パーソナリティ特性に応じてパーソナライズされる。

ゆずりはの場合、人付き合いやコミュニケーション、あるいは自分の理想や価値観を重視するので、これに刺さるプロモーションが打たれる。

この時代においては、同じ商品の宣伝でも、友達同士で違うものが配信される。さらに言えば、スクリーンを通して覗く仮想世界は人それぞれに違った景色になる。

気になる男子の攻略法も

ゆずりはに気になる男子ができたとき、同アプローチすればよいだろう。相手のパーソナリティがわかれば、その攻略法も見えてくる。

簡単なところでは、例えば相手が「思考」型因子をもつなら論理的に、「情緒」型紳士を持つなら感情的に反応すると、話が合いやすくなる。このように相手の性格を知ることで、相手をハックすることができる。

こう考えると、パーソナリティ特性は重要なプライバシーになるかもしれない。

しかし異論も

色々便利そうなパーソナリティ特性。しかし、それがどこまで活用されるかには疑義がある。

ひとつは、こうしたフィードバックがゆずりはの人格にもたらす影響への懸念だ。ENFJ型特有のフィードバックを受け続けると、過学習が起こる可能性がある。つまりENJF型の性格が、「より強いENFJ型」に深まってしまう恐れである。

中学・高校の多感な時期に、そのように人格の幅を狭めてもよいのだろうか。むしろ価値観や考え方の幅が拡がるアプローチも重要だろう。

また後述の適職判断についても、パーソナリティ理論に基づくアドバイスは可能であるが、将来の選択を固定化してしまう点には注意が要る。

なおパーソナリティによらず勉強は必要

アクティブ・ラーニング等の手法により学習が個人化されるとしても、それは「学習方法」の個人化であって、学習対象が変わるわけではない。

後述の適職判断が「働き方」に焦点を当てつつ、職業そのものを限るわけではないように、いずれのパーソナリティにも、様々な職域において適した役割を持つことができる。

そしてその可能性を拡げるにあたり、ベースとなる基礎学力は重要であり続ける。つまり、このパーソナリティだからこの教科は力を抜いてよい、という話にはならない。どのようなパーソナリティであっても、すべての強化をきちんとこなせる必要はある。


ゆずりはの適職はAIに代替されるか

『あなたの天職がわかる16の性格』がおもしろいのは、パーソナリティ毎に適した仕事を整理している点である。ただしすでに述べた通り、具体的な職業を挙げるというよりは、適した「働き方」に焦点を当てた説明としている。

具体例を見てみよう。本書によれば、ENFJ型は次のような仕事が向いている。

コミュニケーション

  • 人を理解し、喜ばせたいと思っているので、如才なく気を配り、外交手腕を発揮する
  • かた苦しい書き言葉よりも、くだけた口調で話すのを好む
  • ただし、多くはよき書き手でもある
  • 人と会い、情報を集め、取材を行い、扱っている問題の個人的な側面を理解したり、裏に隠れている事実を発掘したりする経過を好む
  • クライアントや同僚たちとすばやく良好な人間関係を築くことができ、説得力にも長ける
  • エージェント、プロデューサー、リクルーター、政治家としても有能
  • カリスマ性のあるリーダーになり、グループを円滑に率いられる

カウンセリング

  • 他人が自身を見つめなおし、満足できる幸福な人生を送る役に立ちたい
  • やさしくて思いやりに溢れた有能なセラピストになる資質を備える
  • 熱意あふれる聖職者になり、自分の価値観を人と分かち合い、持てる力を存分に発揮する人も多い

教育/福祉

  • 人と直接かかわり、成長と発達の手助けができるので、多くが教育関係の仕事に興味を持つ
  • 具体的な物事について教えるのを好み、自分なりの解釈や表現を付け加える
  • どんな意見も拒絶されることのない、調和のとれた協力的な職場で働きたい
  • 自分や他人の生活の質を向上させる機会があるため、福祉の仕事にもひかれる

ビジネス/コンサルティング

  • 人と親密な協力関係を築きながら一人で自立して働けるのでやりがいを覚える
  • 小規模グループで責任者となるのを好み、新しいやり方を考え、様々なことに挑戦していこうとする

AIに代替できるか

ゆずりはの適職にはコミュニケーションや身体を使ったものが多い。これは2019年現在のAIが苦手とするものである。が、2040年だとどうだろう。

例えば感情のような曖昧なものは、人間には定量評価が難しい。しかし現象としては、感情は微妙な表情変化、体温変化などの形で表出されていて、AIならばこれを読むことができる。つまり、AIは人間以上に人間の感情を計れる。

すると「相手の感情をきちんと汲み、適した働きかけをする」という能力も、人間よりもAIの方が長けてくる。これは、ゆずりはに向くとされるプロデューサー、リクルーター、カウンセラー、教育、コンサルティング、といった様々な職種においてキーになる能力のひとつだ。

では、2040年においてゆずりはの適職はAIに奪われているのだろうか。そんなことはないと思うので、ここでは「カウンセリング」を例に考えてみる。

一部の仕事は奪われる

機械には以下の特徴がある。

  • コミュニケーション・コスト(会いに行くコストを含む)が不要
  • 正確な判断がなされる
  • 場合によっては人間よりもセキュア(口を滑らさない)
  • 担当者によって相性が合わない、という個人差が起きない

カウンセリングというセンシティブな仕事において、機械が一定水準以上の信頼性を持つならば、むしろ人間よりも機械に頼った方が気が楽、というニーズは必ずある。

機械に対するよくある批判に「機械は人間より冷たい」というものがある。でも研究によれば実際には、人間は機械にも十分に感情移入でき、愛するペットや愛する人と同程度に愛情を注ぐことができる。したがって人間のカウンセラーにも十分温かみを感じられる。

また堅実なところでは、本格的なカウンセリングに至る前の一次判断や、企業の健康診断のようなB2B用途など、自動化・効率化が求められる場面でAIカウンセラーは活躍しうる。

しかし、すべての仕事はなくならない

AIが能力的に人間のカウンセラーに達するとしても、人間を扱う仕事である以上、「担当者が人間であってほしい」というニーズは必ず残る。それはそれが人間だからだ。

それにフレームの問題もある。カウンセラーの仕事は決して定型的なものではなく、相手の状況に合わせて、環境の状態に応じて、カスタマイズしたサービスを提供しなくてはならない。

仮にカウンセラーの仕事の9割をAIが代替可能であったとしても、残りの1割を踏まえて包括的にケアできることが重要だ。これはカウンセリング以外のすべての仕事に言えるだろう。肝心なところで気が回らなかったり、顧客特有のイレギュラーな処理が「例外なのでできません」では話にならない。そこで試行錯誤して解決に繋げられてこそ、仕事は全体としてきちんと回る。

あらゆる仕事において、この「残り1割」を支える役割を人間が担うだろう。この人間は、仕事の9割についてはAIをツールとして活用しつつ、責任者としてプロジェクトを進める。

ゆずりはの適職にみる「人間の仕事」

あらためてゆずりはの適職を見てみよう。どの仕事にも、人間にしかできないニーズが残る。

  • プロジェクトの当事者、組織の責任者、発意者とは人である(プロデューサー、リーダー)
  • クライアントは人間に話を聞いて欲しい(カウンセラー)
  • 模範としての教師は生徒と同じ人であることが必要(教師)
  • カスタムメイドなソリューション構築なので人が中心にいることが効率的(コンサルタント)

そしてこの観点から、ゆずりはは自分の将来を考えていくことになる。

とは言えまだ高校生のゆずりはにとって、それはずっと遠い未来の話だ。2040年においては、授業や宿題や、家族や友だちとの日常に浸っていて、まだ自分が働く姿も想像できずにいるだろう。

 

次回はこちら。

過去の議論はこちら。

ブレストの事前調査としてまとめた記事はこちら。

 

  

 

Pocket

2040年の17歳・鷲尾野ゆずりはの1日を考える(4)価値感とか学習環境とか諸々調査結果のまとめ

いなたくんへ

未来予測のアプローチの1つとして、ある年代の具体的なペルソナを設定し、その生活レベルで考えてみる。というコンセプトでスタートした「ゆずりはPj」。2040年の高校2年生・鷲尾野ゆずりは(17)の日常を月イチくらいで検討していくつもりだったが、気付けば前回検討から1年近くが経ってしまった……。いや、何もしてなかったわけじゃないのよ……。

一応おさらいすると、第1回ではゆずりはの家族構成やプロファイルの決定、アクションアイテムの整理をした。

第2回では、2040年の国際情勢や日本の社会をまず予想し、ここからゆずりは目線に落とし込んで考えてみた。

そして前回となる第3回では、ゆずりはの家族構成を再整理したほか、2040年の勉強の仕方や職業について掘り下げてみた。

このプロジェクトは基本的にはブレストベースで、2040年を生きるゆずりはになりきってあれこれ机上妄想していく方針だけど、とは言えネタがないとアイディアも出せない。ということで外堀を埋めるべく、いくつかの調査を宿題としていた(第3回末尾参照)。

そこで今回はおさらいを兼ね、それぞれの調査結果を整理してみる。

Summary Note

1.2040年の女子高生の価値観はどんな感じか

2.SNSの普及は若者の政治意識をどう変えるか

3.2040年の技術水準はどの程度か

4.2040年の教育環境はどう変わるか

5.2040年の仕事はどんなものになっているか


1.2040年の女子高生の価値観はどんな感じか

第2回では「世界情勢」や「日本の社会情勢」といったマクロな予想をしたが、「あるペルソナの1日」みたいなミクロな予想に落とし込むには、当人の価値観も考慮していく必要がある。

では2040年の女子高生はいかなる価値観を持っているのか。うーん想像もつかない。そんなのわかれば苦労しない。

ということで困ったときには温故知新。1974年、1996年、2017年と、およそ20年毎の過去の様子を調べてみた。具体的には、国会図書館でそれぞれの年の『SEVENTEEN』及び『an・an』『non-no』を眺めて、普遍的な価値観、あるいは価値観の変化の方向性を探ってみた。これかなり骨の折れる作業だったのだけど、結果は次の記事にまとめた。

 
『月刊セブンティーン』1974年3月号及び『SEVENTEEN』1996年3月号,国会図書館より

詳細は記事を読んでいただくとして、結論としては次の3点に集約される。

  • 社会はいつの時代も歪んでいた
  • 読者の興味関心はいつの時代も、ごく身近な日常の明るいところに向けられていた
  • コミュニケーション手段が3時代の景色を決めていた

過去は美化されがちだが実際に振り替えると、1974年、1996年、そして2017年と、いずれの時代も社会の歪みや事件、世界情勢不安は起きていた。しかし『SEVENTEEN』の世界にはそうした「暗さ」は一切なくて、友だちが気になり、異性が気になり、自分をきれいにみせて、毎日を楽しく過ごしたい、という普遍的な日常が写されていた。

ゆずりはへの影響は

以前まとめた通り2040年の社会情勢は相当に末期的になる恐れがあるけど、ゆずりはの日常にはあまり影響しない可能性が高い。

一方、ポケベルやスマートフォン等、コミュニケーション手段は日常の景色を大きく変えており、2040年のコミュニケーションがどのようなものになるかは重要なイシューになりそうだ。


2.SNSの普及は若者の政治意識をどう変えるか

生活を変えたコミュニケーション手段といえば、昨今ではSNSの影響が大きい。SNSは思想的な分極をもたらすとされるのだけど、若い時期からネットに親しむ高校生も、その政治思想は過激化していくのだろうか。


経産省若手プロジェクト『不安な個人、立ちすくむ国家』(2017)より

ということで調べてみると、思想的な偏りが生じているのは主に高齢者で、若者はむしろネットの多様な言論に慣れ冷静である、という研究結果が見られた。

ゆずりはへの影響は

2040年のことなので、SNSとは異なる、新たなコミュニケーション手段が今後生まれる余地はもちろんある。が、少なくとも現行のSNSや、その延長としてのコミュニケーション空間に関しては、ゆずりはたちは政治思想的には冷静であると予想される。

というか上述のセブンティーン読み比べの結論でも書いたけど、政治とかそもそも気にしない。


3.2040年の技術水準はどの程度か

テクノロジーの未来予測はこのブログでも特に注目してきてるけど、色んな予想があって収拾をつけにくい。ということで英エコノミストの予測本『2050年の技術』(2017)をひとつの基準とすることにした。

例えば次のような内容:

  • 1.人類は自らのゲノムを編集しはじめる
  • 2.政府がわれわれの脳の裏口の鍵を要求するようになる
  • 3.畑には微生物が撒かれ、主要タンパク源は魚類になる
  • 4.燃料は牧場で生産される
  • 5.エネルギー問題は解決している
  • 6.2050年の兵器が戦争の姿を変える

網羅性はなかったけど、ゆずりはの2040年を考える上では、概ねこの本くらいの技術水準をリファレンスとして考えていくことにする。


4.2040年の教育環境はどう変わるか

2040年になっても教室で紙の本ひらいてみんなで朗読してるのかねえ? ということで、教育環境の未来についても調べてみた。

当初予定していた高校教師へのインタビューはできなかったのだけど、某大学教育学部で教師を育てる知人と議論する機会が得られたので、その結果を整理した。

こちらも詳細は上記記事を見ていただくとして、今後の学校教育をサマると、次のような予測が言えそう:

  • 1.学び方を教える「学校」は公教育として残り続ける
  • 2.先生の役割は「ファシリテートすること」に変化する
  • 3.「入り」としての概論を教える一斉授業も残る
  • 4.学力差は拡大するが、ボトムアップも図られる
  • 5.五教科は教養として残るが、情報の授業が重要になる

ゆずりはへの影響は

アクティブ・ラーニングやIT技術を活用した授業など、教室の風景や学習環境は一定程度変化している。が、いまと変わらないものもたくさんあって、授業内容なんかも意外に大きく変わらない可能性があると思う。

このあたりは最終的には「時間割表」とかに落とし込んで考えてみてもおもしろいかも。


5.2040年の仕事はどんなものになっているか

高校の教育は未来の大人を育てるためにあるけれど、では2040年の大人はどんな風に過ごしているか。どんな仕事をしているのか。

少し抽象度は上がるが、いくつかの予想を整理してみた。

オハイオ州立大学リズ・サンダース准教授は2044年には「Co-Design」と呼ばれるデザインアプローチが主流になると予想。これは、消費者であるユーザ自身が製品・サービスの主体になるというものだ。「当事者デザイン」とも訳される。

そしてこのような時代においては、労働は内発的動機付けに基づくもの、すなわち各々の「やりたいこと」が仕事にできる機会が高まる。

ちょっと抽象度が高いけど、AIが人間の仕事を代替可能になる一方で、人間がする仕事はやはり人間の動機に起因したものが残っている、という結論である。上記記事では特にパーソナリティ理論に基づき説明したが、次回はゆずりはを例にして、ゆずりはのパーソナリティと、これに基づく2040年の仕事像を掘り下げてみる。

 

と、こんな感じで、2040年のゆずりはの1日をディテールまで描けるように、参考情報を集めてみた。前回から何もしてなかったわけじゃないんですよ。そうなんですよ…。

ということで次回以降は以上の材料も使いながら、ゆずりはの1日をさらに具体的に可視化したい。

過去の議論はこちら。

ブレストの事前調査としてまとめた記事はこちら。

 

  

 

Pocket

パーソナリティ特性から見る、AIにより失職する人・しない人

いなたくんへ

AIの発展と普及により「AIに仕事を奪われる」論がまことしやかに語られている。『人工知能と経済の未来』(2017)では過去の技術革新を顧み、「新しい技術は多くの場合、ある職業を根こそぎ消滅させるよりも、雇用を一定程度減少させる」と指摘する。

もっともこれは一時的な現象であって、その後には新たな職業が生まれるとされる。が、人工知能の場合はホワイトカラーの仕事を奪う可能性が高く、人間にしかできない「次の仕事」がまだ不透明であるため、不安が拭えずにいるのだろう。

このとき、AIにより奪われやすい仕事と、そうでない仕事とあるはずだけど、その差について、パーソナリティ理論から説明できるかもしれない。特にヤバそうなのが、「内向」「五感」「思考」タイプの性格因子に関する仕事だ。逆にこの反対となる「外向」「直観」「情緒」に関する仕事は、しばらくは安泰である可能性がある。

これについて整理してみた。

Summary Note

AIが進化しても内発的動機に基づく労働は残る…のか?

「I(内向)」「S(五感)」「T(思考)」因子の仕事がやばい

ISTJ(努力家/管理者)型の特徴とAIの特徴

ENFP(創作者/広報運動家)型の特徴とAIの課題


AIが進化しても内発的動機に基づく労働は残る…のか?

『人工知能と経済の未来』では、特に「強いAI」が実現したとき、機械による自己再生産が可能になると指摘する。これはこれまでの技術革新との本質的な違いであり、産業革命以来の第二の「大分岐」をもたらし、資本主義を終焉させる。

AIやロボットが人間の能力を完全に代替可能となる、というのは極端な未来像だが、仮にそうなってもなお、人間は何かしらの活動を行うだろう。その活動は「内発的動機」と呼ばれる、「やりたいからやる」という動機に基づくものとなる。

インターネットがいま様々な「小さな仕事」「多様な働き方」を成立させ、なお拡大を続けるように、テクノロジーの発展は「やりたいこと」を仕事にできる機会を増やしていく。
未来においてはそうした内発的動機に基づく活動が重要になり、労働として成り立っていく。

内発的動機は人により様々であるところ、パーソナリティ理論のひとつであるMBTI法を参考に、前回記事では未来の労働を予想してみた。

その結論は抽象的なものとなったが、各々のパーソナリティ特性により「やりがい」や「向く活動」は違っていて、個性に適した労働は価値を認められやすく、かつ自発的に行われるため、それが未来の労働となる。

本当にそうなの?

以上のユートピアな結論は、次の点を前提としている。

  • テクノロジーの発展により「やりたいこと」を市場価値に換えるハードルが下がっていく

しかしながら、それ以上に速いスピードでAIの能力が向上したらどうなるだろう。「やりたいこと」が価値になり易くなるとは言え、機会の労働がそれより安価となれば、やはり仕事としては成立しない。

このとき、「AIに奪われる仕事」と「そうでない仕事」とあるはずだけど、私はこれもパーソナリティ特性により説明できる気がしている。


「I(内向)」「S(五感)」「T(思考)」因子の仕事がやばい

前回紹介した通り、MBTI法はパーソナリティ理論の1つであり、次の4つの評価軸に基づき、人を16タイプに分類する。

  • 外向(E)/内向(I):他人といるか独りでいるか、どちらが元気が出るか
  • 五感(S)/直観(N):五感(現在)と第六感(将来)のどちらに注意を払うか
  • 思考(T)/情緒(F):決断にあたり感情を優先するか否か
  • 決断(J)/柔軟(P):早めに決断するか、情報を取り入れてから決断するか

前回はMBTI法に基づく適職のあり方を整理した『あなたの天職がわかる16の性格』(2016)を参考に、具体的な性格タイプを例にして、未来の労働の要件を挙げてみた。

16タイプそれぞれの「適職」を眺めてみると、どうもAIに代替されやすそうな人と、そうでない人とが見えてくる。特に気になるのがIST因子を持つ人で、典型的にはISTJ型(「努力家」、16 Personalitiesの分類では「管理者」)とISTP型(「実務家」、16 Personalitiesの分類では「巨匠」)がこれに当たる。

なぜIST因子なのか

なぜIST因子がヤバそうかといえば、それは深層学習を発端とする第三次ブーム人工知能の特性と重複するためである。

現在のAIの能力をMBTI法に当てはめるとわかりやすい。MBTIの評価軸について、現在の人工知能は次のように特定できる。

  • 内向(I)…他者との対話ではなく自己完結して動く(機械なので当然)
  • 五感(S)…大量のデータに基づき判断を行う
  • 思考(T)…判断は情緒ではなく、論理により行う

このようにISTを含むタイプの人は、AIと能力が被る可能性があるのである。

ところで現行AIは「五感」型が「直観」型か

なおMBTI法の「五感/直観」の分類について、「五感(S)」ではなく「直観(N)」が正しいのでは、という指摘もあるだろう。なぜなら、現行AIの特徴は「ブラックボックス処理に基づく直観」と説明されることがあるからだ。

ただMBTI法の「五感/直観」の軸は「判断の根拠として何を注視するか」を問題にしており、データに立脚したデータドリブンの処理を行うAIは、ここでは「直観」ではなく「五感」とするのが適切と思う。

さらに言えば、MBTI法の「五感/直観」軸は、より高次の「意思決定」とか「発想」のフェイズの話であって、これは現行AIのフレームを超えた領域である。

ということで、現行AIは処理アルゴリズムとしては「直観」と表現されることがあるけど、MBTI法の分類においては「五感(S)」を採用する。


ISTJ(努力家/管理者)型の特徴とAIの特徴

それでは『あなたの天職がわかる16の性格』を参考に、ISTを含むタイプの適職を確かめてみる。

今回は「努力家」と呼ばれる、ISTJ型を選んでみた。ISTJ型は『16 Personalities』の分類では「管理者」とも呼ばれ、人類の中で最も多く、13%の人がこのタイプであるとされる。

ISTJ型の性格

『あなたの~』によれば、ISTJ型は端的には「ひとりでコツコツ努力する人」「時間をかけて正しいことをする人」と表現され、キーワードとして「責任感」「信念」「集中力」「几帳面」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • まじめで、責任感が強く、分別があり、信念が強い
  • 自分が言ったことに対して責任を持つ
  • 労を惜しまずに正確を期し、規律正しく、大いなる集中力を発揮する
  • なんでも整然と行い、信頼がおける
  • いったん活動を始めたら、決して途中で投げ出したり、挫折したりしない
  • 実践的な判断を下す
  • 詳細を驚くほど記憶している
  • 論理を重んじ、私情を交えず分析し、順序だてて物事を行い、予定通りに計画を実行する
  • 事実だけを述べ、几帳面
  • 事実に基づいた明確な物事を好み、話をするときは明確に内容を伝える
  • 感情を滅多に表そうとはしない

また、短所として例えば以下が挙げられていた。

  • 熱中すると自分とは違う意見を受け入れられず、即座に結果が出なかったり、実践的な応用が利かなかったりするものを疑ってかかる傾向にある
  • 他人が必要としているものを理解できないことがある
  • 自分の判断を他人に押し付ける危険があり、あまり強く自己主張しない人たちの気持ちを踏みにじることもある

ISTJ型の適職

INTP型の場合、以下のような職域が適する。

ビジネス

  • 運営や管理業務が得意
  • システムを運営し、物事が円滑に進むよう維持する才能がある
  • 昔ながらの伝統的な手法や組織を好み、自分の努力により状況が安定するとやりがいを感じる
  • 有能なマネージャーであり、組織のために与えられた仕事をまっとうしようとする

サービス

  • 人の生活に役立つシステムを維持する役割を好む
  • データや事実に基づき実践的な判断を下せる

金融

  • 数字に強い人が多いため向く
  • ひとりで働く機会が多く、データや正確性が求められる点も向く
  • 労を惜しまず働き、細部まで正確にやり抜く

法律/テクノロジー

  • 自分の技能を活かせ、正確性が求められるため向く
  • 欠陥や見落としを許さず、必要な手順を踏み、誠意をもってシステムを維持しようとする

健康・医療

  • 患者の状態に注意を払い、実践的に役立とうとし、誠意を持って働き、責任を全うしようとする

言いにくいんだけどこの特徴は……

なんかISTJ型の人をディスるみたいになったら申し訳ないんだけど(そのつもりは本当にないのだけど)、「記憶力がある」「物事を正確に行う」「データや数字に強い」という特徴は、機械にも得意な領域なんだよね。AIやツールによっても代替しやすそう、と思われるのはそのためだ。

// ここからフォロー

もちろん、ISTJ型の人が担う仕事が、ただちに機械に置き換え可能であるとは思わない。現行AIは実際にはそこまでの性能は出ないし、仮にAIの能力が伸長したとしても、さらに上位のフレームで人が行うべき仕事はあるからだ。

また、ISTJ型の場合、「責任感」や「誠意」もAIに対しての強みとなるだろう。従来の慣習を重視するISTJ型は、きちんとした「常識」を持つ。「常識」や「現実接地」は現行AIの弱みであるとともに、やはり機械ではなく人間を信頼したい、という需要は未来においても残るはずだ。

// フォローここまで

他の性格タイプとの相対評価で言えば、ISTJ型の人はAIと比較的近い位置にいる、という可能性は否定しにくい。
では、ISTJ型の反対となるENFP型だとどうだろう。


ENFP(創作者/広報運動家)型の特徴とAIの課題

ENFP型は『あなたの天職がわかる16の性格』では「創作者」と呼ばれる。『16 Personalities』では「広報運動家」というタイトルがつけられていた。

  • E(外向)…他人といると元気が出る
  • N(直観)…第六感や将来のことに注意を払う
  • F(情緒)…論理よりも感情を優先して判断する
  • P(柔軟)…即断せず、情報を集めてから判断する

ENFP型の性格

『あなたの~』によれば、ENFP型は端的には「可能性を追求する人」「好奇心の塊の名交渉役」と表現され、キーワードとして「ひらめき」「活力」「自然体」「想像力」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • 楽観的で、自然体でのびのびしており、自信をみなぎらせている
  • 熱意に溢れており、いつも新しいアイディアを思いついている
  • なによりひらめきを重視し、独創的な発明や発案をすることも多い
  • 一般社会の常識に捉われないところがあり、既存のやり方を打ち破り、新たなものの見方を示すのが得意
  • 独創的なアイディアがひらめくと、衝動に駆られて実行に移す
  • 何かトラブルが起こっても、それを刺激的だと感じ、よけいにはりきる
  • 将来を見通す力がある一方で、ごく普通の、なんでもないことに鋭い観察眼を向け、重要なことを発見する才能も持ち合わせる
  • 不和を嫌い、調和を好む
  • 他人の力と自分の才能とをうまく協調させ、仕事を成功させる
  • 思いやりをもって優しく人と接し、困っている人がいれば助け舟を出そうとする
  • 人の成長に役に立ちたいと願っている

また、短所として例えば以下が挙げられていた。

  • ひとつのことに集中するのが苦手
  • 手を広げすぎて収拾がつかなくなったり、多くのことに関わりすぎてしまう
  • 自分のひらめきに従って重要な問題を解決したときには大きな喜びを得るが、この段階が終わると、もう興味を失ってしまう
  • 事前にコツコツ準備をするのは苦手
  • 常に変化を求めているので落ち着きがなく、面倒なことは後回しにして、次の目新しいものに飛びついてしまう

ENFP型の適職

ENFP型の場合、以下のような職域が適する。

クリエイティブ

  • 常に新たな方法や独創的な手法を編み出せるので惹かれる
  • スタッフや同僚と力を合わせ、刺激を受けつつ共同製作ができると、大きなやりがいを感じる

マーケティング/企画

  • 長期的に物事を見る力があり、アイディア、プログラム、サービスなどが人に与える影響やその結果を見通すことができる
  • 他人の欲求や希望を理解し、それをよく考慮し、自分の企画に反映させることができる
  • 聡明でありながら愉快なことも大好きなので、広告宣伝用のコピーを考えるのも得意
  • 企業の顔として観衆を前にスピーチや講演をするのも得意

教育/カウンセリング

  • 支援を惜しまない思いやりに溢れた心理学者になる
  • 創造性に溢れた熱心なキャリアカウンセラーにもなる
  • 顧客サービス担当者やオンブズマンなど、組織と人の間に立ち、解決策を探る役割にも向く

企業家/ビジネス

  • 生まれながらの企業家であり、できれば起業し、独立して働きたい
  • チームを形成し、対立を解決し、職場の効率を上げていく作業を楽しむ
  • 旧態依然としたビジネスの世界には関心を持たない

現行AIの不得意領域をなりわいとするENFP型

どうだろう。「ひらめきと独創性」「実行力」「他者との協調」といった特徴はいずれも、現行AIが苦手とする領域だ。したがってENFP型が得意とするような職域は、機械による代替は比較的難しいかもしれない。

// ISTJ型とバランスとるためここからENFP型をdisる

ただし、だからと言ってENFP型が安泰というわけでもない。ある課題空間における「ひらめき」は、教師なし学習によるAIの方が人間の芸術家以上の能力を持つ可能性がすでに示唆されている。人の「感情」のような曖昧な状態も、むしろAIの方が高精度に認識し、優れた協調性を発揮する未来も遠くはない。

ENFP型もまたISTJ型と同様に、その活動が市場価値としては認められなくなる可能性を孕んではいて、油断はできない。

// ENFP型へのdisりここまで


まとめ

ちょっと長くなったけど、MBTI法におけるITSJ型とENFP型を参考に、AIに代替されやすそうな仕事と、そうでない仕事を挙げてみた。やはり性格タイプによって、機械に近い人とそうでない人というのはいると思う。

ただENFP型の評価としても述べたけど、人工知能の能力は日進月歩で進んでおり、長い目で見ればITSJ型もENFP型も大きな差はないのかもしれない。

ここでもう一つフォローを入れるなら、「ある仕事のほとんどを代替可能であること」と、「ある仕事のすべてを代替できること」との間には、小さそうに見えて大きな差がある点である。

2040年の女子高生・鷲尾野ゆずりは(17)の視点で未来の日常を予想する「ゆずりはPj」でも、ゆずりはのパーソナリティを特定して、彼女の視点で日々の生活、そして労働の姿を考えてみた。少なくとも2040年という時間軸では、やはり人間の仕事は残る気がする。

 

 

 

Pocket

Civ4五大国決戦マルチ実況・弦音視点(5)文化揺籃時代

いなたくんへ

文明シミュレーションゲーム「Civilization」マルチプレイの実況第5回。
第1回と前回記事はこちらから。

前回プレイではテクノロジーの1つ「君主政治」を獲得した。これに伴い弦の民は、異民族に囲まれながらも財政難に苦しみ、研究投資もままならず、不労人口の増える現状を憂いて、君主を戴いての統治を開始。国号を「弦」と定めた。

また、密偵「三蔵」による北方探索「天竺作戦」も始まっており、この過程で馬の民の勢力圏の全貌も明らかになった。


AD.590頃の世界勢力図

財政建て直しにはまだ時間がかかりそうで、今回も引き続き内政回であった。

Summary Note

A.D.620:「通貨」の導入

A.D.710:弦餃不可侵協定締結

A.D.840:虎谷関の文化侵略

次回戦略

コラム:戦争が進化するための条件

なお、この実況はブログ『木牛流馬は動かない』の筆者氏とのマルチ実況だ。画面を見られてしまう都合上、実際のプレイと記事の公開とはタイムラグを設けていて、今回第5回は2018/2/12のプレイ内容である。


A.D.620:「通貨」の導入

今回もまずは内政から見ていく。

A.D.590:馬の民との技術交換

馬の民との技術交換はこれで4度目。いやホント馬の民とは蜜月ですわ。

こちらからは「数学」を伝えて、かわりに「帆走」「聖職」を教えてもらった。バランス的には「数学」の方が必要研究コストは高く、若干不利な取引ではある。が、海を持たない弦国としても海洋技術は確保したいし、なにより財政難で研究開発に予算を割けないいま、異民族との技術交換は重要である。

「聖職」導入により寺院の建造が可能になる。寺院は文化を生み出すとともに、民の幸福向上にも寄与する。というか宗教制度にはもう少し早い時代から力を入れておくべきだったね‥。せっかく世界最古の宗教創始もしてたわけだし‥。

同年には首都・天元府で2人目の大科学者フランシスコ・ベーコンが誕生。征餃子鎮にアカデミーを建ててもらった。アカデミーは研究力を向上する施設で、前回首都にも建てている。

実はアカデミーには文化力を向上させる効果もあり、文化が高まれば都市の勢力圏を拡大できる。今回征餃子鎮にアカデミー建てたのは、餃領「みんみん」との勢力圏争いのためでもあった。


これ見よがしにビーカーを持つフランシスコ・ベーコン

A.D.620:「通貨」の導入

A.D.620に「数学」の応用技術として「通貨」を発明。これにより各都市では交易路が増え、市場の設置が可能になる。いずれも歳入を増やすための重要要素であり、今後の財政難改善が期待される。

今回の通貨導入は、王政開始以来の最初の改革である。通貨とは価値をはかるための基準にほかならない。「共通する価値のモノサシ」を普及し、価値交換の円滑化を実現したことは、重要な改革と言えるだろう。

具体的な通貨単位は「ワラジ(W)」とされた。「ワラジ」はもともと、弓弦の強度を保つためのクスネを塗り込む道具を指す。

例えば(並行世界の)ヤップ島の石貨フェイのように、共通通貨が生まれる以前にも、代用的なトークンを用いての価値交換・信用取引が行われることがある。弦の民の場合は上述の道具「ワラジ」をトークンとして取引に用いる習慣があり、転じて通貨の名称となった。


トークン(代用通貨)として弦の民に親しまれていた「ワラジ」
(図:Youtubeより)

ついでに各民族にも通貨単位の共通化を呼び掛けたが、反応は鈍かった。彼らに理解するにはまだ早すぎたかな。


画面左上? シャカ族は何を言っているのだ

A.D.650:弓兵の配備を開始

各都市への弓兵の配備をスタート。弓兵は攻撃力3だが、丘陵地や都市に配置することで防御力が大幅に向上する特徴を持つ。
ちょうど虎谷関の付近にマリがさらなる都市「タードメッカ」を建設していて、この地域の脅威が増したため優先的に配備した。



虎谷関北にマリ領ニアニ、西に新都市「タードメッカ」.いずれも近い.
虎谷関の守備は戦士1、戦車1、弓兵1の体制に.

てかこんな至近に2つも都市建ててくるなよな‥。

このころには餃子の民が文化遺産「バチカン宮殿」を完成させる。
わが国でも宗教施設をガンガン建てていく。


A.D.710 弦餃不可侵協定締結

次に、周辺民族の情勢に目を向けてみる。

A.D.680:「三蔵」捕縛

征餃子鎮を発しシャカ族の勢力圏を目指していた「三蔵」は馬領ティフリスまで到達した、というのは前回述べた。

が、なんとそのティフリスで三蔵が捕縛されてしまった。AD.680のことである。目的地の到達前に、それも友好民族の勢力内で捕まるとは悔やまれる。一度捕まった密偵が戻ることはもうない。悲しい。

ティフリス方面は実は斥候でも到達できていて、三蔵亡きあとも探索を続ける。北限域でのシャカ族の入植の様子が明らかになった。クワデュクサ、ノンコマ、他にティフリス北に1都市(下記画面ではまだ黒い霧の中)を発見。


右下の馬領ティフリスが三蔵最期の地となった

A.D.710:馬領トルファンで炭鉱事故

A.D.710、馬領トルファンで炭鉱事故との一報を得る。けっこう頻繁にこういう残念な事件が起こる。100名以上が犠牲になったとか。


馬領トルファンは征餃子鎮の真北に立地

A.D.710:第8都市「馬路」建設

首都天元府の北、木牛流馬府と征餃子鎮のちょうど中間の場所に、第8都市「馬路」を建設した。目的としては、馬領オトラルに勢力圏を押されそう(特に銅を奪われそう)なのでその牽制と、何より北方への備えである。

木牛流馬府-馬路-征餃子鎮の3都市の線を「馬路の線(まじのせん)」と呼び、防衛ラインとする。なんか電撃迂回侵攻されそうな予感も若干するのは気のせいだ。



左から木牛流馬府、馬路、征餃子鎮.
南に首都天元府、北に馬の民の勢力圏が広がる.

命名であるが、馬の民の首都を眼前にした都市なので「馬」を付与した。ただし、木牛流馬府と征餃子鎮の都市圏に挟まれ有効活用できる土地が狭く、生産性は期待できず、両都市を繋ぐ路としての機能くらいしか期待できないので、行政区分は「路」とした。

この頃、再び馬の民の斥候が領内に侵入しており、再三の退出を呼び掛けた。


警告に対し返答はなかったが、三度目の警告後に斥候は領域外へ逃れた

A.D.710:弦餃不可侵協定締結

弦国は西・北・東を夷狄に囲まれた立地にある。北の馬の民とは一応の友好関係を保てているが、西方ではマリの進出がはなはだしく、東には餃子の民が力を蓄えていて、悪くすれば挟撃される危険がある。

一方、餃子の民は餃子の民で、北の馬の民の進出に悩んでいる。



「m」アイコンは餃子の民

そもそも馬の民は古代より他民族の勢力圏の至近に入植する傾向にあり、その点では我が征餃子鎮の銅を脅かす馬領オトラルなんかもそうだけど、ともすれば紛争を招きかねない。

まあ、私は馬の民とも友好関係にあるので、餃子にも馬にも肩入れするつもりはないのだが、ともかくも餃子の民としても、馬の民と我が弦国と、二正面に敵を持つことは避けたいはずだ。

そこで餃子の民に不可侵協定の締結を呼びかけ、A.D.710の締結に至った。

弦餃不可侵協定(AD.710締結)

1.両民族は、武力を外交の手段とせず、武力をもって相手の勢力圏へ侵攻しない
2.この協定は、いずれかの民族による破棄の宣言がされたターンに加えて、5ターンの間維持される

いちおう破棄可能の条件は付けたが、これで餃子に対する防衛コストは低く抑えられ、西のマリに資源を集中できる。


AD.840:虎谷関の文化侵略

王政がはじまり、通貨導入に続いて取り組まれた改革が暦の開発である。農耕民族である弦の民を統べるにあたり、より正確な暦を導入することは欠かせない。ということでAD.770に「暦」が完成。弦国ではこれを光陰暦と呼ぶ。

「暦」の発明は大規模農場の建設を可能とし、染料、香料、絹、香辛料、砂糖といった資源の活用が実現する。これらは民の幸福に寄与する貴重な資源だ。さっそく天元府近郊の絹の農場化を進めた。

AD.770:世界球体仮説の浮上

「暦」は、「数学」と、それから馬の民より教わった「帆走」の両技術の発展である。ところでこの暦法が正しいとすると、計算上、ちょっと信じがたい仮説にたどり着く。


「m」アイコンが餃子の民、白アイコンがシャカ族.
なお私はこの日インフルエンザで39度台の熱が出ていた.

や、諸民族の反応は無理もないというか、こちらが計算ミスの可能性が大きい。世界が丸いとか、ないよねえ。


暦学者が示した世界の予想モデル.
球体を模しているのがわかるだろうか.

テクノロジー開発では他に、「美学」の発展としてA.D.860に「演劇」が成立。都市の文化力を高める「楼閣」の建設が可能となった。


獲得したテクノロジーの時系列図(右側太字が今回獲得)

「通貨」「暦」「演劇」と、弦の民の社会や文化の基礎がそろい始めた感がある。さらなる発展に期待したい。

A.D.840:虎谷関が文化侵略を受ける

西方よりマリが迫っており、孤立する虎谷関への道の整備を開始する。兵員の迅速輸送の観点で道は欠かすことができない。道を繋ぐには労働者の作業時間がかかるので優先度を落としていたが、そうも言っていられなくなった。


虎谷関(左)と天元府(右)との両側から道を敷いていく

ところがさっそく事件が起きる。A.D.840、マリ領タードメッカの勢力圏が急拡大し、虎谷関がその影響力を大きく失ってしまったのだ。特に豚の農場と鹿のキャンプという2つの資源を奪われたのは痛手で、虎谷関は飢餓状態に陥ってしまった。


虎谷関の都市ギリギリまでマリの勢力圏が迫ってきている.
図は戦車を偵察に向かわせたところ.

勢力圏の大きさは、都市の生み出す文化力により決定される。最近建てられたばかりの都市タードメッカが短期間でこうも文化力を拡大するのは不自然で、例えば大芸術家が誕生したとか、何らかの細工があるに違いない。

いずれにせよ、虎谷関は相当厳しい状況に追い込まれてしまった。

という状態を作りながら、マリが技術交換の相談を持ちかけよる。「建築学」をくれるかわりに「演劇」と30ワラジを寄越せとのこと。まあ本音を言えば魅力的な話ではあったのだけど、財政難の折に30ワラジの支出は痛く、お断りした。

ちなみに弦国からみて北西の亥海沿いにあるマリの都市オーダゴーストも、偵察したところ軍備が増強されていた。斧兵×2、スカーミッシュ兵(強化された弓兵)×2、と言ったところであった。


マリ勢力圏の偵察に向かう戦車.右は龍樹路.
沿岸にシャカ族の船が進出してきているのが見える.

A.D.860:密偵「悟空」の派遣

北方探索を目的とした「天竺作戦」は密偵「三蔵」の捕縛によりとん挫していたが、木牛流馬府にて新たな密偵「悟空」を採用。北方への探索へと向かわせた。次回こそはシャカ族の勢力圏をつまびらかにしていきたい。


北上し、甲河の流れつく先を確かめたい

といったところで、この回ではマルチプレイの接続が切れてしまってお開きとなった。残念。誰かのPCの不具合か、それともサーバ側で何かあったのか、原因は分からなかった。マルチプレイはどうしても接続の問題で中断が起きてしまうのがもどかしい。

シャカ族の勢力圏には何があるのか。次回を待たずその様子を知りたい人は、シャカ族のプレイヤー視点での実況記事を見てみよう。

今回明らかになった勢力図は次のような形となった。


A.D.860頃の各民族の勢力図


次回戦略

通貨導入で財政は上向いたものの、新たな都市「馬路」を建設したり、虎谷関が窮地に陥ったりで、結局まだ研究開発力は30%のままである。これを60%に押し戻すべく、次回も引き続き内政を強化したい。

しかし問題はマリである。勢力圏を広く接するので紛争が起こる可能性は低くなく、というかすでに虎谷関が文化侵略を受けてるんだけど、次には武力攻撃があってもおかしくない。南西の虎谷関と、北西の龍樹路の防衛が急務である。

従って、今後の弦国の戦略は以下のようになるだろう。

  • 優先1.内政強化(研究開発力60%水準を保てる収入の確保)
  • 優先2.マリからの侵攻に耐えうる防衛体制の早期構築

弦国内で先鋭化する急進派の声

一方で弦国内に耳を傾ければ、いつまでも内政に手こずり、防衛もままならぬ現王政に対する不満の声も聞こえてくる。特に目立つのが、「守るのではなく攻めよ」という急進派の声である。

弦国の悲願として「海へのアクセス」があったほか、成長のためには新たな勢力圏の拡大も必要になる。マリの勢力拡大におびえ、ただ守るのではなく、むしろ積極攻勢に出てこちらからマリの勢力圏を奪べきである、というのが彼らの主張だ。幸いにして、北に勢力圏を接する馬の民とは友好関係にあり、東の餃子の民とは不可侵協定があるから、背中を攻められる心配もない。

もちろん、防衛もままならぬ現状でマリへの攻撃を唱えることは非現実的ではあるのだけれど、国内のそうした動きは無視できるものではないだろう。ということで、弦国の今後の戦略として一応書き記しておくとしよう。

  • 優先3.マリに侵攻できる作戦能力の獲得

この急進派の動きはもしかしたら、弦国の将来に大きな転換をもたらすかもしれない。


コラム:戦争が進化するための条件

マリの脅威はすでに現実のものであり、資源と勢力圏とを奪われた虎谷関は損害を被っている。以上でも紹介した通り、ここに弦の民は、将来の戦争を強く意識するに至った。

ところで、ヒトにとっての「戦争」とは何だろう。

定義を確かめてみる

まずはデジタル大辞林。

せん-そう〔-サウ〕【戦争】

1 軍隊と軍隊とが兵器を用いて争うこと。特に、国家が他国に対し、自己の目的を達するために武力を行使する闘争状態。国際法上は、宣戦布告により発生し、当事国間に戦時国際法が適用される。いくさ。「戦争が勃発する」「隣国と戦争する」

デジタル大辞林より

この定義によれば、国家間において意志を通すにあたり武力を用いることが「戦争」となる。弦国はいずれの異民族も国家として承認していないが、まあそれらとの戦いも「戦争」と言っていいだろう。
なおここでいう「国際法」とは並行世界の話で、Civ4世界には存在しない。

もう1つ定義を紹介すれば、私は『感情心理学・入門』(2010)の定義が気に入っている。本書は「感情」にまつわる研究を心理学、社会学、生物学、教育など各領域からまとめた好著。このうち「進化から見る獲得感情の分類」の1つに「集団間の攻撃」を挙げており、戦争を次のように定義している。

個体が連合して共通の敵を攻撃する行動

『感情心理学・入門』より

本書によれば、同種間の殺戮は動物でも観察されるが、「個体が連合」して行われる攻撃は大型哺乳類では人間とチンパンジーにしか見られず、「巨大で複雑な同盟関係の構築とともに人間に特徴的な行動」であるとされる。本書はこれをもって、人間にとっての脅威が他ならぬ「敵対する他者集団だった」と推測している。

戦争が進化するための条件

本書によれば、「戦争は極めて共同的行動であり、高度な社会性が要求され」、「成立・維持には参加者の死や負傷を上回る利益が必要」となる。その上で、「戦争が進化するための条件」を次のようにまとめている。

  • 1.繁殖資源における長期的増大の平均が、進化の時間の中で繁殖コストを十分に上回る
  • 2.自分の集団が勝利すると信じ、かつ戦前より戦後に資源が増大するという信念を持つ
  • 3.各メンバーの危険度と成功への寄与が利益の配分に反映される(利益配分は戦功による)
  • 4.戦闘では誰が生きるか死ぬかについて予測できない

マクロ的には最初の2項目が重要になるだろう。マリの侵攻を受けてもこれを撃退できれば「資源の減少」を防止できる。だけでなく、こちらからマリ側に攻め入りその勢力圏を奪ったとき、奪わなかった場合よりも弦国の成長が加速するなら、これは第1項の条件を満たすことになる。

そういう理由で弦国王は、あるいは弦の民は、マリに対する攻撃を前向きにとらえるだろう。ただし勝利のためには十分な準備が不可欠である。弦国はまだ勝つための力をもたない。勝利を前提とした戦争能力の獲得は、次回以降を待たねばならない。

ということで次回はこちらから。

 

 

Pocket

内発的動機付けから予測する2044年の労働

いなたくんへ

ディープラーニングに代表されるAIブーム(第三次)は、例えばガートナーの『先進テクノロジのハイプサイクル』をみても社会普及の段階に入り、話題としてはひと段落した感がある。

AIの普及に伴い脅威視されるのが「AIが人間から職を奪う」という未来だ。未来予測に定評のある理論物理学者ミチオ・カクは「パターン認識を必要とする仕事」「人間関係を扱う仕事」「創造的労働やリーダーシップ」は人の手に残ると予想したが、さっそくパターン認識はAIが人を凌駕してしまった。

ベストセラー『人工知能と経済の未来』(2017)では、AIに代替困難な領域として「クリエイティブ」「マネジメント」「ホスピタリティ」の3つを挙げるものの、AIがいわゆる「心の理論」を獲得しうる可能性もあり、油断はできない。

AIのおかげで新たに生まれる仕事もあるはずだけど、現在のAIの普及状況やAIの指数関数的進化を考えると、「人間にしかできない仕事」がどこまで残るかは懐疑的だと私は思う。

そんな未来の仕事であるが、今回は別のアプローチから予想してみた。「その仕事が機械により代替可能か」という視点ではなく、「機械に代替可能であるとしてもなお人間がやる仕事は何か」という問いである。

ユートピアな予想のひとつに、機械が自己再生産能力を持つに至り、ベーシック・インカムのようなものが導入され、人は働かなくてもよくなるというビジョンある。しかし仮にそのような未来が訪れたとしても、人はなお働くかもしれない。そのとき人を突き動かすものは何か。

Summary Note

AIによる資本主義終焉と、創造性の時代(前フリ)

MBTIに基づく16の価値観

INTP(戦略家/論理学者)型の内発動機と未来の労働

ESFJ(社交家/領事官)型の内発動機と未来の労働


AIによる資本主義終焉と、創造性の時代(前フリ)

極端な未来を考えてみる。AIやロボットが十分な生産性を獲得し、人類が必要とする生産量を担保することで、人間自身は労働をせずとも成立する社会だ。そのような未来においては、ロボットの生産物はベーシック・インカムのような形で人に配分され、資本主義は終焉する。

しかし仮にこのような社会が実現しても、人間はなお労働をやめないかもしれない。この時代における「労働」とは、いわゆる「資本家に雇用される形での労働力の提供」ではなく、現在も非賃金労働として行われる家庭内での活動、地域のための活動、そして自分のため労働となる。

人間が働く必要がなくなる、というのはもちろん「極端な」予想だけど、仮にそうなったとしても、なお人間には活動の余地が残される。その動機となるのが「内発的動機付け」だ。

2044年に重要になる「創造性」

いくつかの予想が、次なる時代のキーワードとして「創造性」を挙げている。

例えばオハイオ州立大学のリズ・サンダース准教授は、「デザイン思考」の次のデザイン手法として「Co-Design」を挙げている。これは「当事者デザイン」とも訳され、デザインの主体が開発者からユーザ自身に移っていく、という考え方だ。リズ・サンダースはこれを2044年とおいている。

この時代の人々の役割が「創造する生活者」である。


日本デザイン学会討論会補足資料『当事者デザインを巡る枠組みについて』(2017)より抜粋引用

背景にはインターネットの登場がある。それまで出会うことのなかった小さな需要と小さな供給がマッチングされ、需給一致の機会が増えた。また、消費者のニーズは多様化・細分化され、企業が一方的に大量生産品を売るのではく、ユーザと共創しての価値創造が求められるようになっている。これがさらに進み、ユーザ自身が価値創造者になるのが「Co-Design」の時代である。

ところで「創造性」って何よ

「創造性」は狭義には「より遠いもの同士を結びつける能力」と定義されることがある。これは「拡散的思考」と呼ばれる。詩人は遠い言葉同士を結び付けて価値を生み、優れた発明家やイノベーターは技術と技術、人と人とを結びつけて世界を変える。

ただし、次の時代において重要とされる「創造性」は、もう少し広義の意味となるだろう。その答えとなるのが、先に触れた「内発的動機付け」だ。「内発的動機」とは、金銭などの外的報酬ではなく、「その活動を自分がやりたいからやる」という動機である。

ユーザ自身が共創的に価値創造を担う場合、生まれる価値は当該ユーザ周辺の問題を解決したり、あるいはユーザ自身の内的創意から顕れてくる。

テクノロジーの発展により、物を具現化するハードルや、アイディアを必要な誰かに伝えるコストが下がっている。このおかげで「自分がやりたいからやる活動」が価値として交換容易になっていく。

そのような未来においては、自分がやりたいことを自覚し、その強みを生かすことこそ、創造性の向上に繋がり、より大きな価値を生む可能性がある。

そしてさらに時代が進み、AIやロボットが全ての人間の労働を代替可能になったとしても、人間自身が「やりたいからやる」活動は失われない。

前フリが長くなった(ここまでが前フリでした)。
それでは、未来における「内発的動機に基づく労働」とはどのようなものになるだろう。さらに具体的に考えてみる。


MBTIに基づく16の価値観

一口に「内発的動機」といっても、それは人により様々であるはずだ。人は多様であり、多様であるからこそ比較優位が生まれ、価値の交換が成立する。

内発動機の多様性を類型化して理解するため、ここではパーソナリティ理論を参照してみる。パーソナリティ理論とは、人のパーソナリティをいくつかの評価軸に写像し、特性や類型を定義したものである。統計的有意性が担保された性格診断、と考えればわかりやすい。

パーソナリティ理論ではビッグファイブ理論が有名だが、今回はMBTIを参照する。というのも、MBTIに基づく適職を整理したポール・D・ティーガー/バーバラ・バロン著『あなたの天職がわかる16の性格』(2016)がすごく使いやすかったのよね。

MBTIとは

MBTI(Mayers-Briggs Type Indicator)とは、日本MBTI協会によれば、ユングのタイプ論をもとにした国際規格に基づく性格検査手法であり、「個人一人ひとりが、自分の心を理解し、自分をより生かすための座標軸」と説明される。

評価軸は次の4つだ。

  • 外向(E)/内向(I):他人といるか独りでいるか、どちらが元気が出るか
  • 五感(S)/直観(N):五感(現在)と第六感(将来)のどちらに注意を払うか
  • 思考(T)/情緒(F):決断にあたり感情を優先するか否か
  • 決断(J)/柔軟(P):早めに決断するか、情報を取り入れてから決断するか

そしてこれらの組み合わせにより、16種類の性格タイプに分類される。

『16 Personalities』

モノは試しで、実際に診断を受けるとわかりやすい。次のサイトではMBTIに基づく分類診断が無料でできる。Web上で質問に答えていくだけ。

『16 Personalitis』の診断では、16の分類それぞれにタイトルがつく。例えば次の診断結果はINTJ(内向・直観・思考・決断)型の例だが、タイトルは「建築家」となっている。

診断結果では性格の詳細のほか、同じ分類の有名人も提示されておもしろい。「建築家」型の有名人はクリストファー・ノーランやイーロン・マスク、ウラジミール・プーチンなど。

16のタイトルは目標や興味、優先行動に基づき4つの役割(分析家/外交官/探検家/番人)に大別され、さらに価値観に基づき4つのタイトルに分類される。併せて16分類となる。

  • 分析家 …建築家・論理学者・指揮官・討論者
  • 外交官 …提唱者・仲介者・主人公・広報活動家
  • 探検家 …巨匠・冒険家・企業家・エンターテイナー
  • 番人  …管理者・擁護者・幹部・領事官

なお、『あなたの天職がわかる~』でも同じようなタイトル付けがされているが、『16 Parsonalities』とは名称は異なっている。


INTP(戦略家/論理学者)型の内発動機と未来の労働

では『あなたの天職がわかる~』の記載に基づき、性格タイプ毎の内発動機を確かめてみる。

ここでは例としてINTP型を選んでみた。INTP型は『あなたの~』では「戦略家」と呼ばれる。『16 Personalities』では「論理学者」というタイトルがつけられていた。

  • I(内向)…独りでいると元気が出る
  • N(直観)…第六感や将来のことに注意を払う
  • T(思考)…感情よりも論理を優先して判断する
  • P(柔軟)…即断せず、情報を集めてから判断する

INTP型の性格

『あなたの~』によれば、INTP型は端的には「完全無欠を求める人」「独創的に問題を解決する人」と表現され、キーワードとして「独創性」「理論」「秩序」「完璧」「分析力」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • 物事の本質を見極めたり、難しい概念上の問題を考えたりするのが得意
  • 一見物静かで控えめで、超然としているが、頭の中では問題を常に分析している
  • 自分の考えを整理し、秩序だったものにするために、原理や原則を見つけたい、活用したいと思っている
  • もっと才能を伸ばしたい、同じように有能な相手と切磋琢磨したいと思っている
  • 既存の者や確立されたものではなく、可能性や将来性といったものに惹かれる
  • 現在の状況を改善したり、難問を解決したりして、新たなモデルを作りたいという強い情熱がある
  • 複雑な問題について、ああでもないこうでもないとじっくり考えるのが好き
  • 人と接しているときよりは、頭の中でアイディアや概念をひねくり回しているときの方が幸せ
  • 出来れば一人で独立して働きたいという意志が強い

また、短所として例えば以下が挙げられていた

  • 論理的分析に夢中になりすぎるとこがあり、他人が重視しているものを見過ごしがち
  • 他人の意見に少しでも論理的でない部分があると許せないのと同様に、自分の考え方にも論理的ではない部分があると、かえりみようとしない
  • ひとつでも間違いや欠点があると、そこばかり気になってしまい、プロジェクト全体を最後までやり遂げることができない
  • 決まりきったルーチンワークは苦手

INTP型の適職

今回MBTI法を選んだ理由は、『あなたの~』が各性格タイプに適した職業を挙げてくれていたためだ。特にありがたかったのが、単に職業名を挙げるだけでなく、職域ごとになぜその職が向くのか、どのような働き方をすると強みが生きるのか、という観点で説明されていた点だった。

INTP型の場合、以下のような職域が適する。

コンピュータ/テクノロジー

  • 問題を分析し、革新的な解決策を提案するという、最も得意とする作業ができる
  • 全体像を見る力があるうえ、その製品やサービス、システムなどが産業界全体の中で、あるいは会社全体の中でどのような地位を占めているのか、うまく適応できるのかといった分析ができる点で向く

健康・医療/テクノロジー

  • すぐれた推測力と、技術を擁する危機を手際よく扱える能力とを発揮できる
  • ある程度の危険を冒す度量も求められるので向く
  • 知的で才能ある人たちのグループに所属しながら、基本的に一人で研究作業を進めることができるので向く

専門職/ビジネス

  • 複雑な問題を分析したり解決したりする機会があるのでやりがいを覚える
  • 建築士や心理学者など創造性を発揮できる仕事も魅力的
  • 物事の全体像をみたり、将来性を予測するのも得意なので、経済学や金融分野でも活躍する

学術

  • 常に何かを探求し、新たな方法を模索するところが性に合っている
  • ひとりでコツコツ研究できる仕事も好む

クリエイティブ

  • 独創的なものを新たに作り出せるところが魅力的
  • 様々な人たちと、多様な手段を駆使して物を作っていく過程を好む

INTP型の未来の労働

INTP型の性格の特徴、すなわち内発的動機と、それが活きる環境は、概ね以上の整理を見れば明らかだろう。そして、未来における労働、すなわち価値創造が内発的動機に基づくものとなるならば、以上の特性に沿った労働が「未来にあり得る仕事の姿」ということになる。

例えばINTP型の場合、次のような労働が想定される

  • 対象の全体像をみて問題分析を行い、独創的な解決策を提案する
  • 知的な少数の人からなるグループに属し、深い探求の上で創造性を発揮する
  • 様々な知見を集めて、新奇な概念の発見や成果物の提示を行う(その過程を楽しむ)

かなり抽象的なので、これが本稿の掘り下げる「未来の仕事」の結論と言われるとガッカリされるかもだけど、労働の要件としてはこうなる。INTP型にとってこのような活動は、究極的にはAIやロボットにより完全に代替可能であったとしても、自発的に行われることになる。

「やりたいことだから価値がある」わけではないが

もちろん、こうした「INTP型がやりたい活動」が「市場価値を持つ活動」であるかは別問題だ。努力したぶん報われる、というのは労働価値説的見地であるが、実際には労働の対価は「受け手が喜ぶかどうか」により決まる。つまり価値の多寡は市場に委ねられる。よって、INTP型にとって上述の活動が心地よくとも、それを市場が価値として認めるとは限らない。

しかし、これは繰り返しになるけど、市場のニーズが多様化し、テクノロジーが小さな需給を一致させるようになれば、「やりたいこと」の結果が価値として認められる機会は増える。それが「Co-Design」の時代であり、消費者自身の創造性が重要になる時代の特徴である。

さらにはAIやロボットの生産が人類の生活を担保したとき、INTP型はより身近な対象に絞って、具体的には家庭や、地域や、あるいは自分のために、上述の活動を行うだろう。もちろんそのような時代の「労働」とは、もはや市場への労働力の提供ではなく、より広義に「人間の生活」そのものを指すようになる。


ESFJ(社交家/領事官)型の内発動機と未来の労働

せっかくなのでもう一例挙げてみる。今度はINTP型の逆となるESFJ型を見てみよう。ESFJ型は『あなたの~』では「社交家」と呼ばれる。『16 Personalities』では「領事官」というタイトルがつけられていた。

  • E(外向)…他人といると元気が出る
  • S(五感)…五感や現在のことに注意を払う
  • F(情緒)…論理よりも感情を優先して判断する
  • J(決断)…すぐに判断を行う

ESFJ型の性格

『あなたの~』によれば、ESFJP型は端的には「人の役に立ち感謝されたい人」「思いやりに溢れた社交的な人」と表現され、キーワードとして「良い人間関係」「評価」「事実」「忠誠心」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • 相手と直接かかわり、協力したい
  • 調和のある人間関係を築きたい
  • 親しみやすく、思いやりがあり、愛想がよく、他人を喜ばせたいという意気込みが強く、話し好き
  • 人の力になるため、面倒なこともいとわない
  • 他人から評価されたい、自分がこれだけ尽くしていることを認められたい
  • 他人から批判されたり、無関心な態度を取られると傷つく
  • あくまでも事実を重視し、秩序を好み、他人にも事実を重視してほしいと思っている
  • 五感を通じて物事を感じる
  • 誠実で伝統を重んじる

また、短所として例えば以下が挙げられていた

  • 対立を避けようとし、相手の意見や感情を重視しすぎる
  • 人間関係で緊張が続いたり、傷つくと、状況を現実的に直視できなくなる
  • 何かを頼まれたときに拒絶したり、自分から支援を求めることができない
  • 性急に決断を下す傾向がある

ESFJ型の適職

INTP型の場合、以下のような職域が適する。

健康・医療

  • 直接人と関わり、人の力になる能力を発揮できるので向く
  • 患者や同僚との間に強い絆が生まれ、それを維持できるため、やりがいを感じる

教育

  • 相手ときちんと関り、自分の経験から教えることに関心がるため向く
  • 子どもたちと直接触れ合う機会があることが魅力
  • 学校という安定した体制に身を置けるのも魅力

社会福祉/カウンセリング

  • 地域のために貢献でき魅力
  • 個人や家族が問題を克服する力となれる社会の一員であろうとする
  • カウンセリング、宗教教育、聖職も、相手の心を深く探りながら力になれるので向く

セールス/サービス

  • 人と直接かかわり、生活を楽しいものにしたり、ストレスを軽減する役に立てるのでやりがいを感じる
  • トラブルが起こったり、危機に直面したとき、詳細まで気を配り、状況に対処できる
  • 葬祭を司る仕事では、人の感情を敏感に感じ取りつつ仕事を進める必要があり向く
  • 客室乗務員として旅を楽しみ、様々な人たちと触れ合うことにもやりがいを感じる
  • レストランやホテルでは愛想よく温かいもてなしをすることができる

ESFJ型の未来の労働

ESFJ型はとにかく他者と関り、他者のために尽くしたい性格であり、人から好かれやすいタイプでもある。

「身体性」や「感情」は現行のAIには苦手な分野だが、未来においては克服し、人間以上に人間を理解し、温かく接するかもしれない。しかしそうなったとしても、ESFJ型の人は自ら他者と関り、他者のための活動を行う。そしてそれは受け手にとっても嬉しい話であるはずだ。

したがって、AIの進化や、その普及状況に関わらず、ESFJ型が得意とする仕事は残る。というか、対価があろうとなかろうと、そのような活動はなされる。


まとめ

以上、「AIに代替可能であるとしてもなお人間がやる仕事は何か」という観点で、未来の労働を考えてみた。ちょっと抽象度高い結論になったので、期待外れだったらゴメン。ホントはもう少し具体的な職業とかに落とし込みたかったんだけど、今回はこんな感じで勘弁。でも要件は出せたと思う。

現在のAIブーム(第三次)はひと段落かもしれないけれど、次のブレイクスルーも必ず起きて、機械は人間らしく進化し、人間の能力を代替していくだろう。それに合わせて、人間が使うツールは変化し、さらには市場で流通する労働も変わっていく。

しかしそれでも人間の行動原理は変わらず、特に内発的動機に基づく活動は価値として認められ、あるいは市場価値がなくとも行われていくことになる。

イイハナシダナー。
おしまい。

ホントにそんなユートピアが実現するのか?

さて今回の記事は以上でおしまいなんだけど、ここから次の話題に移りたい。

以上の結論は、次の2段階の未来予測を前提とした。

  • テクノロジーの発展により、「やりたいこと」を市場価値に換えるハードルが下がっていく
  • AIやロボットが十分な生産能力を獲得し、人間は労働せずとも生活できるようになる

私はこれら2つの予想を信じているが、問題は時間軸だ。特に1つめの予想。労働の多様性が今後も拡大するとしても、それ以上に速いスピードでAIやロボットの能力が向上すれば、やはり人間の労働機会は奪われてしまう。

そしてそれは、パーソナリティ特性により差がある可能性がある。MBTI法においては特にIST(内向・五感・思考)を含む型、「ISTJ(努力家/管理者)」や「ISTP(実務家/巨匠)」が危なそうだと思っている。これについて次回述べたい。

 

  

 

Pocket

躍進が続く中国・アジアの賃金推移(2002-2017)

いなたくんへ

世界の工場と呼ばれ発展してきた中国だけど、賃金の上昇に伴い工場が東南アジアにシフトする傾向にある。というのは6年前の2013年には指摘があって、同様の報道はいまも散見される。これに加えて近年では、アジア地域全体の賃金上昇も大きな課題となっている。

JETROによる『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』によれば、「従業員の賃金上昇」は「経営上の問題点」の堂々1位に輝いており、アジア地域19ヵ国のすべてで最大の課題とされる。

そこで今回は、JETROの調査レポート「アジア・オセアニア投資関連コスト比較調査」に基づき、2002年から2017年の15年間における各都市の賃金推移をまとめてみた。当調査は2017年度分のレポートで第29回となる。


2017年度の各国の賃金比較

まずは各都市の賃金を並べてみたい。上記調査レポートでは各都市毎に「ワーカー(一般工職)」「エンジニア(中堅技術者)」「中間管理職(課長クラス)」の3階層に分けての月給が乗っており、こちらに基づきグラフを作成した。単位は米ドル。

こうしてみると、比較した都市の中では横浜が最も高い。そのあとシンガポール、香港、ソウル(第2群と呼ぶ)、台北、北京(第3群と呼ぶ)と続いて、それから大連及び他の東南アジア地域の国々(第4群と呼ぶ)という順番である。

階級別にみると、対横浜での賃金格差は一般工職が最も大きく、次のような規模感である。

  • 第2群(シンガポール、香港、ソウル) …約1.2倍
  • 第3群(台北、北京) …約3倍
  • 第4群(大連及び他のアジア都市) …約8~10倍

これに比べて、中間管理職になると都市間の差は相対して小さく、特に第2群(シンガポール、香港、ソウル)は横浜に近づいてくる。また、第3群(台北、北京)と第4群(大連及び他のアジア都市)の間の差も2倍程度に縮まっている。

個人的にはシンガポール・香港はもっと高いと思ってたんだけど、横浜よりは安い。シンガポールの場合は一般工職と中間管理職の間の差が大きいのが特徴だろう。


北京・一般工職の月給が米ドル換算で7倍以上に

次に、各都市の賃金変化を時系列で比較してみる。2002年から2017年の同調査レポートに基づき、各階層ごとにグラフを作成した。

ただしグラフについては以下の点に注意されたい。

  • いずれも米ドルベースであり、対米ドルの為替の影響は考慮されていない(為替の変動が賃金変化に見えている可能性がある)
  • 2004年の北京・大連のデータが書けていたため、グラフ作図の都合上、前後の年の平均値とした
  • 調査年によって出所が変わったり、他都市のデータを参照したり、ソースが現地日本企業へのヒアリング(しかもn数少ない)だったりして、数字が揺らぐことがある

特に3点目が重要で、2007年以前のデータはけっこう怪しいように思うのだけど、それでも長期の傾向はつかむことができるだろう。

一般工職

北京がやばい。2002年の121ドルから北京五輪前年の2007年に大きく跳ねて、さらに伸び続けて2017年には746ドルと約7倍に。

ただし、北京と大連の間に大きな差がある点には注目したい。中国は広いので、中国内でも都市間の賃金差は小さくない。特に北京は特別で、調査レポートには北京、大連のほかにも上海や重慶といった中国の各都市が載せられていたが、北京は抜き出た存在だった。

他に賃金上昇率の大きい都市は大連、バンコク、ジャカルタが挙げられ、2002年比3~4倍となっている。
ホーチミンやバンガロールはもうちょっと伸びたかった。

国別の比較をすると、2002年には108ドル(ジャカルタ)から163ドル(バンコク)までと大きな差ははなかったけれど、2017年には都市間の賃金差が開いている。

中堅技術者

こちらも北京が5倍くらいに伸びているほか、他の都市も概ね伸びている。
大連、バンコクがよく伸びていて2002年比2~3倍程度。
ジャカルタ、バンガロール、ホーチミンの伸びも相対的に鈍いとはいえ2倍程度。

バンガロールは10年代頭に伸びたのにまた下がってしまったのが悔しい。

中間管理職

北京はやっぱり伸びてて約4倍。中間管理職になるとバンコクの伸びも3倍程度と著しい。
バンガロールは(中間管理職についても10年代頭に伸びてまた下がってしまったので)2002年から大きく変わらないが、大連、ジャカルタ、ホーチミンも堅調に伸びていて、2倍程度になっている。

以上を見ると、2002年から2017年における賃金は、採り上げた都市ではいずれの階層においても少なくとも2倍程度に伸びていて、大連やバンコクでは3倍以上に、そして北京が4~7倍と急上昇を見せたことが分かった。

冒頭JETROレポートの「賃金上昇つらい」という声にもうなずける。


高賃金都市ではシンガポールの賃金上昇が顕著

続いて、アジア地域の中でも高賃金な都市の推移を見てみたい。横浜、シンガポール、香港、ソウル、台北の月給である。



横浜、香港、台北が(波はあるものの)概ね横ばいであるのに対して、シンガポールとソウルは2002年以来賃金を上昇させてきたことがわかる。特にシンガポールが顕著で、すべての階層で伸びているほか、中間管理職では横浜に並ぶに至っている。

横浜は2010年前後は高給であったものの、ここ数年ではその価格を落としていることがわかる。ただし国際競争力の観点で見れば、賃金は低い方が人件費を圧迫せず有利ともいえる。

これら賃金の都市間比較に基づき、国際企業のアジアへの拠点進出状況を見直してみると、また発見があるかもしれない。


中国・アジア地域の賃金上昇は今後も続くか

東南アジア地域において、労働者人口の増加率が全体の人口増加率を上回るいわゆる「人口ボーナス」は、国にもよるが、まだ続いていく見込みである。英エコノミスト『2050年の世界』(2012)では、新興国の中でも特に東南アジア地域の成長を予想しており、賃金上昇は続いていくことになりそうだ。

一方、人口減少と少子高齢化がさらに本格化する日本においては、経済成長への期待は全く楽観できない。アジア地域において今後も高い賃金水準が維持されるかは悩ましいと言えるだろう。

各都市の賃金がさらに10年後にはどう変わっているのか、楽しみである。

 

  

 

Pocket

「暗黒時代2.0」が科学を失わせた世界の、次の希望としての共同幻想

いなたくんへ

紀元4世紀頃のヒトは黙読ができなかった。ヒトの黙読という能力は、本の発達に伴い近世になり可能になった「進化」である。ベストセラーだけど邦題は微妙なニコラス・カー著『ネット・バカ』(2010,原題は『The Shallows』)は、このようにヒトの脳が進化し続けてきた証拠を挙げ、そしていま、インターネットがヒトを白痴化しうると警鐘を鳴らす。

ただ私としては、ヒト個体の進化よりも、種としてのヒトの未来に興味がある。例えばヒトはサルから進化したばかりのころ、「神様を信じる」という脳機能を発達させた。この力はヒトを集団として結束させ、地上の支配者たらしめた。

WIRED創刊編集長ケヴィン・ケリーは、法律や哲学概念などもテクノロジーの一種であり、自己進化する情報システム「テクニウム」を構成すると指摘する。神様しかり、歴史しかり、あるいは法や物語もまたしかり。眼には見えないこれら共同幻想はみな、ヒトの生みだしたテクノロジーであり、ヒトの持つかけがえのない武器だった。

そしてヒトが手にした最新の共同幻想が「科学」だ。科学、すなわち再現性のある「真実」は、時代や人種を超えて人々を結束させる。例えばヒトがサルから進化したとする仮説について、私は200年前に生きたダーウィンとも、いま地球の裏側に住む多くの人々とも共感できる。

その共同幻想としての「科学」を、インターネットが失わせる。
ではその先には何があるのか。今回あらためて自分の考えを整理してみた。

Summary Note

きっかけは『ダークウェブ・アンダーグランド』書評記事

  • ポスト・トゥルース時代の希望としての「フィクションの力」

「暗黒時代2.0」の先にある3つの希望

  • 1.暗黒時代の次にはルネッサンスが待っている
  • 2.集団分極は社会に多様性をもたらす
  • 3.創造性は統合失調的症状を伴い、ネットは白昼夢を見せる

かわりに顕れる価値観は、きみの見る夢を肯定すること


きっかけは『ダークウェブ・アンダーグラウンド』書評記事

今回考えるきっかけとなったのは、木澤佐登志著『ダークウェブ・アンダーグラウンド』(2019)の書評記事だ。記事の筆者はSF作家の樋口恭介氏。

『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の概要は(樋口氏独特の視点が入っている予感がするにせよ)書評記事の次の記載が端的である。

本書は、インターネット以前から以後、つまり現在までの、インターネット・カルチャーにおける精神史として読むことができる。それは「ダーク」の精神史、闇と光の対立の歴史でもある。闇とは暗号を指し、光とは復号を指す。闇=暗号の世界とは反動と自由主義、ニューエイジ的で、ある種オカルティックな宇宙主義(反人間中心主義)の世界であり、光=復号の世界とは良識と公正主義、近代的な理性とそれによる意志決定を前提とする、人間中心主義の世界である。

『暗号化された世界で私たちにできること──『ダークウェブ・アンダーグラウンド』書評』より

そして記事では、同書の議論を次のように、「自由」「統制」「反動」の3つの流れで整理する。なんという分かりやすさ……!


『暗号化された世界で私たちにできること──『ダークウェブ・アンダーグラウンド』書評』より

これらインターネットの未来は、いや、インターネットがもたらす現実社会の変容は、私としてもクリティカルなテーマと捉えていた。ので、このあたりきちんと整理したいな、どこから手をつけたらいいのかな、と悩んでいたらこの書籍、このまとめですよ。なんというか人生のイージーモードみ感じた。ありがたや、ありがたや。

とか偉そうに言いながら『ダークウェブ・アンダーグラウンド』自体はまだ未読で、そんな状態で今回みたいな記事書くのも恐れ多くてドキドキしてるけど、まあ続ける。

書評記事によれば、2000年以後の「インターネット以後の時代」とは、「民主化し管理されたインターネットへの反動として、「ダーク」なものが回帰し過激化した時代」であり、「闇が光を、虚構が現実を、フェイクがトゥルースを書き換えつつある」時代とされる。

つまり、悲観的な時代である。
書評記事では「絶望的」と形容する。

その上で、書評記事では『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の次の一文を引用し、「真実」が失われても「フィクション」の力は残る、という希望に触れている。

陰謀論の信奉者は、その「物語」を「真実」とみなしているという点で、彼らは文字通り「真実」を信じている。つまり、ポスト・トゥルースという言葉に反して、そこには「真実」しかない。だからむしろ問題は、人々が「フィクション」をもはや信じることができないでいることなのかもしれない。現在のインターネットは、個々が信じる「真実」で渦巻いている。そのような状況下で、「物語」を多元的な「フィクション」=可能世界に返してやることは、果たしてできるだろうか、言い換えれば、私たちは「フィクション」をもう一度本気で信じることができるだろうか。

『ダークウェブ・アンダーグラウンド』より

実際、著者の木澤佐登志氏は、『ファイト・クラブ』、『lain』、『闘争領域の拡大』、『輪るピングドラム』、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ヴェイパーウェイヴ、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、トマス・ピンチョンといったカルチャー群=フィクション群を引くことで本書を書き上げており、「物語」を多元的な「フィクション」=可能世界に返してやることで、可能世界の視点から、今・ここにある現実を認識し把握し、そして、「それでもまだ、可能性は残されているのだ」とささやき、今を肯定しようとしている。

要するにこの著者は、フィクションの持つ力を、本気で信じているのだ。

『暗号化された世界で私たちにできること──『ダークウェブ・アンダーグラウンド』書評』より

ちなみに余談になるけど書評記事筆者の樋口氏はSF小説『構造素子』(2017)でデビューされているところ、『構造素子』はまさに「物語」を描いた物語であったりして、フィクションに関する上記指摘は私的にはメタ的に感じたりした。

さて、以下では、樋口氏が『ダークウェブ・アンダーグラウンド』に見た希望、「フィクションの力」について、それが次の時代をどう創るのか考えてみる。


「暗黒時代2.0」の先にある3つの希望

今回のこの記事は自分のための思考の整理が目的なので、過去記事リンクもバンバン張るよ。

インターネットがもたらす未来について、種としてのヒト、あるいはヒトの社会の行く末について、これまでいくつかの考察を載せてきた。改めてふり返ると、私も私なりに「希望」を意識して書いてきたので、まずこれらを回収してみる。

1.暗黒時代の次にはルネッサンスが待っている

インターネットのエコーチャンバー効果は世界を分断し、さらには「科学」すら失わせる。いま世界をひとつにしている共同幻想としての「科学」がなくなれば、それは「暗黒時代2.0」と呼ぶにふさわしい。これは『ダークウェブ・アンダーグラウンド』と同質の悲観だ。

で、暗黒時代が来るのが正しいとして、歴史を顧みれば、暗黒時代の次にはルネッサンスが待っていた。「暗黒時代2.0」の先にもルネッサンスがあるならば、そこには2つの可能性が考えられる。

1つは、いったん失われた「科学」が再び復興する未来。
もう1つは、「科学」ではなく「次なる価値観」が明るい世界を拓く未来。

冒頭でも述べた通り、科学とは「最新の」共同幻想である。が、それが「究極の」共同幻想かはわからない。神話の時代に神が無謬だったように、王の時代には王が全能だったように、現代においては科学が究極と思われている。でも、未来においては別の共同幻想が現れることは十分あり得る。

逆に言えば、科学が失われたとしても、直ちに悲観する必要はないわけだ。では、科学の次の共同幻想とは何か。

2.集団分極は社会に多様性をもたらす

内容は被るが、インターネットがエコーチャンバーを実現する原理として、『グーグル・アマゾン化する社会』(2006)でスケールフリー・ネットワークに触れていた。本書によれば、民主主義は本質的に集団分極化を起こしやすい性質を持つところ、ウェブがこれを加速する。

ここで少し立ち止まって考えたい。集団分極化ってそもそも悪いことなんだっけ。

近年においては、民主主義・自由主義陣営が停滞気味な一方、非民主主義陣営が躍進の兆しを見せている。ここで、ケヴィン・ケリーのいうように「社会組織もまた一種のテクノロジー」であることを鑑みるなら、社会組織の機能とは、集団が淘汰を免れるための手段であるべきだ。

組織の構成員にとっての居心地の良さは関係なく、集団が生き残れるか、淘汰されるか、正義はこの一点に裏付けられる。民主主義と非民主主義のいずれが正しいのかも、答えがわかるのは未来のことだ。

そして、生命が淘汰を免れる方法論として「多様性」の担保は基本的な戦略であるところ、集団分極化はこれを後押しするように思える。集団分極化は集団の生存戦略を考えたとき、有利に働く可能性がある。

3.創造性は統合失調的症状を伴い、ネットは白昼夢を見せる

話は少し変わって、次の時代には、具体的には2044年頃には、「当事者デザイン」の時代、あるいは「技術の時代」が到来すると予想される。ここで重要になる資質が「創造性」だ。

「創造性」の正体を考えたとき、その1つの説明として、パーソナリティ特性論の「拡散思考」が挙げられる。拡散思考とは、より遠いもの同士を結びつけられる能力で、詩人など芸術家が顕著にもつ。その一方で、拡散思考の持ち主は統合失調症的異常体験を伴いやすいことも知られる。

なお「創造性が先天的な才能である」という仮説に異論はあるかもしれないが、私はこれを信じる。なぜならパーソナリティ特性論は統計的に再現性が確かめられた「科学」であり、私は科学の信者だからだ。

もっとも、パーソナリティ特性論もいち要因には過ぎなくて、実際には後天的要因の影響も極めて大きい。その点で近年無視できないのが、インターネットの存在である。

前述の『ネット・バカ』は、インターネットが脳を白痴化させると警鐘を鳴らした。一方、ケヴィン・ケリーは別の捉え方をしていて、『<インターネット>の次に来るもの』(2016)で「白昼夢を実現する装置」と指摘している。

私がウェブをサーフィンしているのを見た人は、次々と提示されたリンクをただたどっている姿を見て、白日夢を見ているようだと思うはずだ。(中略)

多分われわれは、ウェブをうろついている間、集合的な無意識の中に入り込んでいるのだ。きっと、個々にクリックするものは違っても、このクリックが誘う夢はわれわれ全員が同じ夢を見るための方法なのだ。(中略)

私は逆に、こうした良い時間浪費は、創造性を高める前提条件だと思っている。

『<インターネット>の次に来るもの』より

インターネットとは、覚醒しながらにして夢見に至る手段である。すなわち、インターネットは統合失調的な副作用を代償として、ヒトの創造性を高めてくれる。

ここで副作用を、つまり現実を見失うことを、負と捉えるか、それとも正と捉えるのか。決断を下すのはまだ早い。


きみの見る夢を肯定する

以上より、インターネットが「科学」や「真実」を失わせてしまうとして、その先の仮説として次のことを考えてみた。

  • 科学が失われた世界では、次なる共同幻想が出現する
  • 集団分極化は多様性をもたらす
  • インターネットは現実を見失わせるが、創造性を高めてくれる

これを合わせると何が言えるだろう。
私は次のような世界を予想する。

それは、白昼夢が実現した社会だ。極めて創造性の高い世界、あらゆる知や想像が瞬時に結びついて、次なる幻想を生む世界。そこには無限の「物語(フィクション)」が広がっている。

ヒトの夢がそうであるように、この世界では「現実」はもはや意味をなさない。現実とは科学法則に縛られた世界であり、再現性が担保される「客観的な事実」である。しかし、夢の世界では主観がすべてだ。細分化されたエコーチャンバーのそれぞれで信じられる事象は、事象が信じられたという一事をもって「真実」となる。

共同幻想は、ヒトの集団が遠くへ行くための船だった。「神を信じる心」の発現はヒトに文明をもたらし、17世紀科学革命は進化を加速度的なものにした。

「科学」はいつ、共同幻想としての役割を終えるか。それは、大規模集団の統一よりも多様性が有利になるとき、集団分極の結果得られる先鋭化した創造性が淘汰に克つための武器となるとき、であるだろう。そのとき、「科学」は共同幻想としての優位性を失う。

かわりに顕れるのは、事実よりも多様性や創造性が尊重される世界、他者の見た夢を肯定する価値観だ。すなわち、白昼夢が実現した世界でヒトに求められるチカラは、他者の夢をともに見、かつ、それとは異なる自分の夢も見る能力となる。

さらに付言するなら、そのような世界においては、フィクションを信じる力ではなく、フィクションを創り出す力が重要になるかもしれない。神学や歴史や科学を学ぶ力ではなく、これらを軸にして、あるいは軸にせずして、自らの物語を生む力である。


次なるルネッサンスの進行プロセス

例えばここに、エメーリャエンコ・モロゾフという詩人がいる。モロゾフは、誰でも語ればモロゾフになれるという特性を持つ。モロゾフはその人格を分断された「分人」であり、ケヴィン・ケリー著『インターネットの次にくるもの』で指摘される「アンバンドル」された存在であり、極めて高い創造性を実現ししつつも統合失調症的に振舞う量子的な人格であり、そして、誰かの夢である。

その夢は私も見ることができるし、きみも見ることができる。重要なのは、語ればモロゾフになれるが、語らなければモロゾフになれない、ということだ。

次の時代においては、共同幻想すら「民主化」される。併存する物語の世界、併存する「語り手」の世界は、科学というたった1つの真実に支配される現在よりも、希望に満ちた未来にみえる。

 

  

 

Pocket

未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュースまとめ・第17回(2018/7-9)

いなたくんへ

ホリエモン率いるインターステラ・テクノロジズの国産ロケットMOMO2号機は残念ながら打ち上げ失敗に終わったが、スタート・トゥデイの前澤社長の世界初の月旅行が発表されたり、はやぶさ2のローバーが世界初の小惑星上移動探査に成功したり、さらには月と火星で氷・水が発見されたり、宇宙開拓分野でエポック・メイキングなニュースが相次いでいる。

地上に目を移しても、コンテナ船の北極海初航行、ドローンを用いた商用宅配サービスの初実用化、無人ボートの大西洋初横断など、世界は着実に未来に進んでいるようだ。

こうした未来の世界に影響を与えるテクノロジー系のニュースについて、今回も最近のものを取り上げてみた。

なお、8月にはガートナーが毎年恒例の「先進テクノロジのハイプ・サイクル」2018年版を発表。特に「人とマシンの境界を曖昧にするテクノロジ」が重要とする。これは2017年版との比較も含めて次の記事で紹介した。

また、この3ヶ月でも私的にインパクトの大きかった次の2つのテーマはそれぞれ個別に記事にした。


1.はやぶさ2が世界初の小惑星上探査機自律移動に成功

「はやぶさ」の後継機として2014年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、今年6月に目標小惑星「リュウグウ」に到達。そして9月には、世界初となる小惑星表面への探査ロボット着陸を成功させた。小惑星上での探査ロボットの自律移動、および写真撮影も世界初の成果となる。


撮影された大迫力の映像(JAXAより)

はやぶさ2はこの探査ロボット「MINERVA-II1」の9月の着陸成功に続いて、10月には探査機「MASCOT」の着陸にも成功。さらに今後ははやぶさ2自身も着陸し、衝突装置によりリュウグウ表面にクレーターを形成して岩石を採取、来年冬にリュウグウを発し帰路に就く予定である。引き続き成功を祈りたい!

太陽系内では、木星で新たに12個の衛星が発見されたり、さらには冥王星のさらに外側を公転する準惑星「2015 TG387」が見つかったりと、新たな発見が相次いでいる。未来にはこれら衛星・惑星を探査することもあるのだろうか。


2.国際宇宙ステーションに穴、、衛星破片をネットで補足

そのころ地球の衛星周回軌道では、国際宇宙ステーションに接続していたソユーズ宇宙船に穴が開き、空気漏れが発生。一時的に気圧が下がるも、テープで塞いで対処完了。宇宙で宇宙船に穴が開くってヤバそうだけど、テープでいいんだ……。

2mmの穴をあけた原因は流星塵とされる。衛星軌道においてはこうした塵やスペースデブリが問題視されているところ、衛星の破片をネットで捉えた実際の動画が公開された。英国の小型衛星開発企業Surrey Satellite Technology社の実証機「RemoveDEBRIS」によるもので、こちらも世界初の成果となる

 

宇宙に関してはさらに注目のニュースとして月での氷の発見、火星での地下湖の発見があったので、最新の探査計画も含めて次の記事のまとめた。


3.最新の地図投影法「EqualEarth」と次世代番地「What3words」

富野由悠季監督は宇宙飛行士山崎直子氏との対談で、人類の宇宙進出により認知革命が起こると述べたが、実際に我々の地球に対する認識は変わってきている。

私が世界を思い浮かべるとき、頭に描くのはメルカトル図法の地図だ。この地図の問題点は、赤道から離れるほど実際の面積と乖離することである。そこで大陸の面積が正しく表示され歪みの少ない「Equal Earth」という新たな投影法が提案された。


左下が「EqualEarth」(図:The Equal Earth map projectionより)

GoogleMapも8月よりメルカトル図法での表示を廃止し球体表示に。グローバル化に伴い、世界の認識もより現実に即したものに変わっていく。

また、9月にはコンテナ船が北極海の初航行を行っており、新たな輸送経路が拓けている。こうした温暖化に伴う地政学的変化はこれからもあるだろう。

What3wordsに投資が殺到

地球の認識といえば、世界を3m四方に分割してそれぞれにユニークな3語を割り当てがWhart3wordsが投資を集めている。What3wordsは57兆個に区分された各区画に、25000語に基づくユニークな3語を割り当てたのことで、3桁の25000進数と理解すればわかりやすいか。

投資はダイムラーなど自動車メーカーによるとされ、自動運転サービスでの活用が期待される。


4.無人機が世界初の都市商用配送・25日間飛行・大西洋横断

コンテナ船の北極海初航海といえば、移動分野では無人機の「世界初」が相次いでいる。

アイスランドのスタートアップ「Aha」はレイキャビクにてドローンによる料理・食料品・電化製品の宅配サービスを実施。これまでも僻地でのドローン輸送は実現していたが、都市部での商標輸送サービスは世界初となる。

エアバスのソーラー発電無人航空機「ZephyrS」は25日間の連続飛行に成功、これまでの14日間を塗り替え、世界記録を更新した。昼間の発電で夜間分を補い、高度2万メートルを飛行していたとのこと。

さらに、ノルウェーOffshoreSensing社の自律航行ボート「SBMet」が世界初の大西洋横断に成功。2ヵ月半かかったそうだ。

無人機技術の開発は日進月歩で進んでおり、将来はあらゆるところに普及しそう。他の形態としては、ヤマハ「モトロイド」に続いてBMWも無人走行バイクを開発。発車と停車も自動で行えるという。一方中国は無人AI潜水艦を開発しており、2020年代初頭に配備予定とのこと。海戦のゲームチェンジとなるだろうか。


5.非分解検査用極小ロボ、コロイド移動の微小ロボ

ロボットも無人機の一種だが、ロシアでは2019年にヒューマノイド型ロボット「FEDOR(ヒョードル)」を無人ソユーズに乗せて打ち上げ予定。宇宙のような極限環境ではロボットの活躍が期待されるが、このロボットは拳銃の発射能力も備えており、地上ではロボコップ的な何かが出現する可能性もある。

そんなロボット関連で特に興味深かったのは次の2つのニュースだ。

ロールスロイスが英ノッティンガム大や米ハーバード大と共同して開発を進めるのは例えば10mm台の昆虫型ロボット。カメラを備え、エンジンの非分解検査が可能になる。他にもヘビ型などいくつかのロボットが提案されている。


図:Rolls-Royce

将来はこうした小型検査ロボットが当たり前になり、さらに未来では家庭用にも普及したりするのかな。むしろペットに欲しい気も。

また、MITの微小ロボットの研究は、コロイド状態の気体・液体中での移動を可能にしたというもの。具体的には、空気中にいつまでも浮遊できる塵などを伝っての移動となる。ナノマシンの移動原理としておもしろく、実現に期待したい。


6.AI技術で人の動きを別人に完全転送

ロボットはAIの有望な応用領域でもあり、次のサイトが各産業分野でのユースケースをまとめていて参考になる。

そんなAIの最近の研究成果で驚くのが、ダンスの動きを別人に変換できたというもの。「Deepfake」と名付けられた技術である。

YouTube Preview Image
 

人の表情の移植とか、AIによる見た目の操作は進んでいて、スクリーンの向こうは何も信じられない時代が来そう、という話は前回紹介したけれど、次には動き全体をも操作できたということで、もうホントに油断ならない。


7.感覚、視覚、そして味覚の電気的な人工補綴

宇宙とか無人機とか無機質なニュースが続いたけど、最後に人間に関するニュースを紹介する。人間能力を拡張するポストヒューマン技術がやはりアツい。

神経刺激による半身不随からの回復

まずは医療向けの埋め込みデバイスの話。事故で脊椎損傷して下半身不随となった患者が、脊椎への神経刺激デバイスを埋め込むことで再び歩けるようになった、というニュース。

侵襲型のデバイスはこうした重篤な患者からまず試されていて、近年目覚ましい効果をあげている。損傷が回復するのは嬉しいし、こうした技術はやがては一般の人にも応用されていくだろう。

非侵襲では、脳波により「3本目の腕」を操作したという研究も。タスクごとの脳の活動パターンを区別し、85%という高精度でロボットアームを動かせたという。このあたりはAI技術の進歩も大きく貢献しており、今後のさらなる発展が期待される。

バイオニック・アイの実現に一歩近づく

ミネソタ大学は世界で初めて、3Dプリントによる完全な光受容体のガラス半球表面上への配置に成功。バイオニック・アイの実現に近づいたという。


図:Minesota大学

「バイオニック・アイ」とは、カメラなどの撮像信号を電気刺激に変換し、網膜の神経細胞に伝達することで、盲目でも視力を得られるようにする技術だ。眼球に問題があってもその奥の脳に繋がる信号処理が問題ないなら、眼球の代わりを工学的に補い信号を伝えてしまおう、というアプローチである。

カメラ信号を網膜に伝える技術はすでにあるけど、今回のミネソタ大の研究は半球上にセンサを配置しており、義眼のような、より眼に近いバイオニック・アイに繋がるはずだ。

電気刺激による味覚の再現

シンガポール大学のラナシンハ博士は、箸やお椀に電極を仕込んで舌の味蕾を刺激することで、「苦味」「酸味」「塩味」を電気的に再現した。これにより実際には塩分控えめでも塩分を感じられるので、食生活を健康的に変えることができる。


電極に触れるように飲むラナシンハ博士
(図:Hacking the Flavor of Food With Electric Chopsticksより)

一方、東京大学と大阪大学は、顎と首に電極を取り付け電気刺激を与えることで味覚を増強させることに成功。口腔内に電極を入れることなく、塩分やうまみを増加させたり、長時間持続させることができるという。

味覚のような化学的刺激が電気的に再現できるというのはおもしろい。VRなどの疑似体験での用途にも期待される。

ミバエの脳のニューロン10万個の完全地図化に成功

ハワード・ヒューズ医学研究所は、ミバエがもつ10万個のニューロンについて、その繋がりのマップ化・画像化に成功した。

これの何がすごいって、脳内のネットワークが完全にわかることで、ミバエの行動を駆動する脳の部位や機能が特定できることになる。これは昆虫であっても画期的なことだし、さらにはネズミや、そして人の脳活動の完全解明がいずれ実現することも示唆している。

今後このマップからどんな知見が得られるか、期待は大きい。


この3ヵ月で見かけたおもしろガジェットたち

最後に、この3ヵ月で見かけた素敵なガジェットやサービスたちを紹介。スマフォアプリの「うきよウェーブ」入れるか迷った。

背中で揺れるバックパックHoverGlidがキモ便利そう

背中にスライド機構を備えることで上下動の負荷を軽減するバックパック「HoverGlid」。たしかに楽そうというか無重力感素敵だけど、違和感仕事しすぎでもある。

現実と仮想現実の境界線に位置する生物

こちらは2017年のものだけど見つけたのは最近なので紹介。インタラクティブなデザインが素晴らしすぎる。最後には驚きのオチも。ぜひスマフォで確認したい。

リボルバー式トイレットペーパー芯ランチャー

トイレットペーパーの芯をリボルバー式で連射できるランチャーの自作動画がやばい。こういう猛者に出会えるだけでもう本当にインターネットごちそうさまです。

 

以上、2018年7~9月における、未来に影響のありそうなテクノロジー系ニュースをまとめてみた。

最後にちょっとだけ言い訳を。テクノロジー系ニュースのまとめのこのシリーズは現在は主にTwitterのTLがソースなんだけど、この3ヵ月は色々忙しくて、私的非常事態宣言発令によりTwitter見ないようにしてたんだよね。そのため普段よりはニュースの数が少なかったかも。でも特に反省はしない。

この3カ月のニュースの中でも、特に気になった次の3つは個別の記事にまとめてみた。

前回3ヵ月のニュースのまとめはこちらから。
1.ブロックチェーン・ベースの非中央集権宗教「0xΩ」/2.人格の仮想化技術・仮装化技術/3.脳内思考「内言」の解読/4.時間反転対称性を崩す「Flux Capaciter」の発明/5.『実時間メロス』/6.記憶はRNAにも保存/7.ジョギングするアトラスと群行動する中国無人ボート群/8.中国にも注目の再利用型ロケットと民間宇宙開発企業/9.火星での有機物発見とテラフォーミング用バクテリア

 

  

 

Pocket

Civ4五大国決戦マルチ実況・弦音視点(4)「弦」建国

いなたくんへ

文明シミュレーションゲーム「Civilization」マルチプレイの実況第4回。
第1回と前回記事はこちらから。

前回は北西の亥海沿いに建設した第5都市「亥海衛」と、蛮族に奪われた元馬の民の都市「寧夏」を巡り事件があった。その結果として我が弦の民の状況は悪化したと言わざるを得ない。今回はそんな弦の民の内部ストーリーも絡めて実況したい。

Summary Note

プロローグ:内憂外患を憂うる羽一族

A.D.410:王政開始と「弦」国の成立

A.D.590:「三蔵」の馬領ティフリス到達

次回戦略

コラム:「君主政治」はテクノロジーか?

なお、この実況はブログ『木牛流馬は動かない』の筆者氏とのマルチ実況だ。画面を見られてしまう都合上、実際のプレイと記事の公開とはタイムラグを設けていて、今回第4回は2018/1/28のプレイ内容である。


プロローグ:内憂外患を憂うる羽一族

きっかけは亥海衛の失陥だった。失陥、と言って差支えのない雰囲気が弦の民に満ちていた。
弦の民はB.C.40に北西の亥海沿いに第5都市「亥海衛」を建設するも、A.D.80の寧夏事件で馬の民に譲歩し、これを喪う結果となった。海路確保の失敗は弦の民を紛糾させた。

増大する夷狄の脅威

決定的になったのは、A.D.160のマリによる「オーダゴート」の建設だ。弦の民は亥海南岸に新都市建設を目指していたが、マリに先を越され、海路確保は絶望的な状況に陥る。


亥海に建設した第5都市「亥海衛」は馬の民との協定により破棄予定.
ということでその南に新たに都市を創ろうとしていたら、マリに先を越されてしまった.

さらにマリは、南西の虎谷関付近にも都市「ニアニ」を進出させる。マリと弦の民との勢力圏の衝突が顕著になっていた。

脅威はマリだけではない。東に勢力圏を接する餃子の民は強大であり、北ではシャカ族と馬の民が勢力の拡大を争っている。これら異民族に対して、弦の民は明らかに無防備だった。


A.D.260頃の世界情勢

悪化する財政

内政に目を向けると、財政問題が露呈する。

都市には維持費がかかる。これは首都・天元府から距離が離れるほど大きくなるもので、虎谷関や亥海衛といった遠隔地への入植は弦の民の支出を圧迫した。

民の間の幸福度低下も顕著で、このために各都市で不労人口が発生している。不満を抱え働かない民は、何ら生産力に寄与せず、食料の消費のみをする。




天元府、征餃子鎮、木牛流馬府の都市管理画面.
オレンジのバーは供給食料と消費量を表し、差分が人口増加に寄与する.
青色のバーは生産力を表し、右端赤字が不労人口を示している.

次の財政管理画面の見方は以下の通りだ。

  • 歳入:47(=22+4+21)
  • 収入:21(歳入47から研究費22、諜報費4を差し引いた数字)
  • 経費:21

収入と経費が釣り合っており(21-21=0)、国庫に備蓄する余裕がない。

特に注目したいのは「商業」の項目の「研究力」で、30%とある。100%になるほど十分な研究がなされ、テクノロジー開発が進むが、現状の財政では30%の力でしか研究できていない。研究力はせめて最低でも60%を維持したいところだが、現在の財政状況はそれを許さない。技術開発の遅れは、異民族に対する競争力の喪失を意味する。これは安全保障上の脅威となる。

A.D.160:「弓術」の開放

こうした状況を憂いたのが、古代より弦の民の神事を司ってきた羽一族である。羽氏は占術を専らとし、その祭器として用いられる弓は「弦の民」と名乗る由来にもなっている。

羽氏はA.D.160、一族の秘術とされた「弓術」を公のものとし、弦の民を夷狄の脅威に備えさせようとした。しかし以上に述べた通り、弦の民の抱える問題は内政にもはびこっており、羽氏の目はそちらも向いていた。

といったところを背景として、引き続き弦の民の歴史を追ってみたい。

(えっ、Civ4は具体的な人物にまで言及するゲームじゃないって??「弦の民」の独自設定だよ!)


A.D.410:王政開始と「弦」国の成立

まずは内政である。

A.D.320:第6都市「白兎鎮」建設

A.D.320、天元府の南東、征餃子鎮の南に第6都市「白兎鎮」を建設する。嗜好品である兎の毛皮は民の幸福度を上げられるので、この獲得が目的だ。白兎鎮には東の餃子の民の押さえとしての期待もあり、行政区分は「鎮」とした。



南西に建設した第6都市「白兎鎮」.
雪原に見えるのは兎……ん……? キミ、兎……だよな???

A.D.350:第7都市「龍樹路」建設

さらにA.D.350には木牛流馬府の北に第7都市「龍樹路」を建てる。本来は亥海沿いの都市建設を目指していたが、亥海衛は馬の民との協定で破棄することとなり、その南岸もマリに塞がれたため、内陸に後退する形となってしまった。

龍樹路は密林に囲まれた都市で、開発には苦労しそう。
行政区分の「路」には、この都市が次なる都市への中継点となることへの期待を込めている。弦の民は亥海への進出をあきらめたわけではなく、龍樹路を経由しての進出に努めるだろう。

A.D.300年代:アカデミーとパルテノン神殿の建設

A.D.290には、馬の民と3度目になる技術交換を実施。「弓術」を教える代わりに「漁業」を習った。馬の民は海沿いの拠点も持つのだろうか?

A.D.320には首都・天元府にて大科学者エウクレイデスが出現する。「偉人」と呼ばれるユニットの1人で、彼らにしか建てられない特殊建造物や、テクノロジー開発をすることができる。今回はエウクレイデスを使って首都に「アカデミー」を建設した。これにより研究力を向上させることができる。

そしてA.D.350に征餃子鎮にて文化遺産「パルテノン神殿」が完成。パルテノン神殿は偉人の出現率を向上させる。

なお同時代、A.D.320には異民族が文化遺産「ハギア・ソフィア大聖堂」を完成させたとのうわさが。どこの民族かは特定できていないが、文化遺産の建設競争が進んでいる。

A.D.380:「君主政治」思想と革命の勃発

A.D.380、弦の民においてにわかに「君主政治」の思想が醸成され、概念として成立、革命が勃発する。革命を主導したのは言うまでもなく羽氏である。羽氏は「弓術」の公開を通して武力集団を形成し、これを背景として権力の掌握を図ったわけだ。


右側太字が今回プレイで獲得したテクノロジー(「漁業」と「君主政治」)

A.D.410:弦の民、国号を「弦」と称する

A.D.410、弦の民は羽氏を民族の王として戴き、国家の樹立を宣言した。これまでこの集団は「弦の民」の民族名をもって運営されてきたわけだけど、君主の統治に基づく体制に変えたわけである。

国号は「弦」と決定され、諸民族にも布告がなされた。


布告に対しどの民族からも祝賀の言葉がなかったのが不満ではある

羽氏の権力掌握の目的は、国家運営の効率化と、衰亡しつつある弦の民の建て直しに他ならない。政治制度として「世襲制」が採られ、羽一族の導きの下で改新が開始される。

「世襲制」を採用すると、軍事ユニットの都市駐留により市民の幸福が増大する。これで各都市の不労人口を減少できた。とは言えまだまだ財政状況は厳しい。弦王の治世に期待したい。

A.D.590:宗教の奨励

羽氏がもともと祭祀を担う一族だったこともあり、王は宗教の強化にも力を入れる。
A.D.590には首都・天元府に多神教の寺院を建設。宗教の強化はより国民の団結を高めることになるだろう。

同年には征餃子鎮にて文化遺産「ゼウス像」が完成。「ゼウス像」は異民族との戦争が起きた場合に、相手の厭戦感情を高めることに寄与する。


A.D.590:「三蔵」の馬領ティフリス到達

さて、弦王国の成立と内政強化の始まりを見たところで、同時代の異民族情勢も紹介したい。

各地で進む蛮族討伐

A.D.160に発動した「天竺作戦」の遂行者として、密偵「三蔵」は征餃子鎮を発し、北西を目指した。天竺作戦の目的は以下である

  • 北方の未開拓領域の探索
  • 特にシャカ族の勢力圏の踏査

シャカ族とは相互通行の約定がないため、通常ユニットでは侵入できない。そこで密偵が行くわけだ。

弦で建国革命が起こったA.D.380、「三蔵」は征餃子鎮北東にて蛮族都市フリギアを発見した。ところがA.D.410に餃子の民がこれを攻略、破壊する。餃子の民の勢力拡大を目の当たりにした形だ。



征餃子鎮の北東でフリギアに接する「三蔵」(上)
フリギア壊滅後、さらに北を目指す「三蔵」(下)

弦国王の立場にて蛮族討伐の労をねぎらうと、餃子の民より返礼が得られた。

続くA.D.440にはシャカ族も蛮族都市チェロキーを攻略したとの報せが入る。こちらもねぎらってやる。

時代が下がってA.D.560、今度は我が白兎鎮の都市圏にも蛮族が侵入。また返り討ちにして……と思ったら兵がいない!白兎鎮はうっかり兵の配置を忘れていたのだ。ヤバい。このままでは次のターンで占領・破壊されてしまう。いやいやそれは無しでしょ…。せっかく作った都市なのに…。


白兎鎮に迫る蛮族.
労働者は兎の皮を獲るためのキャンプを設営中.

そこで奴隷制の緊急生産により、人口を消費して戦士を生産。ギリギリ1ターンでの生産が間に合い、A.D.590に蛮族の攻撃を受けるのと同時に配置、無事打ち払うことに成功した。いやーギリギリだった。油断できない。

宗教布教にいそしむ異民族たち

異民族の様子を見ると、宣教師の活動が盛んである。それぞれが信じる神を別の都市に布教しようというのだ。


十字型の宗教用具を抱え、丁河沿いを北進する餃子の民の宣教師

シャカ族の宣教師も来ていたが、弦国に入れず立ち往生の様子

立ち往生と言えば、シャカ族の斥候が弦国と餃子の民の勢力圏に挟まれ、かつ南も山岳で出られなくなっておりザマァwwwwwww 一生そこでクソして寝てろwwwwwww

「征餃子鎮」と「みんみん」の勢力圏争い

ところで、前回万里の長城を越えて勢力圏を拡大した我が征餃子鎮だったが、餃領「みんみん」の勢力が盛り返し、再び万里の長城のこちら側まで押し戻されてしまった。

勢力圏は都市の文化力により拡大していく。「みんみん」の文化力の高さがうかがえる。負けてはいられない。

馬の民は脅威となるか

A.D.440、馬の民が征餃子鎮の都市圏に接する形で都市「オトラル」を建設する。


オレンジのマルがオトラル.
その奥には馬の民の首邑カラコルムが控える.

え、マジすか……。オトラルの都市圏が広がればこちらの勢力圏が削られるわけで、特に銅とか重要な資源が奪われかねないわけで。これけっこう敵対度高い行動ですよね……。

さらにA.D.500には馬の民の斥候が虎谷関に侵入。馬の民に国境を開いた覚えはない。侵犯にあたるとして速やかな退出を促した。


国境侵犯する馬の民の斥候(虎谷関右)

A.D.530、馬の民に開拓者1体を贈る。A.D.120に贈ったものと併せて2体目となる。蛮族により都市を破壊された馬の民への復興支援の一環である。前回までにも述べた通り、我が弦国と接する馬の民とは友好関係を築き、さらにはシャカ族・餃子の民への牽制を期待すべく、支援する方針でいた。

もっとも、タダで貴重な開拓者2体を贈ったわけではない。見返りとして、馬の民の勢力圏の無害通行の約定を取り付けてた。馬の民の我が国への侵入はご遠慮願うが、我が民は馬の民の勢力下でも自由に行動が可能となる。これは馬の民だけでなく、シャカ族や餃子の民の動向を探るうえで重要になっていくだろう。

弦馬復興支援協定(A.D.120締結)

1.弦の民は、馬の民への復興支援として開拓者×2を譲渡する
2.馬の民は、弦の民の馬の民勢力圏内の自由通行を保証する

A.D.590:「三蔵」の馬領ティフリス到達

シャカ族勢力圏を目指し北上を続ける三蔵であったが、別動の斥候もまた馬の民の勢力圏を通過しつつ北上していて、両者はA.D.590に馬領ティフリスを眺める形で合流した。


港湾都市と船を手にしていた馬の民.
北にティフリス、南にサマルカンド.

ここで、三蔵と斥候の道程をふり返ってみる。馬の民の勢力圏の全貌が見えてきた。


西に釈領ノバンバ、南に馬の民の首都カラコルム、北東に馬領ティフリス.
丁河はトゥルファン、サマルカンドを経てティフリス南まで続いていた.

南に弦国勢力圏、北に釈領ノバンバ、中央右に馬の民の首都カラコルム

うーん、こうしてみると、馬の民の勢力圏が結構広い。首都カラコルムから北東方向にきっちり進出して、海にまで到達している。蛮族に3都市破壊されたと言ってたけど、そうでなければどれだけ広かったんだ。だったら亥海衛を譲歩したり、開拓者を贈る必要もなかったのでは…。

とは言え馬の民は友好な異民族だ。今後も関係は保っていきたい。そもそも、馬の民がこの地域にきちんと勢力を持つことは、シャカ族及び餃子の民への牽制として、わが国の戦略上も歓迎すべきことなのだ。

また、シャカ族の勢力圏は馬の民のそれを隔てて北にあることがわかった。馬の民に完全に抑え込まれている感じ。次回は三蔵に潜入してもらって、シャカ族の勢力圏をしっかり確かめていこうと思う。

なお次回を待ちきれずシャカ族の様子を早く知りたい!という場合には、以下のシャカ族視点の実況記事をご覧あれ。


次回戦略

ということで今回はここまで。
君主制を敷いたものの、未だに研究力は30%のままであり、財政の厳しさは去っていない。次回も引き続き王の親政により、弦国の強化が図られていくだろう。

注意すべきは隣国で、特にマリが兵力増強の兆しを見せている。残された時間は多くはないかも。

次回は内政に注力しつつ防御力も固めたい。そして北方探索を目的とした「天竺作戦」を遂行し、シャカ族の勢力を明らかにしていきたい。


A.D.590頃の世界勢力図


コラム:「君主政治」はテクノロジーか?

財政難がために研究に予算を割けず、馬の民と技術交換した以外では、今回開発できたテクノロジーは「君主政治」だけだった。

ところで「君主政治」。これは「テクノロジー」と呼んでよいのだろうか。

テクノロジーの相互接続システム「テクニウム」

参考になりそうなのが、テクノロジーと生命の進化を論じた『テクニウム』(2014)だ。本書によれば、「テクノロジー」という言葉は、(並行世界の)1882年にゲッチンゲン大学経済学教授ヨハン・ベッグマンが、産業革命による機械製品の普及を論じるために使ったドイツ語「Technologie」からきているそうだ。

ここで本書では、個別の方法や装置を示す「テクノロジー」に対して、テクノロジーが大規模に相互接続された自己強化する創造システム「テクニウム」なる概念を提唱する。「テクニウム」は次のように説明される。

テクニウムはただのピカピカのハードウェアの範疇を超え、ありとあらゆる種類の文化、アート、社会組織、知的創造の全てを含む言葉だ。それには手に触れることのできない、ソフトウェアや法律、哲学概念なども含む。そして最も重要なことは、われわれが発明をし、より多くの道具を生み出し、それがもっと多くのテクノロジーの発明や自己を増強する結びつきを生み出すという、生成的な衝動を含んでいるということだ。

『テクニウム』より

注目したいのは、テクニウムが文化やアート、社会組織、法律、哲学概念といった、必ずしも技術に立脚しないものをも含む点である。

InventionとInnovation

テクノロジーと言えば思い浮かぶのは「発明」。並行世界の日本なる国では特許法上にその定義があるので見てみよう。

この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

特許法第2条

一方、発明とよく比較される言葉に「イノベーション」がある。「技術革新」と訳されることも多いようだが、イノベーションは実は技術的なものに限られない。

提唱者である経済学者シュンペーターは「経済の本質は均衡を破壊することである」とし、均衡を破壊する次の5つの要素を総括して「イノベーション」と名付けた。

  • 新たな市場の創出
  • 新たな価値をもった新製品の製造や、既存製品に対する新たな価値の付加
  • 新たな生産方法の導入
  • 今まで知られていなかった原料や半製品の獲得
  • 新たな組織の実現

あるいは、経営学者ピーター・ドラッカーはイノベーションを「パフォーマンスの新たな次元を生み出す変化」と定義している。

「君主政治」はテクノロジーか?

王なる一個の人間に権力を集中させて、集団の統合の象徴とする。この新しい組織運営の仕組みが、それまでの均衡を破壊したり、効率の次元を引き上げるなら、「君主政治」なる概念はまさしくイノベーションに相当する。

Civ4世界でいうところの「テクノロジー」がイノベーションや、あるいはテクニウム、すなわち「自己強化する創造システム」をも含むとすれば、「君主政治」はテクノロジーと言えるだろう。そしてこれから弦の民が生み出す多くの社会システムもまた、弦の民という存在を強化するための創造的仕組みになるはずだ。

ということで、次回以降出現するテクノロジーも楽しみにしたい。

 

 

Pocket