21世紀の各国の未来を、算命学にこじつけて占ってみた(ロシア・欧州・米国編)

いなたくんへ

風水では一般に北東方向を「鬼門」とする。鬼門を穢さぬよう、たとえば台所や風呂場などの水場を北東に置くことは忌避される。北東が鬼門とされるのは、陰の方向(西・北)と陽の方向(東・南)の境界に当たるためだ。

実は鬼門は日本の陰陽道の流行から有名になったもので、風水の本家中国ではあまり重視されていないらしい。とはいえ中国に来歴があることは確かで、紀元前の地理書『山海経』にその記述が見られるという。ちなみに『山海経』はポケモンGOのパロディ「山海経GO」でも最近注目されたよね。

中国由来の占術「算命学」も方位をみる。算命学では国家の命運を占うにあたり、10年ごとに5つの時代に区分する。まず動乱期があり、国が安定すると国家の中枢を担う人材が教育され(教育期)、彼らが経済確立期と、次いで庶民台頭期とをもたらすが、やがて権力が庶民を抑えるようになって国家は衰退し(権力期)、再び次の動乱期を迎える、というシナリオだ。

「占い」とは言え、長い中国の歴史から経験的に導き出された法則であり、理に適っている。実際に過去の歴史を確かめるとけっこう当てはまるかも、という検証は以前紹介した通りだ。

この5つの時代に方位が定められていて、北東方向にあたる教育期の半ばが「鬼門」とされる。たとえば大日本帝国の教育期(1900-1910)の半ばには日露戦争が、中華人民共和国では文化大革命が、米国の5サイクル目の教育期(1998-2007)には9.11が起きていた。
教育期の半ばは、ちょうど国家が権力期・動乱期という「陰の時代」から、経済確立期・庶民台頭期という「陽の時代」へと遷移する境界にあたる。これは風水において北東が鬼門とされる理由とも合致する。

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算命学を用いた国家の長期トレンド予測は、少なくとも一側面では当たっていそう。過去の検証は行ったので、今回は占術本来の機能である未来予測に使ってみる。と言っても「日本は2017年から経済台頭期!」と計算するだけではつまらない。未来予測に関するいくつかの書籍も参考にして、具体的に起きうる事象に当てはめてみた。

21世紀において各国はどんな季節を過ごすだろうか。

今回はロシアと欧州、そして米国の未来について。中国・アジア・日本の未来は後編で。


1.2020年ロシア崩壊説は当たるのか

算命学のサイクルの起点は、国家においては憲法制定年とされる。ロシアの場合、ロシア連邦憲法が制定された1993年が動乱期の始まりとなる。その未来の運命について、ジョージ・フリードマン著『100年予測』(2009)の予想を参考に見てみたい。本書によれば、ロシアは2020年代に崩壊することになる。

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「鬼門」南オセチア紛争を乗り越えたロシア

ロシアは2013年から経済確立期にあり、すでに教育期(2003-2012)を通過している。その半ばには鬼門通過が起きていたはずで、まずはこれについて考えてみる。私はロシアの鬼門通過現象として、グルジアから南オセチア地方を回収した2008年の南オセチア紛争(ロシア・グルジア戦争)を挙げてみたい。

南オセチア紛争は北京五輪の最中に起きた。コーカサスの小国グルジア(現ジョージア)にロシアが軍事介入し、それまでグルジアに含まれていた南オセチアとアブハジアがロシア連邦に帰属する結果となった。紛争は米国との緊張を招き、プーチン首相(当時)は冷戦の再開をほのめかすなどした。

紛争の背景には、2003年のバラ革命でグルジアの政権が米国寄りに変化したことがあるとされる。ロシアは、ソヴィエト連邦勢力圏の国が西側陣営に帰属することを脅威と捉え、これを許さないとされている。
同様のことはウクライナでも起きた。東側陣営だったはずのウクライナがオレンジ革命(2004)で米国寄りに変わると、2014年にウクライナ紛争が勃発、要衝クリミア半島はロシアに「回収」された。

西側の影響を受けた旧東側諸国に対して、今後もロシアが侵攻を行い、ソヴィエト時代の勢力圏を取り戻そうとするならば、その最初の行動は2008年の南オセチア紛争に端を発することになる。鬼門に当たる2008年に起きた紛争は、ソ連崩壊後の動乱という陰の時代から、強いロシア復活という陽の時代への境界に起きた事件と言える。

『100年予測』の2020年代ロシア崩壊説は当たるのか

ロシアのウクライナ侵攻を言い当てたのが『100年予測』だ。本書は地政学の観点から各国が「取るべき」行動を挙げており、ロシアは2010年代に中央アジア、コーカサス、ベラルーシ、ウクライナとの紛争を起こし、その一部を手に入れると予想した。

本書の予想はさらに続く。ロシアはバルト諸国も包囲するが成功せず、2020年を過ぎたころ、軍事費負担などを原因として自壊するというものだ。

算命学に基づきロシア崩壊説を読んでみる

現在ロシアはシリアへの介入を行っているが、財政悪化により規模を縮小しているとみる向きもある。ロシアはこのまま崩壊してしまうのだろうか。ここで算命学に基づき考えてみる。算命学によればロシアは2013年から2022年までが経済確立期にあたり、その後10年の庶民台頭期を控えている。

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ロシア崩壊説が当たるなら、次のような理由付けや予想ができるだろう。

  • 本来経済確立を果たすべき時期に、軍事費負担により経済を温められず、国力増強の機会を失ってしまう
  • 2023年の庶民台頭期に、相次ぐ紛争に不満を持った国民により、国体に関する大きな変化がもたらされる

一方、経済確立期であることを根拠として『100年予測』の予想が外れることもありうるだろう。例えば次のようなシナリオだ。算命学が正しければ、ロシアに追い風は吹いている。

  • 軍事費負担の影響は大きいものの、経済確立期の到来により持ち堪えられ、ロシアは自戒せずに済む

どちらに転ぶかは現時点では不明だが、2020年代に向けてのロシアについて、経済確立期にあるという文脈で眺めてみると、発見があるかもしれない。

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ロシアの名目GDP推移とIMFによる推計(世界経済のネタ帳より)


2.陰陽をとらえて大国化するポーランドとトルコ

『100年予測』のロシア崩壊説には続きがある。勢力圏拡大を目指すロシアに対抗して、米国がトルコとポーランドを支援し、両国が大国化するというものだ。

予測の概要は次の通り。このシナリオは当たるだろうか。

  • 米国は対ロシア戦略としてポーランドとトルコを援助する
  • トルコは2020年代に世界10位内に入る経済大国になり、ポーランドは2030年頃に大国化する
  • イスラム世界が対ロシアの影響や石油枯渇の兆候を受けて不安定化するなか、経済発展したトルコがその中心的地位を手にする
  • さらに勢力の拡張を進めるトルコは、2030年から2040年頃には米国と対立するようになる

トルコ・ポーランドの算命学上の時代の推移

両国について、算命学ではどのような時代を経るだろうか。

ポーランドは第二次大戦後にソ連の衛星国となり、一党独裁の共産主義国となった。その後1989年に民主化が実現、第三共和国が成立する。憲法は1997年の改正憲法があたる。
教育期(2007-2016)の半ばには、Tu-154墜落事故(2010)が起きている。式典参加のために移動していた大統領夫妻と政府高官あわせて96人の死亡は、国家に少なくない衝撃を与えたはずだ。

トルコ共和国はトルコ革命(1918~)によるオスマン家追放のあと、アタテュルクにより建国される。世俗主義や民族主義を掲げた共和国憲法は1924年に制定された。トルコは1980年にクーデターがあり、現在の憲法は1982年改正のものが使われているが、アタテュルクが示した諸原則は引き継がれており、動乱期の起算点は1924年として考える。

すると両国の時代は次のように推移していくことになる。

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ポーランドは陽の時代、トルコは陰の時代

ポーランドは2017年から2037年までを、経済確立期と庶民台頭期という陽の時代を過ごすことになる。この期間に米国からの支援を受けるとすれば、2030頃に大国化するという『100年予測』の予想も実現しそうだ。

一方トルコはいま陰の時代、権力期(2013-2022)のただ中にあり、実際に大統領の権限を強める憲法改正(2016)が行われたりした。高まる独裁的志向に対し、2016年8月には世俗派の一部トルコ軍がクーデターを起こしたが、いかんせん権力期であり時期が悪い。権力側、すなわちエルドアン大統領はスマフォで直接国民に危機を訴えるなどして見事にこれを防いだ。

トルコのロシアとの関係では、シリア情勢でロシア軍機を撃墜してトルコ・ロシア間に緊張が走るも、のちに急接近するなど目が離せない。トルコのロシア接近には米国も黙っていないはずで、これが米国のさらなるトルコ支援のきっかけになれば、これも『100年予測』のシナリオに沿うことになる。

トルコについて注目したいのは権力期が明けた後、2024年からの新サイクルをどう迎えるかだ。トルコ経済は2001年の金融危機のあと回復し、BRICsに次ぐ新興経済国VISTAの1つに数えられる。2023年には経済規模で世界10位に入ることを掲げており、実現すれば中東世界において中心的地位を得ることも夢ではない。こうした地政学的変化が、次の動乱期(2024-2033)の摩擦を生むことはありそうだ。

対米開戦に先立ち、2040年頃に大事件が起こる

『100年予測』では、大国化したトルコは2030年から40年には米国と対立し、日本と同盟を結んで対米戦争を起こすとしている。2050年のトルコは経済確立期(2044-2053)にあり、戦争のための国力は十分にありそうだ。

さらに算命学に基づき考えるなら、戦争に先立ち教育期(2034-2043)の半ば、ちょうど対米関係の悪化する時期に、「鬼門」に相当する大事件が起こるだろう。トルコの中東世界への影響や、のちの対米関係を鑑みれば、この事件は21世紀を運命づけるものになるかもしれない。


3.2060年に人口逆転するドイツとフランス

ロシア、ポーランド、トルコと来たので、欧州に目を向けてみる。ちょっと興味深いのがドイツとフランスの関係だ。英エコノミスト誌による予測本『2050年の世界』(2012)では、2060年の両国の人口逆転に注目する。フランスの人口がドイツを上回るのだ。

  • 独国人口:8200万人(2000)→7200万人(2060)
  • 仏国人口:5900万人(2000)→7400万人(2060)

フランスにとってドイツは脅威であり続け、第二次大戦後も、EUの前身組織ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)を設立してドイツとの戦争回避にに努めた。しかしフランスの人口がドイツを上回ることで、両国のパワーバランスが変化する、というのが本書の予想だ。

1870年から1945年のあいだに、フランスはドイツの力を制限すべく、三度の戦争を戦った。そして、1945年以降は、のちにEUとなる組織を設立し、中央ヨーロッパの大国を封じ込めてきた。しかし、今後の半世紀で独仏両国のバランスには変化が生じ、フランスはより大きくなっていくだろう。(中略)

フランスのドイツに対する懸念がEUの動機でありつづけるなら、独仏関係は英仏関係に取って代わられるだろう。

『2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する』より

2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する

算命学からみるドイツとフランスのいま

この人口逆転は、算命学的にはどのように読み取れるだろうか。例によって両国の算命学上の時代推移をまず確かめる。

フランスはフランス革命(1789)のあと何度も政体を変更し、現在は第五共和国(憲法制定は1958)となる。ただし、人権宣言を採択した最初の憲法(1791年制定)の理念は引き継がれており、動乱期の起算点は1791年としたい。すると現在は5サイクル目の経済確立期(2011-2020)にあることになる。

ドイツは第二次大戦後の分割のあと、1949年に西ドイツでドイツ連邦共和国基本法が制定された。これは東西ドイツの統一も視野に入れた憲法であり、ベルリンの壁崩壊後の東ドイツ統合(1990)を経て、引き続き用いられている。

ドイツは現在2サイクル目の教育期(2009-2018)にある。その半ばに起きた鬼門通過は何だろう。私はイスラム圏からの難民流入を挙げたい。ドイツはシリア内戦の難民を積極的に受け入れてきたが、その政策は岐路に立たされている。

ドイツの難民・移民の受け入れはシリア内戦に限ったものではなく、以前より行われていて、現在ドイツの人口の実に20%が移民となっているという。その背景には、ナチス・ドイツ時代のホロコーストに対する贖罪があるとされる。

しかしシリア難民受け入れの失敗は、戦後のドイツの人道意識を変えるきっかけになりかねない。さらには台頭する極右勢力の動きも気になるところだ。ドイツは1990年からの20年、算命学では陰の時代に当たる期間を、東西統一という苦しみに費やしてきた。これが鬼門を通過することで、新たな価値観の時代に入るかもしれない。

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人口逆転が両国にもたらす影響

さて、独仏の人口逆転が起きる2060年はどういう時代か。追い越すフランスはちょうど経済確立期・庶民台頭期(2061-2080)という陽の時代に当たり、ノリノリである。人口逆転はフランス台頭のバネとなるだろう。他方、抜かれるドイツは教育期(2059-2068)にあたり、どうもこの人口逆転が次の鬼門になりそうだ。

しかしながらタイムリーなことに、ドイツの出生率反転のニュースが出た。これは逆転の予測を覆しうるので、ドイツとしては喜ばしい。ただし、増えた出生率が難民や移民に由来するものだとすると、それはそれで問題を呼ぶのかもしれない。


4.2050年までに覇権国から凋落する米国

前半の最後に見たいのは覇権国アメリカの未来だ。その動向は世界全体にも影響を及ぼし得る。

米国の過去100年については、すでに算命学に基づく分析をした。米国は西部開拓時代のあと、帝国主義の下に軍産複合体性を発達させる(第3サイクル:1888-1937)。そして次の50年では第二次大戦後の世界で冷戦を闘い、ソヴィエト崩壊により覇権国の地位を手に入れた(第4サイクル:1938-1987)。

次の50年のテーマは冷戦後の世界戦略になるだろう。ただし、5サイクル目の教育期(1998-2007)に起きた9.11同時多発テロに象徴されるように、その仕事は一筋縄ではいかなさそうだ。予測によれば、米国は2050年までに覇権国としての地位を失うことになりそうである。

算命学によれば、米国の21世紀は次のように推移する。

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トランプ大統領の「強いアメリカ」復活と、2027年経済危機

現在の米国は経済確立期の終わりにあり、2018年から庶民台頭期に入る。これを控えて大統領に就任するのがドナルド・トランプ氏だ。選挙戦勝利の背景には、経済成長や繁栄から取り残された庶民の不満があったとされる。

米国は経済確立期(2008-2017)の始まりにリーマンショックがあり、以後経済は回復したとされるものの、Occupy NewYork運動が起こるなど、格差の広がりが問題視された。庶民の時代に移って、トランプ大統領はこれを改善するだろうか。同大統領は「強いアメリカの復活」を掲げている。その在任期間は陽の時代と重なり、実現可能性がありそうだ。しかしその復活は一時的なものになるかもしれない。

過去の歴史を見てみると、米国は経済確立期に好況となり、庶民台頭期が終わるころにはバブル崩壊や不況(1929年のブラック・チューズデーや1970年代の不況)が起きて、権力期に政府が対処する(ニューディール政策やレーガノミクス)。というパターンを繰り返している。すると次に庶民台頭期が終わる2027年にも、陽の時代から陰の時代への転換として、再び経済危機が起こるかもしれない。これは米国の覇権国転落とも同期する。

2030年頃に米国は覇権国から転落する

米国が2030年頃までに力を落とす、というのはいくつもの予想が示している。

まず英エコノミスト誌の『2050年の世界』では、中東世界との長い戦い、非対称の戦争の拡大、中国の台頭により、米国は現在の制海権を維持できなくなると予想する。そして米国は、インド洋から西太平洋の国との軍事同盟に頼らざるを得なくなる。

大統領向けレポートをまとめた『2030年世界はこう変わる』(2013)も同様の予想だ。2030年に中国に国力で抜かれる米国は、軍事的優位性をなお保つものの、「覇権国」から「トップ集団の1位」に力を落とす。

2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」

以上の予測とは若干世界線が異なるものの、『100年予測』では、2030年の米国は南北統一を果たした韓国、および中国と同盟を結び、当時利害の対立することになる日本を孤立させる。仮想敵が中国か日本かの違いはあるが、これは『2050年の世界』が予測する「インド洋から西太平洋の国との軍事同盟」と符合する。

2030年代の米国は、ちょうど権力期(2028-2037)と動乱期(2038-2047)という陰の時代にあたっている。この時期に米国は覇権国からの転落という事態に直面し、6サイクル目に向けて世界戦略の転換を迫られることになるだろう。

そして6サイクル目の教育期の半ばにあたる2050、『100年予測』の予想が正しければ、米国は鬼門通過現象としてトルコ・日本同盟との戦争に直面することになる。前述した通りこの時期のトルコは経済確立期でイケイケであり、算命学的には、風はトルコに吹いている。

 

以上、いくつかの未来予測本を参考に、算命学をモノサシにして各国の未来を予想してみた。ちょっと長くなってしまったので、この続きは後編で。ロシアと同様に崩壊説がささやかれる中国と、そして日本の未来を眺めてみたい。

Summary Note

5.2020年頃「鬼門」を通過する中国は崩壊するのか

6.楽観できないインドの未来、人口ボーナスを終えるアジアの国々

7.経済確立期のシナリオ分岐が、2050年の日米再戦を左右する

 

100年予測 2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する 2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」

 

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