最近ゴキブリやラットの改造に関するニュースを見かけます。バイオ技術の進歩が予想以上に早くて驚きです。生物を改造してのラジコン化、高機能化についてまとめてみました。
Summary Note
昆虫を改造したサイボーグ化は2008年頃から行われている
- ゴキブリのサイボーグ化キットが$100で発売、飛行型も研究が進む
- 昆虫サイボーグ化の主な用途は、災害救助やスパイ活動
哺乳類の改造も研究されている
- ラットの眼への暗視能力付与や、ラジコン化
- 脳と脳のインターネット接続にも成功
Backyard Brains社により発売された科学実験キット「ロボローチ」。これは生きたゴキブリに改造を施し、ラジコン化するというものです。
同社のHP(英語)ではTED動画なども色々紹介している様子。ターゲットは中高生とのことで、ゴキブリの改造がとても手軽にできそうなことが伺えます。「DYI Neuroscientists(日曜大工神経科学者)」ってなんですか。
操縦の原理は、ノースカロライナ大学研究者のコメント紹介がわかりやすいので以下に引用します。要するに、ゴキブリの特定部位に刺激を与えると身体が動くことがわかったので、この反射反応を利用したということですね。
研究者チームは、ゴキブリの神経経路を刺激することで遠隔地からのコントロールを可能としたという。ゴキブリの背中に0.7グラムのコントローラーを取り付け、そこから伸びる電線を尾角と触覚に取り付ける。尾角とはゴキブリのしっぽ付近にある感覚器。ゴキブリは尾角により背後から何かが接近していることを認識し、前進する性質を持つという。また、触覚により前方の障害物を検知し、左右どちらかに曲がってそれを回避する性質も持つ。
研究者チームは、触覚と尾角に微弱な電気を送ることで、ゴキブリを前進させたり、左右に曲がらせることを可能にした、と述べている。
画像は引用しませんが、上記記事ではサイボーグ化されたゴキブリの写真も載ってます。画像は引用しませんが‥。
しかしこれがわずか1万円弱で市販されてしまうというのはすごいですね。
こうしたサイボーグ化ゴキブリの用途として期待されるのが、災害救助です。ゴキブリなら人が入れない事故現場や、危険なエリアにも入り込めます。そのうち小型カメラが搭載されたり、高機能化が進むのでしょうか。
次の記事では、バイオボット(サイボーグ化ゴキブリ)に高感度マイクを取り付け、かつ役割の異なる2種類のバイオボットを用いることで、被災者の場所を割り出す方法が紹介されていました。
バイオボットをラジコン操作するだけでなく、各種センサにより自律的に行動させられれば、用途はさらに広がりそう。
災害救助のほかには、スパイ技術としての利用も検討されているようです。
反射だけで動くとされる昆虫は、よくロボットに比喩されます。ゴキブリだけでなく他の昆虫もサイボーグ化できるのでは、と思って調べると色々出てきますね。2008年頃から研究が始められているようです。飛行型もあるのですね。
- 生きた昆虫を遠隔操作する『HI-MEMS』プロジェクト(WIRED jp,2009/1/29)
- 生きたカブトムシをリモコン操作(動画)(WIRED jp,2009/9/25)
- ゴキブリも大活躍の時代!遠隔操縦される虫達 (NAVERまとめ,2009/9/12)
- カブト虫をサイボーグ化手術で遠隔操縦、高精度な旋回制御に成功(Engadget Japanese,2015/3/25)
UC Berkeley HPより
もう数年もしたら、昆虫のサイボーグ化は小中学校の理科で扱うような教材になるのでしょうか。
ミニ四駆やラジコンに変わり、サイボーグ昆虫バトルが流行る時代が来るかもしれません。捕まえて戦わせるというとポケモンが思い浮かびますが、戦うのは現実の昆虫です。昆虫バトル自体は昔からメジャーな遊びでしょうが、リモコンで操縦するとなると21世紀を感じてしまいますね。
サイボーグ化キットの普及で「生き物=改造するもの」という感覚も当たり前になるのでしょうか。進んだ技術を肌で学ぶことは子供にとって大事ですが、同時に倫理観も学ぶ機会になれば良いですね。
サイボーグ化は昆虫にとどまりません。反射で動く昆虫と異なり、哺乳類となると複雑そうな気がしますが、こちらのサイボーグ化も着々と進んでいるようです。
次の記事は、ラットの脳に微小回路を埋め込むことで、通常なら見ることのできない赤外線の感知を可能にしたというもの。赤外線てどんな風に見えるのでしょうか。記事では「第6感」とあったので、目に見えるというよりは感じるものなのでしょうか。やられたことないのでちょっとわからないです。
てか調べたらラットのラジコン化研究もされてるみたいですね‥。記事の日付が古いので、まだ成功はしてなさそうですが。
Wikipedia
ネズミの実験ですごいと思ったのは、2匹のラットの脳を繋ぐ実験。
複数の頭脳を繋ぎ合わせて「スーパー脳」を創造する試みとして、遠く離れた北米と南米の実験室にいるラットの脳を電極でつなぎ、片方のラットが覚えたことを別のラットに伝えることに成功したという。
実験によれば、ブラジルのラットが訓練により覚えた学習結果を、北米のラットは電気信号を受け取るだけで努力せずして習得したとのこと。
この技術がさらに進んで、脳内チップを通してネットや他人から知識・能力を受け取れるようになれば、あんきパンなんてアナログすぎてとても22世紀とか言ってられなくなるわけです。
ただ脳みそが外部環境に繋がるとなると、ハッキングがちょっと怖くなりますね。
ちょうどゴキブリやラットのラジコン化の記事を見た後なのでなおさらです。
上記実験の趣旨は有機コンピュータの実現でした。プレイステーション複数台を繋いでスーパーコンピューター並みの能力を得たように、生態脳でのグリッドコンピューティングを目指しています。将来のスーパーコンピューターの性能競争は、もしかしたらどの動物の脳を使うかが争点になったりするかもしれないですね。
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クローン羊が誕生して、主にキリスト教世界が大反発したのが1997年のことでした。
こうした動物のサイボーグ化もエスカレートすると同じくらいヤバイと思うのですが、そのあたりはどうなのでしょうか。昆虫だけでなく哺乳類も改造できるならば、いずれは人間でも‥。
ともかくも技術の進歩は早いので、数年後にはさらにどんなことができるようになるのか、楽しみな気持ちと怖ろしい気持ちが半々です。
この記事は、2015/7/12に記載の一部を加筆・修正したものです。