いなたくんへ
シンプルで耐久性があり、持ち歩きやすく、アーカイブしやすく、リーズナブルで知的でセクシー
そんなノートを追い求めた筆者が、比較検討の結果辿り着いたのが「自作」であった。次の記事では、ルーズリングを用いた自作ノート作り、もとい、シンプルで耐久性があり、持ちやすく、アーカイブしやすく、リーズナブルで知的でセクシーなノート作りが紹介されている。
私もそれなりにノートはこだわってきたのだけれど、この記事の自作ノートにはやられたよね。セクシーすぎた。それで私も色々カスタマイズを重ねて、オリジナルのノートを1年ほど運用してみたのだけど、なかなか具合が良いので、閑話休題として今回ここに紹介したい。私の場合はコクヨの『システミック』をベースとしている。当ブログは未来予測と知財をテーマにしているのだけれど、今回は書きたいことを書くことにしたよ!
Summary Note
1.設計思想・要件定義
2.ハードウェア構成(というかノート)
3.Evernoteとの連携運用
4.季旬計画と「スマートノート」改良日記
まずは設計思想として、ノート自作にあたり私が要求したスペックをまとめてみる。
私は「メモ帳」ソフトのヘビーユーザであり、講演会などでもメモはデジタルと決めている。しかし思索にあたってはやはり手書きが良い。喫茶店で気持ちを落ち着け、良質な紙にペン先を走らせると、その音と感触が発想を拡げてくれる。そう信じている。ちなみに喫茶店のコーヒー代は月額にするとバカにならないが、家計簿的には飲食費でなくアイディア費として予算計上している。
思索のためのノートは次の2冊だ。
- 1)日記・雑記・ひらめき用のノート(BLNノート)
- 2)プロジェクト用のノート
ここで前者の「BLNノート」の名称であるが、これはむかし日記・思索に青字のペンを使っていて「Blue Line Note」と便宜的に呼んだことの名残で、いまも同種の用途のノートをBLNノートと呼んでいる。「Note」と「ノート」がかぶってる、というツッコミは頭痛が痛くなるのでご遠慮願う。厨二なる指摘はもってのほかだ。
以上の2冊に加えて、展示会で立ちながらメモを取るなど、ノートPCを開けない場所でも紙のノートが必要になる。人の集まる場所では上記(1)(2)のノートは広げたくないので、別の紙媒体を用意したいわけだ。
- 3)立ち書きメモ用のノート
私は仕事用とプライベートとで2台のノートPCを持ち歩いている。いずれも800gの軽薄短小ノートであるが、カバンの容量にも限りはあり、紙のノートは最低限にしたいところ。そこで1つめの要件として「上記3つの機能を1冊にまとめる」が挙がる。
検討段階でノートカバーを使うことは視野に入っていたので、可能な限り多機能を目指した。ペンホルダーはもちろん、ちょっとした書類や紙片もまとめて管理できればなおよい。
「多機能」は正直言って必要性というより好みだが、欲しいものが欲しいので2つめの要件に加えた。
とは言えデザインにはこだわりたい。カバン容量の制約ももちろんあるが、コンパクト「なのに」多機能だからこそ進歩性は出るのであって、分厚くデカいノートに「どうです多機能でしょ」と主張されても驚けない。時代はムーアの法則である。情報の集積度にはこだわらねばならない。
何より先述のA5サイズオリジナルノートのブログ記事を見てしまったら、スマートさはどうしても意識してしまう。
後述する通り、私はあらゆるデータをEvernoteをマスターとして管理しており、これは紙のノートも例外ではない。従って、スキャンによるEvernoteへのデータ移行の簡便性は重要である。ノート作りにあたってはこの点も考慮に入れた。
さてノートである。ベースに選んだのはコクヨのノートカバー『システミック』(A5サイズ)だ。まずは基本機能を紹介したい。
システミックは複数ノートの同時収容を掲げた商品で、その中でも「リングノートタイプ」は2冊のノートを三つ折りカバーに搭載することを特徴とする。2冊のノートをカバーの左右に挿して、三つ折り構造を折り変えることで、ノートのどちらかを上側に置くことができるのだ。
私はまず左側に、一般的な横開きノートを思索用として1冊セットした。そして右側には縦開きのレポートパッドをセットして、展示会など立ちながらの筆記に用いることにする。これは下図の通り、コクヨに推奨されている方法だ。これならば思索用のノートをいたずらに開かず、メモを取れる。
ちなみにシステミックはポケットの多さにも目を見張るものがある。カバーの外面に2つ、内面にも2つポケットがあるほか、名刺収容のための3ポケットと資料収容用の1ポケットが底面にある。私は名刺用ポケットには予備の名刺のほか付箋を入れて、ブレスト時に使えるようにしている。
ノートのデザインは複数種類あり、皮もカッコいいし、キャンパス地もカジュアルで悪くない。多色展開していて選ぶのに迷ってしまう。
さて、このシステミックをベースとして、いくつかの改造を加えていきたい。
目玉の改造となるのがノートの自作だ。A5サイズオリジナルノートの記事にすっかり感化された私なので、ここを作らぬわけにはいかない。詳細は先述のブログに詳しいが、ルーズリングで好きなルーズリーフを綴じるというのが基本になる。
ルーズリングとは、ルーズリーフのリング部分だけを独立させた、痒いところに手の届いた商品だ。なおリングの開閉には専用のルーズリングジッパーも売られているが、素手でも全く問題はない。
ここでリング式ノートのデメリットとなるのが、左頁を書こうとすると手にリングが当たって書きにくいという問題だ。これをなるべく避けるため、ルーズリングは最小径の8mmを選んだ。これでもページをめくるのにも支障はなく、ノート全体をスッキリさせることができた。
さらにリングはノートの上下6穴ずつとし、中央部分は使わないこととした。常にノートカバーに挟んで使うことを想定しているので、これで十分な耐久性が得られる。リングを通すのは5穴ずつに減らしてもよいと考えていたが、6穴ずつでも筆記に支障がないのでそのままとしている。
筆記は万年筆で行うので、紙はライフのルーズリーフ用方眼リフィル。方眼ノートいいよね。
なお、自作ノートをノートカバーに綴じこむには表紙が必要になる。要するに自作ノートをノートカバーに固定するための基盤であるわけだが、これは適当なルーズリーフ用ファイルを解体して利用した。
自作した思索用ノートには、BLNノートとプロジェクト用ノートの2つの機能を持たせたい。
それまでは「リングに手が引っかかる」「外観かっこよくない」という理由でルーズリーフの利用を避けており、2冊のノートが必要だった。しかし今回ルーズリーフの導入に踏み切ったので、自作ノートの適当な位置で分けて、2冊の機能を持たせればよい。
ノートのセクションを分けるには中表紙リフィルを使うのも一案であるが、インデックス部分がカバーノートのペンに干渉してしまうので、クリップを挟んで目印にするにとどめた。これで全く問題はない。
機能性追求のため、ポケットの増設を行った。
まず、A5サイズの3ポケットクリアホルダーの一部を切り離して両開きの形にし、ノートカバーにセットできるようにした。これをノートカバー底面部のポケットに挿入し、A5用ポケット2つの増設とする。ここには予備の紙や便箋、シール類、取り終わったメモなどを入れる。
さらにコーナーポケットシールを購入して、表紙の内側2ヵ所に導入。これでちょっとしたメモなどを挟むことができる。
これら増設により、ノートのポケット総数は実に12カ所に拡張された。これらすべてを機能的に活用できてはいないのだけど、「12ポケットだぞ!」「いざとなったら収納できるんだぞ!」というアビリティは、私に大いなる安心と満足を与えてくれている。
システミックにセット可能な2冊のノートのうち、右側にはノートパッドを用いて立ち書きメモ用にする。というのは説明した通りだ。ただし立ち書きの機会は多くはなく、ノートパッドを常に持ち歩くのは非効率である。
そこで、左側部分には厚紙の台紙を設けるのみとし、必要な時にA5リフィルを台紙において使う運用とした。A5リフィル数枚は、前述した増設ポケットに忍ばせておく。
以上がノートカバー『システミック』をベースとした自作ノートの全容である。ルーズリングも導入することで2つの思索用ノートを1つにまとめ、さらに立ち書き用メモの機能も併せつつ、多ポケット構造も実現できた。
厚さは17mm程度。A5サイズであるので、機能に対してかなりコンパクトであると思う。大きさが気になることは少なくともない。
ちなみに『システミック』で特に重宝するのが表紙ポケット。ちょっとしたメモなどは、ノートをカバンに入れたままスッと表紙ポケットに挟み込み、帰宅してからゆっくり整理することができる。
Evernoteとの連携についても、簡単であるが紹介したい。もっとも結論から言えば、Evernoteとの連携がこれまでに説明したハードウェア構成(というか自作ノート本体)に影響を与えることはなかった。とはいえ「Evernoteとの連携に問題を生じることが無いか」はノート作りでも考慮したところだし、あと次の記事みたいな、Evernote活用術的な話もちょっと触れたくなったので、この機会に悪ノリを続ける。
前述の通り私はすべての情報をEvernoteを起点に整理している。まずはノートの階層構造(フォルダ構造)を紹介しよう。なおサブフォルダもあるけどそれらは省略。カッコ内はそのカテゴリに含まれるノートの総数。
- 00:INBOX(12)
- 10_管理用(17)
- 20_活動計画(67)
- 21_ライフログ(706)
- 29_その他アクティビティ(130)
- 30_家族(99)
- 40_情報のInput/Output(655)
- 41_ブログ(62)
- 50_自分プロジェクト(405)
- 60_知財(168)
- 61_語学(35)
- 90_WebClup(5744)
- 99_その他(10)
いくつか解説したい。
「10_管理用」は、フォルダ構成やタグ付けルールなど、Evernoteを含めた情報管理の仕組みを記述したもの。いざというときはここを見れば、どの種類の情報がどこにあるのかがわかる。
20番台はライフログで、後述の日記とか、あと「29_その他アクティビティ」に単発プロジェクト(Arduino工作とか)や料理レシピなんかを入れている。料理レシピのEvernote管理はスーパーでの買い物時に便利。
40番台には読書メモとか、講演メモとか、思いついたネタとか色々。
60番台は仕事に関係するものとして「60_知財」と「61_語学」がある。実際の業務に関する情報は当然プライベートでは持てないが、仕事を補強するためのプライベートでの活動をここで管理するイメージだ。弁理士会の研修メモとか、アイディアとか。
中国語文法書のカスタマイズ版もここに入れていて、出張前に1時間かけて読み返すことでそれなりに勉強最盛期の記憶が蘇ったりする(しゃべれるようになるとは言ってない)。
「90_WebClip」がノート数は大きいが、ここは分けても意味がないので1つのノートにブチこんで、タグで管理するようにしている。
なお「Evernoteを起点に整理」という表現をしたが、PCのフォルダ構成もこれと同じものにして、大きいデータはPCフォルダにのみ入れている。例えば講演会に行ったら、メモはEvernoteに入れるが、資料のスキャンはPCにのみ保存する、といった形だ。Evernoteには、外出先ですぐ見返すもの、検索のインデックスとして必要なものを最低限入れておけばよい。
タグについては列挙することを避けるが、基本的には「後で見返すテーマ」をタグとして設定している。Evernoteの情報はあくまで引き出すためにあるのであって、整理のための整理はすべきではない。Evernoteは検索性能に優れるのが特徴であるが、検索では切り取れないテーマをタグにしている。
例えばネットを見ていて読みたい本や映画が見つかったら、「medialist」のタグをつけてクリップする。これらは3カ月おきに取捨選択して「読みたい本リスト」にまとめ、「checked」タグを追加する。
その後さらに「読みたい本リスト」に未読本を追加するにあたっては、「medialist -checked」の式で検索すれば、まだリストに入れていない読みたい本だけを洗い出せる。
他には例えば料理レシピで、「肉」「魚」の食材タグとか、季節のタグとかつけたいけど、こちらはまだ未設計。
以上のような考え方で、100~200ほどのタグを設定している。
本題に触れるのが遅くなった。肝心の自作ノートとの関係はどうなっているのか。「1ヶ月おきにスキャンして、しかるべきタグをつけ、Evernoteに入れている」というのがその答えである。
アッハイ。
一言で済んじゃいました。もったいぶってすみません。
しかしルーズリング×ルーズリーフの構成にしたことで、この効率が劇的に上がったことは特筆したい。綴じノートに比べればそりゃそうなんだけど、スキャンが本当にラクなのだ。
私も学生時代から社会人の一定時期まではルーズリーフを活用していた。しかしあるとき「デジタルなメモに比べての紙のノートの利点は、方向性があること。綴じられたノートで時系列に書いていくのがオトナ」とかノート観をこじらせたのが回り道の始まりだった。
紙ノートをスキャンすることの目的は検索可能化にあるわけだけど、特に効くのが日記である。最後に、日記の運用について紹介したい。
私は3-5年程度の長期計画と、年初に立てる年間計画を持っている。いずれもビジョンというか、大きな方針を決めて維持するのが目的で、1年以内に達成したい大きなゴールと、それから「今年は仕事の優先度を上げよう」とか、「今年は家族に変化があるのでそのフォローに重点を置こう」とか、イシュー毎の優先順位を付けている。
そして3ヶ月おきに、次の3か月で行うべき具体的ToDoに落とし込む。これを「季旬計画」と呼んでいる。
進捗率ははっきり言って悪い。。60%にも届かない。大学であれば留年である。しかし留年もできずに世の中はどんどん先に進んでしまうというのが、社会の恐ろしいところでもある。
いちおう計画書はEvernoteに入れて、毎週月曜に見返して、週毎のToDoにも落としてはいるんだけどね。
とはいえ計画があるおかげで、少なくとも進むべき方向や、いま「やらないこと」はこれで間違ってないと安心できるんだけど、計画と同じくらい重視しているのが反省である。これを日記をベースに行っている。参考にしたのは岡田斗司夫の「スマートノート」だ。
「スマートノート」はノートの機能を左右に分けることが特徴で、私も基本的にはこの構成で使っている。ちょうど1週間で見開き2ページ。
- 右頁:5行日記をつけて行動採点をする
- 左頁:白紙にして、何でもいいから「おもしろいこと」を書いていく
右頁には、その日にあったことや感じたことを5つ書き、5段階で点数をつけて客観視する。こうした事実や感性を列挙したうえで、左頁の白紙に無理やり「おもしろいこと」をひねり出すことで、発想力が鍛えられるという理屈だ(「おもしろいこと」が左頁なのは右脳に訴えるため)。
なお岡田斗司夫氏はスキャンダルがあったが、人を憎んで仕事を憎まず、スマートノートの仕組み自体は評価できるものなので、ありがたく使わせてもらっている。
1日おきに出来事・感じたことを整理して書き出し、それを1週間で見直すと、「今週はこんなにたくさんのことがあったんだ」と、成果を可視化することができる。
その中でも印象的な出来事は抜き出して3ヶ月ごとにリストアップし、年末の反省会(次の年間計画策定の前段階に行う)で俯瞰すると、1年の厚みを実感できる。
これがかなり気持ちよくて、大切な友人・家族との思い出も蘇るし、いまの自分が1年前に比べて別人になれたことを、ハッキリと感じ取れるのだ。進捗率60%以下であっても。
年間計画・季旬計画、そして週毎のToDo管理の話を最初にしたが、しかし日記はその進捗を管理するためにはつけていない。1日おきに出来事を見直し、それを積み上げて成果を可視化すること。これは次の1日、次の1年をがんばるための原動力になる。そのためにつけている。計画は方向性を決めるに過ぎず、計画を進めるのは毎日の積み上げしかないのである。
なおスマートノートの左頁は正直白紙に苦しむことが多いのだけど、これを何とか埋めようと面白いことを考える、その時間は重視すべきと考えている。Minecraftで作りたいものとか、将来建てたい隠し部屋のある家とか、Civilizationの対人戦略とか、そういうことが多いかな。
日々の立ち止まりと、明日へのひらめき。これらは紙のノートに、実在のペンで描かれるものでなくてはならない。そのための自作ノートである。私の自作ノートとEvernoteとの連携は、こうして完結しているわけである。
*
以上、ノート作りについて長々語らせていただいた。Evernoteとか日記とか、ソフト部分の話も多めになってしまった。各種計画と日記は数年続けている取り組みであるし、ノートもまず運用が固まったところなので、この機会に記事として形に残せたのは個人的によかった。ブログのテーマとホントに何も関係なかったけど。
ということで次回からはまた未来について考えたい。
ノート作りは誰かの参考になればこれ幸い。