未来のビジョン・コンセプトまとめ・第3回(2017/1-3)

いなたくんへ

未来のビジョンやコンセプトに関して、2017年1月~3月の間で見かけた気になるトピックをまとめてみた。今回で3回目。
今回は、先端テクノロジーが実現した社会の姿を議論したものや、時系列で表したもの、あるいは宇宙に関する予想やデザインがおもしろかった。それぞれ簡単にご紹介。

テクノロジー関連のニュースもまとめているのでこちらから。


1.未来の診察室「Forward」

次の記事は、サンフランシスコの中心部にオフィスを構える未来的診療室「Forward」を取り上げたもの。洗練されたクリーンな診療室の姿は未来のビジョンと言えるだろう。

YouTube Preview Image
 

動画では次のような機能が紹介されていた。

  • タブレット端末による無人受付
  • 受付時に指をバイタルスキャンして身体状態を確認
  • 赤外線を使った非接触型静脈可視化装置などの先端器具
  • 検尿カップはトイレ内で回収
  • 情報の個人への可視化

インタビューで創業者は、無人化、サービスの集約化、アクセシビリティといった理念を謳っている。単に診療室に留まらず、家庭での遠隔医療・個人医療の在り方にも近いと思う。

ただし、こうした進んだ「診療室」の課題はむしろ診療室側にはなく、診療を受ける側のITリテラシーによりそうだ。ITスキル的に多様な患者がいる中で、無人化された環境がどこまで対応できるだろうか。フールプルーフなシステム設計が重要になりそう。

あと気になったのは、検尿カップをトイレ内で回収する点。「カップ持ち歩くの嫌だよね」という課題意識はそうなんだけど、そこは便器でセンシングして欲しかった。ちなみにTOTOは12年前に発売。


2.まとめサイト「自動運転の論点」

自動運転車が普及して社会はどう変わるのか。例えばトロッコ問題や、社会インフラの新しい姿など、論点は尽きない。このブログでも、これまでいくつかのビジョンを紹介してきた。

『自動運転の論点』はズバリ、自動運転にまつわる論点を一堂に会したサイトである。人文科学、社会科学、自然科学、デザインなどに分類し、各業界の有識者が未来のビジョンを語っている。

一例を挙げると、自動運転車が実現した場合の事故対応について「新制度設計と立法」のタイトルでTMI総合法律事務所がコラムを連載している。大手事務所の専門家が自動運転のレベルに分けて現行制度と、さらには将来あり得る制度に基づき議論していて、興味深い。

道路の在り方とか、ゲームAIの専門家の意見とか、あるいは高齢化対策とか日本の戦略とか、各記事のタイトルを見るだけでもワクワクする。時間をとって一読したい。


3.2038年までの成長産業市場予想

こちらはハイテク部品供給会社による未来予測を取り上げたもので、2038年まで6項目が挙げられている。

項目は次の通りだ。

  • 2022:ロボット薬剤師の実現
  • 2023:3Dプリンタ製作自動車の登場
  • 2024:人体埋め込み型携帯電話でサイボーグが誕生
  • 2026:AR授業があらゆる教育現場で普及
  • 2034:ホログラム投影型のアシスタント用アバターの登場
  • 2038:完全自動運転車による運転手不要の時代の到来

ハイテク部品を扱っていて各業界の現在を知るからか、わりと堅実な予測の印象。例えば2022年の薬剤調合用ロボットや、2023年の3Dプリンタ製作自動車などは、すでに存在するプロトタイプも紹介されている。ARの教育への普及に10年と言うのも、まあそんなところなのかな。


各項目についてインフォグラフィックでの紹介を謳っている
(画像:ビジネス+IT

「人体埋め込み型携帯電話の登場」が2024年という予想はちょっと疑問。確かに埋め込み型のデバイスは種々検討されているけど、私は医療など一部用途に留まると予想。なぜなら、スマートシャツなど、埋め込むよりも簡便な方法が代替案として提案されはじめているからだ。


4.ロボット革命が起こるまでの、6つのステップ

こちらは元JAXAで宇宙ロボットの研究開発に従事された方の予想。ロボットの社会への浸透を段階的に予想している。

曰く、ソーシャルロボット、及びパソット(パーソナル・ロボットの略か)は、次のような段階を踏み普及する。

  • 1.店舗や職場、家庭など、工場外でのロボット(ソシアルロボット)の普及
  • 2.一般大衆向けの、桁違いに安価で個人用のロボット(パソット)の出現
  • 3.当初単能専門ロボットだったパソットの高機能化・複数作業化
  • 4.パソットの数が人口を上回り、少子化に悩む先進国は労働力として依存
  • 5.教育、経営、芸術など、知的で創造的な分野でもパソットが活躍し、インフラ化
  • 6.何でもこなす汎用的パソットの出現(2040年代)

わりと王道な流れでサプライズは感じないが、こうして時間軸で示すことは議論のたたき台として有用だろう。
予測で描かれる2040年のさらに先には、世界中のロボットが組合を作ってゼネストする未来もなんかも述べられていて、このあたりは手塚治虫のマンガ感もある。筆者がご高齢のためか。

気になったのは第2段階の「桁違いに安価で個人用のロボットの出現」だ。単機能ロボット(パソットは第3段階で高機能化・複数作業化するので、第2段階ではまだ低機能・単作業のはず)がいかなるアプリケーションをもって社会に進出するのか。
いまは想像できないけどコロンブスのタマゴ的なキラーアプリが現れるのかな。あるいは段階によっては、ロボットとは機械の身体を持たないソフトウェアロボット、つまりAIの形をとる可能性もある。


5.冨野由悠季×山崎直子の宇宙エレベーター議論と「認知革命」

宇宙エレベーター協会、という興味深い組織の存在を知らずにいたのだけど、協会の今後の活動発表を兼ねた「GSPECキックオフミーティングイベント」が3月に開催された。興味深いのは、『機動戦士ガンダム』シリーズの監督として知られる冨野由悠季御大や、宇宙飛行士の山崎直子氏が登壇したパネルディスカッションだ。宇宙エレベーターがもたらす未来について、いくつかの視点が語られている。

まず宇宙エレベーターの実現で得られる効果として、地球から宇宙、あるいは天体間の輸送コストの節約や、送発電が挙げらていた。宇宙エレベーターというと地球の衛星軌道に設置されるものを想像するが、あらゆる天体に活用可能という指摘も重要だ。


『∀ガンダム』では衛星軌道上を高速回転するロトベーター方式の宇宙エレベーター「ザックトレーガー」が遺跡として登場。一度文明を失った地上の人々からは彼らの神話にちなんで「アデスの枝」と呼ばれていた。
地上のマスドライバーを機能回復して大気圏を離脱しザックトレーガーに至る第34話「飛べ!成層圏」は最高に好きな話の1つなので、ディアナ様を一瞬たりとも痛め、泣かせるような事があったら、魂魄百万回生まれ変わっても恨み晴らす
(画像:Skyhooks and Space Elevatorsより)

御大をはじめとする登壇者は、宇宙エレベーターが現時点ではまだ夢物語的段階にあることを踏まえつつ、人類の宇宙への進出が「認知革命」をもたらすと指摘している。具体的に起こると予想される変化は次のようなものだ。

  • 宇宙でなければできないことや、逆に地球でなければできないことが生まれ、音楽・絵画などの芸術においても、新しい文化が育まれていく
  • 宇宙では全世界の人々が瞬時にコミュニケーションを取ることが難しくなり、対話が成立しなくなるところ、地球レベルの文化の限界が起こる
  • 『宇宙船地球号』を実感し、政治や経済などの社会を徹底的に見直す機運が生まれる
  • 宇宙に人が行くことによって、いまはバラバラに見えている経済や政治や文化が、我々が生きる領域の根源に関わるような『理性的な欲求』になってくる

富野御大は、宇宙エレベーターが物語の重要要素となっている『ガンダムGのレコンギスタ』について、「Gレコで宇宙エレベーターにかかわる課題は絵として示せた」と述べている。
宇宙エレベータ―のような輸送革命が起きたとき、それも地球から宇宙へ、あるいは天体間の移動にブレイクスルーが起きたおきたとき、世界はどう変わるのか。SF作品や、ここでされた議論は未来を予想するヒントになりそうだ。


『ガンダムGのレコンギスタ』に登場する宇宙エレベーター「キャピタル・タワー」は、宇宙に伸びるケーブルを巨大カーゴが伝う方式。物語では資源分配をめぐる政治的闘争や、時代経過とともに形骸化された社会システム、この時代における宇宙観が示されていた
(画像:『ガンダムGのレコンギスタ』HPより)


6.いよいよ秒読みの宇宙旅行とデザイン

宇宙といえば様々なデザインが公開されていて興味深い。ちょっと近い未来の話になるけどご紹介。

宇宙旅行用女性服

前述の山崎直子飛行士の協力のもと、女子美術大学と電気通信大学が宇宙旅行用女性服のデザインを提案。無重力でも動きやすいゆったりとしたパンツ型。特徴はバイタルセンサーが設けられていることで、宇宙酔いなどの体調変化を光で伝えてくれる。

デザインの表現型は別として、体調を明示する機能の需要を宇宙飛行士が示したというのは興味深い。センサ内臓型のシャツはすでに登場しているが、宇宙空間のようなシビアな環境で真価を発揮していくのかも。

ボーイングの青い宇宙服

ISSへの宇宙飛行士輸送のためのカプセル型宇宙船「スターライナー」を開発するボーイングは、新しい宇宙服「Boeing Bllue」を発表。従来の13.6kgに対して9kgと40%軽量化されていて、見た目もスリムでカッコいい。機能性も向上しているそうで、内部の空調や、ファスナー開閉型のヘルメット、タッチスクリーン対応グローブなどを採用。


画像:Boeing HPより

この調子で軽量化されると、いずれノーマルスーツが実現しそう。ファスナー式のヘルメットなんかもかなり近いし。
スターライナーの有人飛行は2018年を予定。

ブルー・オリジンの宇宙旅行用カプセルの内装公開

宇宙旅行では、再利用型ロケット「ニュー・シェパード」での宇宙旅行を計画するBlue Origin社がカプセルの内部デザインを公開。こちらも2018年の旅行用打上げを予定。特徴はメカニックを感じさせず、かつ史上最大級とされる窓である。

いよいよ宇宙旅行も秒読みに入った感じ。デザインが出てくるとワクワクするね。お値段はやく下がらないかなー。

 

以上、未来のビジョンやコンセプトに関して気になったトピックをいくつか挙げてみた。
未来予測に関する資料やリンクはこちらのページでまとめており、これまでに見かけた未来のビジョンも蓄積している。

テクノロジー関連ニュースのまとめはこちらから。

ビジョン・コンセプトの前回まとめはこちらから。
1.BMD・トヨタ・イーロン・マスクが描く「移動」の未来/2.モビリティ技術は「生活」も変える/3.2030年に生まれる6つの職業/4.ヒトとヒューマノイドが共存する未来

 

 

Pocket