未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュースまとめ・第11回(2017/1-3)

いなたくんへ

米国の電気自動車メーカー、テスラ・モーターズの時価総額が510億ドル(約5兆7千億)となり、フォード、GMを抜いて、米国自動車メーカーでは1位となった。これは単に「テスラ、パネェ」「電気自動車キタコレ」という話に留まらず、テスラ創業者イーロン・マスクが、20世紀の自動車王ヘンリー・フォードと発明王トーマス・エジソンとを抜き去ったものと受け止められている。

この3ヶ月はイーロン・マスク無双というか、彼の名前を見かける機会が多かった。マスクはSpaceXでロケットの再利用を成功させるとともに、ハイパーループ・ポッド・コンペティションを開催して構想実現に一歩前進、さらには脳とAIの融合を目指す新会社Neuralinkを立ち上げた。21世紀のフロンティアをひた走っててものすごい。

ということで今回も、2017年1月から3月の3ヶ月で見かけたテクノロジー系ニュースのうち、未来を考える上で気になるものを紹介したい。

 


1.火星テラフォーミングとリサイクルロケットの打上げ成功

宇宙関連ではNASAが重大発表と銘打ち、地球サイズの系外惑星7つの発見を発表。これらは地球から39光年の赤色矮星「TRAPPIST-1」を周回していて、うち3つは表面に水が存在しうる「ハビタブル惑星」とされる。

ハビタブル惑星の発見は近年相次いでおり、いずれ地球外生命の発見も実現しそう。
地球外生命と言えば、ISS船外に1年以上さらされた藻類が地球帰還後に再生。我々地球上の生命も宇宙から飛来してきた説の裏付けになるかも、とされている。ハビタブル惑星の発見は、もしかしたら我々のルーツの発見に繋がるかもしれない。

火星磁気シールド構想

宇宙から来たかもな我々だけど、地球から次の星へ移る準備も進んでいる。NASAは火星のテラフォーミングにあたり「磁気シールド構想」を発表。これは火星のラグランジュ点に数テスラ程度の磁気シールドを置くことで北極点付近のドライアイス層を蒸発させ、温室効果をもたらし、氷を溶かして海を再生するというもの。必要期間は数十年とされる。

比較的手軽そうだし、すぐ始めれば生きてるうちに火星の海が見られるかもで、ぜひ実現してほしい!


画像:“A FUTURE MARS ENVIRONMENT FOR SCIENCE AND EXPLORATION”(2017)より

イーロン・マスクのロケット再利用

火星のテラフォーミング、いつやるの?今でしょ!と言いたいけど問題なのは誰がやるのか。そこで注目なのがイーロン・マスクだ。SpaceXの火星探査計画は2020年へと延期が発表されたが、依然として近い未来と言える。
ちなみにSpaceXは2019年に月周回旅行を行うとし、NASAはその支援を発表した。同2019年にISSに初の商用エアロックが設置されるなど、宇宙旅行がアツい。

そんなイーロン・マスクの歴史的偉業が、再回収ロケットの再打ち上げだ。2016年4月8日に打ち上げられたファルコン9の第1段は打ち上げ後の着陸に成功したが、今回リサイクルして再打ち上げし、さらにもう一度の地球への着陸に成功。ロケットの再打ち上げは史上初であるとともに、コスト削減が期待される。

ちなみにロケット再利用のアイディアはNASDAも構想してたみたい。でも実際に実現できたのはスゴイ。

なお打上げ済ロケットの回収はブルー・オリジン社も成功している。こちらはAmazon創業者ジェフ・ベゾスの会社だけあり、月への宅配事業をまじめに検討していてブレない印象。


2.脳と機械の融合は2029年に実現

「Frontier」は「未開拓分野」とか「最先端」とか訳される。フロンティアは宇宙に限らず、我々の精神や脳も未踏の領域だ。そんな脳について「脳とコンピュータの間にある溝を埋めるインターフェイス」に言及していたイーロン・マスクが、新会社Neuralinkを設立した。まだ謎に包まれているが、侵襲型と思われる脳マシン・インターフェイス「ニューラル・レース」を用いるとされる。マスクはこうしたインターフェイスはあと4~5年で実用化可能と述べている。

脳は、Brain Initiative(米国)やHuman Brain Project(欧州)で大規模な予算投下がなされているほか、日本の総務省も人工知能の活用空間として大々的に後押しするなど、熱い視線の注がれる領域。企業ではFacebookも「DARPA並みの」大規模プロジェクトを開始している。

現状では埋め込み型脳マシン・インターフェイスは医療用途に限られるが、文字入力や物体操作の精度は順調に向上している。2045年問題で有名なレイ・カーツワイルは脳と機械の融合を2029年と読んでいるけど、どうなるか。


3.進む「弱いAI」の社会進出、アシスタントAIは決勝戦か

さて、我々の融合相手となる人工知能はどうなっているのか。
ゲームでは囲碁で人類を下したのに続いて、限定的な条件下ではあるがポーカーでも人間に勝利した。将棋の電王戦は今回の第6回をもって終了予定となっている。

まだ「弱いAI」に留まり、言ってしまえば単なる認識器のレベルだけれど、それでもその能力は十分に脅威的だ。

リアルタイムGoogle翻訳がすごい

GoogleがリリースしたリアルタイムのGoogle翻訳がすごい。スマフォ写真を自動で翻訳してくれて、まるでドラえもんの秘密道具だ。精度はまだ十分とは言えないようだが、そこは時間の問題だろう。ARや音声翻訳と組み合わせると、もう海外旅行で困ることも無くなりそう。

アシスタントAIではAmazon Alexaが覇権を握るか

音声サービスと言えば、世界最大の家電見本市CES2017で注目を集めたのがAmazonのアシスタントサービス「Alexa」だ。Motorolaが対応スマフォを投入するほか、自動車、冷蔵庫、掃除機テレビに搭載され、さらにはフォードも自動車への採用を計画するなど、社会実装が急激に進んでいる。

アシスタントAIの「場」として有力とされる家庭だったが、試合はいつの間にか決勝戦になっていた。AlexaとGoogle Homeの双璧に対して新たなゲームチェンジャーは現れるだろうか。両者の出口が「購買」と「検索」とで微妙に違うのがおもしろい。

次の動画はAlexaのフォードへの実装例。イメージが沸くかも。

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なお、人工知能の社会実装例は前回ひとまとめしたのでこちらをご参照。浸透が早い。

AI開発の倫理規定の公表

人工知能の社会進出がすすむなか、認識器に過ぎないとはいえ、新しいものに対する世間の懸念も根強くて、内閣府は倫理面の検討の必要性を訴えている。実際に開発者向けのガイドラインとしていくつかの倫理規定が提示された。

「人類への貢献」のような大上段の規定から、「透明性」「法令順守」「プライバシーへの尊重」「安全性」「人間の自由を犯さない」「目標設定は人間が判断」といった各論が並ぶ。
いずれも当たり前に聞こえる内容だけど、例えば「透明性」や「プライバシー」は人工知能が構造的に侵害しうる部分であり、技術的な課題も孕みそうだ。

ちょっと気になったのは、AI開発23原則の第10条で「自動的なAIシステムは、目標と行動が倫理的に人間の価値観と一致するようデザインする。」と価値基準を明言した点。将来的に人工知能の感情(=価値判断機能)が実現可能になったとき、この規定は指針にもなるし、束縛にもなりそうだ。


4.汎用量子コンピュータの普及の兆しと、さらにその先

ディープラーニングに代表されるいわゆる第3次人工知能ブームは、しかし盛り上がりとしてはひと段落した感がある。次にアツいのが何かと言えば量子コンピュータかもしれない。

世界初の実用量子コンピュータを発売したD-Wave社は、量子ビット数を倍増した新モデルを発表。2000量子ビットなので、2の2000乗の状態を同時に計算できることになる。
一方、英サセックス大の国際チームは、D-Wave社の量子アニーリングとは別方式となるイオントラップ型の量子コンピュータを設計した。量子アニーリング方式が組み合わせ最適化問題を解くための専用装置とみなされるのに対して、イオントラップ型は量子ゲート方式と呼ばれる、より汎用的な量子コンピュータを実現できる。
量子ゲート方式ではIBMが進んでおり、現在5量子ビットのマシンを実現。今後数年で50量子ビットを目指すとしている。

あのノイマン型のように?……スパコンのことかーーっ!!!!

量子コンピュータの用途としては、従来スーパーコンピュータが担ってきた大規模計算や、ビッグデータを処理する人工知能が考えられる。
すでに一部の認識力では人間を超えた人工知能だれど、ドラゴンボールで喩えるならまだピッコロレベル。量子コンピュータは人工知能をサイヤ人のレベルに高め、そして際限なき戦闘力インフレに突入していくのだろう。ちなみにスパコンの戦闘りょ…計算能力は49量子ビット相当。

ということでフリーザ様の話をすると、英マンチェスター大がDNAの複製メカニズムを利用した並列処理コンピュータの実現可能性を発表。これは「非決定性万能チューリングマシン」と呼ばれ、量子コンピュータをも遥かに上回る性能のマシンが実現するという。量子ビット換算でどのくらいかはわからないけど、53万とかいくのかな(適当)。

テクノロジーの発展の速さには目がくらむばかり

ちょうどこの「テクノロジー系ニュースのまとめ」を始めたころ、Googleの量子プロセッサの研究プロジェクト立ち上げに触れたことがある。んだけど、量子コンピュータと言ってもその時は遠い未来の話というか、正直なところ半笑いで書いてたところはあったんだよね。さすがGoogleは気の長い投資をするなあ、みたいな。それがいつの間にかこんなにスケールして、手の届く話になってしまった。世の中のスピードは速いな。


5.監視社会化は順調に進捗、SNSとGPSへ政府が介入

量子コンピュータの用途で忘れてはいけないのが暗号解読。1000量子ビットクラスの実用化に伴い、公開鍵暗号は見直しが必要になるとされる。未来のセキュリティはどうなるだろう。
ただし仮に暗号化が十分にできたとしても、少なくとも個人情報に関して言えば、それが完全に守られることはなさそうだ。政府による介入である。

各国で進む監視社会化はこれまでも触れてきたけど、この3ヶ月でも順調に進捗。
米政府はインターネットの個人情報を保護するプロバイダー規制の撤廃を検討、下院を通過しトランプ大統領も署名した
また米政府は日本人旅行者に対して、FacebookやTwitterといったSNSの報告要求を開始、ESTAでの登録が必要になる。捨て垢増えそう。
米政府がGoogleに要求するデータも年々増えているようだ

こうした米国の状況に対して、日本はまだ冷静な印象。最高裁判所は、捜査令状なく捜査対象者の車にGPSを取り付ける行為が違法であると示した。個人の行動のこのような継続的・網羅的把握はプライバシーの侵害にあたるという判断だ。日本はこのようにプライバシー保護には慎重な様子。次のリンクは関連記事。

(お詫び)
関連記事として日本の最高裁判決の解説を載せたつもりが、別の国の記事を載せてしまっていたようです。訂正はしません。

ビッグデータに基づく予測やプロファイリング

監視社会化とは少し文脈が変わるけど、ビッグデータを使った予測やユーザ・プロファイリングも進んでいる。
ドコモのAIタクシーは運転手に対して、ドコモ契約者のデータを解析することにより、30分後の未来に乗客が多そうな場所を示すという。ビッグデータに基づく未来予測と言えば犯罪予測があるけど、こういう実用サービスも進んでるのね。すごい。

また、FacebokやTwitterの情報からユーザをプロファイリングしてくれるサービスも。ネット上の振る舞いから人物像が見えるようになっていて、おもしろい。


Microsoft「Hololens」は空間UIのデファクトを握るか

ネットと現実の世界が日々混じり合うなか、ついにMicrosoftのHololensが市場に出て話題だ。Hololensはアイウェア型デバイスで、33万3,800円と開発者向けのお値段ながら、現実への高精度なAR重畳(Microsoftは「Mixed Reality」と呼称)がウリである。

私はARのキラーアプリケーションはまだ出ていないと考えているが(「ポケモンGO」はAR機能こそ付いていたものの本質は位置ゲーとの理解)、Hololensの登場で変わるだろうか。
例えば、原子同士を組み合わせたりインタラクティブに周期表で遊べる化学教育ツールアプリ「MyLab」とかおもしろそう。

あとこれはHololensではないけど教育用で、地球儀上にAR重畳して地理を学べる「Orboot」もおもしろい。歴史コンテンツで勢力図の栄枯盛衰なんかも再現してくれたら楽しい。


画像:“Orboot | The Smart AR Globe”より

Hololensのインパクトとして、空間UIの覇権をMicrosoftが握るという予想がある。二次元画面上のUIはiPhoneのタッチパネル登場が大きな変化ではあったが、以来大きな変革はない。一方で三次元空間のUIはまだ未開拓の分野であるところ、MicrosoftがHololensによりこのデファクトを押さえる可能性がある。どうなるか今後に期待だ。

あとARでは、視る側ではなく現実世界側に直接重畳するダイナミック・プロジェクションマッピングのアプローチにも期待したい。

VRも順調に普及

ARの話ばかりしたけれど、VRも少しずつだが触れられる場が増えている。藤子・F・不二雄ファンの私としてはこちらの記事を紹介しないわけにはいかないだろう。やりたい。


7.「やわらかロボット」プロジェクトが始動、生物に近づいていく

ドラえもんと言えば、何でもつかめるドラえもん風ロボットハンドを開発していたEmpire Roboticsが事業継続を断念。96年ほど早すぎたのか‥。
ただし、ドイツ企業がタコの触手風マニュピレータ(その名も「オクトパス・グリッパー」)を開発するなど、非人間型の汎用的な「手」の開発は進んでいる。

この3ヶ月では「やわらかい」ロボットが目立った。
山形大学は家庭内で安全に利用できるロボットを目指す「ソフトマターロボティクス」プロジェクトをスタート、秋には第1号の試作ロボットが公開される予定だ。電子回路や駆動装置などのデバイスにやわらかい材料を利用するとのことで、前述した22世紀のお世話ロボットも明らかにこの系譜ですね。

また、ロボット技術の重要な用途には義肢などの人間の補助もあるところ、ソフトロボット技術を活かした人工心臓や、繊維素材・柔らか素材のアシストスーツが発表されている。ロボット技術と柔軟素材の組み合わせは、人間と機械との融合をさらに加速することになりそうだ。

ちなみにアシストスーツは米軍がガッツリ開発していて、実戦投入もされている。と聞くと歩兵の白兵戦闘用かと思っちゃうけど、砲弾運びに使われている様子。砲弾重そうだもんね。

機械と生物との対比でみると、激しく動けるケンタウロス風新型ロボット「Handle」を発表したBoston Dynamicsは、3Dプリントによる人骨を模倣した構造を採用することで、燃料配線の簡素化に成功しているようだ。


画像:“What Boston Dynamics Is Working on Next(IEEE spectrum”より

ロボットの外観・構造はこれから生物に近づいていき、「硬くて無機質」というイメージは数年で変わるのかもしれない。


8.ドローンの生体模倣と生体改造

生体模倣はドローン開発にも活かされている。英ブリストル大学のチームは、特殊形状の可変主翼と機械学習を用いることで、着陸寸前に角度を起こす、地上滑走なく鳥が止まるような着陸を目指している。まだ鳥レベルは実現していないようだけど、着陸の安全性を高める点で注目されている。


画像:Learning to perch a UAV on the ground using deep reinforcement learningより

人間は空を飛ぼうとして鳥を模倣し、揚力を持つ固定翼のアイディアに辿り着いた。技術の進歩は、いよいよ本当に鳥の模倣を実現するかもしれない。

鳥と言えば群体ドローンの開発も進んでおり、米軍は103機での協調編隊飛行に成功した。ただしドローンの群体制御は軍事用よりも、イベントの方がなじみ深いものになりそう。中国・広州ではこの春節にドローン1000機によるショーが行われたようだ。Youtube動画が幻想的。一度生で見てみたいな。

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なおドローンでは、生体を模倣するのではなく、生体側を作り変えちゃえ!なアプローチも進んでいる。昆虫や小動物のサイボーグ化は以前まとめて紹介したけど、今度はトンボの改造がニュースになった。基盤を胴体に取り付け、光遺伝学の応用で刺激を与えて制御するそうで、「小型で軽量、さらにステルス性に優れた空中飛行体」になるとのこと。

車両との連携とか、ドローンと対ドローン銃との戦いとか

ドローンの周辺においては、新しいアイディアではないもののフォードも車両と組み合わせてのドローン配送を発表。あとはドローンの空中回収機構がかっこよかった。DARPAの運用とのことで、将来的には飛行空母みたいのが出てくるのかな。

軍用ドローン開発は中国も進んでおり、新型機「翼竜2」が海外から大規模受注とのこと。米無人機リーパーの3,000万ドルに対して翼竜2は100万ドルとお安いようで、大量受注も納得だけど、紛争の拡大は心配。
イスラム国では市販ドローンを爆弾投下などで活用していて、さらに治安部隊は対ドローン電波銃で応戦しているとのことで、もう未来の戦場感ハンパない。

対ドローン銃と言えば、武漢警察の一品もなかなかどうして21世紀を実感できる。


9.ゲノム編集技術のヒト受精卵への応用の限定解禁

生体模倣の話が続いたのでバイオ技術について。
米科学アカデミーが、第3世代ゲノム編集技術CRISPR-Cas9での生殖細胞の遺伝子編集の限定解禁を勧告した。すでに中国などではヒトの胚のゲノム編集がされ批判を受けていたが、米国でも、限定的な条件下での編集を容認する流れだ。

限定的な解禁なのでデザイナー・ベイビーに結び付くとは思えないが、漸進的に基準が変わり、人々の意識も変われば、将来のどこかの時点では、ヒトへの応用も起こるかもしれない。

ちなみにCRISPR-Cas9の応用では、移植用として、ヒトの臓器を持つブタの作成が試みられている。実現には困難が大きいようだが、研究を進めるeジェネシス社が3800万ドルを調達するなど、市場の注目度は高い。


10.現実世界をハックする材料技術の脅威

さて、「未来に影響を与える」をテーマに色々紹介してきたけど、長期的に見て影響力が一番大きいのは何と言っても材料だろう。
例えばオランダと米国の大学が開発した「衝撃や振動が一方向にしか伝わらないメタマテリアル」。言わばダイオードの物理力版。あまりに基礎的機能すぎて私には応用例が想像つかないんだけど、ロボティクスをはじめとした様々な分野への活用が期待されている。

こうした新材料というのは、Minecraftで喩えるなら新たなブロックの解禁だ。例えばレッドストーンの導入は赤石工学と呼ばれる複雑な論理回路体系を生み出し、豊かな建築文化、いや工業文化を出現させた。
現実世界における材料技術は、現実(物理現象)そのものをハックし、新たなブロックを実装して世界をバージョンアップさせる行為に当たる。新たに発見された物理現象が未来の世界にもたらす影響は計り知れない。

ということで、最近人類に解禁された物理現象を他に2つ紹介。

超軽量・高強度の三次元グラフェン構造

MITの研究チームが、鋼鉄の5%の密度だが10倍強いグラフェン構造を開発した。本来2次元構造として知られるグラフェンを三次元構造化して実現。自動車や建材の用途に使いうるとしている。

空気よりも軽くかつ高強度であることから、記事では、他の材料での補強も組み合わせることにより、例えば風船のヘリウムガスを代替しても気圧で潰れたりしないことを示唆している。構造体がガスを代替ってすごい。

この材料でドローンを作れば滞空時間がものすごく伸びたり、他にも様々な応用例があり得そう。

人工光合成の効率がまた向上

人工光合成の材料は色々提案されているけど、また一つ新たな材料が出現。ナノグラフェンに希少金属のレニウムを結合させることで、これまで二酸化炭素の分解にあたり紫外線領域の一部波長しか利用できなかったものが、600nmまでの広範な波長を吸収できるようになったという。これにより分解効率が大きく上がる。

人工光合成に関してはこうしたブレイクスルーを時折り聞くが、やがて実用化が実現すれば、世界のエネルギー事情も大きく変わるかもしれない。


この3ヶ月で見かけたおもしろガジェットたち

最後に、この3ヶ月で見かけた素敵なガジェットやサービスたちをご紹介。

タッチ式短焦点プロジェクタ

諸事情あり紹介すべきか迷ったんだけど、タッチ可能な短焦点プロジェクタ「Xperia Touch」がユーザ視点でおもしろいので挙げてみた。既に発売済みの短焦点プロジェクタにタッチ機能を搭載したもの。100ルーメンという輝度には不安はあるものの、生活の未来感が一気に上がる。

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ポッキーでプログラミング

グリコがリリースしたプログラミングアプリ「GLICODE」がすごい。ポッキーやビスコを並べてプログラミングができるというもの。なに言ってんの?と思われた方は動画をどうぞ。

お菓子の種類がないとリッチなプログラムが組めないのがニクい。そしてちゃっかり総務省のお墨付き事業になってて、グリコ公式のトップ画面にも「先生の皆様へ」なるタブが出ていて、全国の小学校をグリコ色に染める気満々なビジネスモデルもすごい。担当者天才だろ‥。

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歩きスマホ用の歩道信号機

オランダの町ボーデグラヴェンで導入された、歩道埋め込み式の信号「+Ligntline」。歩きスマフォ対応の信号で、まずは学校近くの交差点に設置されたようだけど、この手があったか!感すごい。あとカッコいい。人の生活様式に合わせてカタチを変えるという点で、ユーザーインターフェイスはかく在るべきと思ってしまう。でも歩きスマフォは危ないね。

 

以上、2017年1~3月における、未来に影響のありそうなテクノロジー系ニュースをまとめてみた。ソースの大半はTogetterから選んでいるので、興味があればこちらから。

前回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.VR技術の応用可能性/2.ウェブ社会の恣意的メディア公正化/3.米大統領選とビッグデータ予測の限界/4.AmazonGo・透明ディスプレイ・植物工場/5.完全自動運転一歩後退なるもモビリティは進化/6.無人機・有人機が協調する新戦闘教義/7.日本でも商用宇宙旅行/8.発見相次ぐジュラ紀のニワトリの姿

次回3ヵ月のニュースのまとめはこちらから
1.思考の読み取りと脳・機械間融合がホントに実現しそう/2.エンケラドゥスの水素とエウロパの水/3.自動車・船・飛行機の電動化/4.空を飛ぶことのコストとハードルが著しく低下/5.ロボット警官と最新軍用ドローン/6.現実世界をハックする現代の魔法/7.光量子コンピュータと「時間結晶」/8.仮想空間の進歩、衰退、分断

 

  

 

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