未来きてます。
知らないうちにもうこんなことまで実現しているのか!と驚くばかり。この3ヶ月のテクノロジー系のニュースの中から、特におもしろそうなものをピックアップして紹介します。
ニュースの選別は私の独断と偏見で、特に未来予測の観点で重要になりそうなものを選んでいます。ソースは主にRSSとTwitterです。漏れはあるかもしれませんがご容赦を。
第1回の3ヶ月分はこちらから。
Summary Note
1.脳間インターネット接続と、人間脳マウス
2.人工知能の利用が順調に進捗、キーテクノロジーはクラウド
3.勃起可能な人工ペニスと、HIVウィルスの弱体化
4.羊のネットワーク化
(閑話休題)ネットの集合知の威力がすごい
5.頻発するドローンの異常接近と、法規制
6.新たな戦闘教義「群(Swarm)」の実現に向けた実験
7.宇宙に手と足を伸ばす中国・インド
8.宇宙ステーションでの3Dプリント出力が持つ意味
9.彼らこそが世界を変える、新たなマテリアルたち
今回も脳みその研究がおもしろかったので、脳みそから。
前回の他人の脳に直接メッセージを送る実験に引き続き、人間同士の脳を繋ぐ実験で成果が出ています。
脳インターフェイスを遠隔地にいる2人に繋ぎ、同時にゲームをさせたという実験。送信者にはシューティングゲームのディスプレイが、受信者にはタッチパッドが置かれ、送信者が「発射」を念じることで、受信者側がタッチパッドを操作するというものです。
依然として思考の伝達はできないものの、脳内の信号を他人の脳に伝えることはできるようになっています。
米ワシントン大学HPより
一方マウスについて、人間の脳細胞をマウスに移植し、マウスの能力を向上させることに成功。マウスの脳構造はあくまでマウスのままですが、人間の脳細胞の方が性能が良いため、マウスの脳の基本性能が上がり賢くなったという結果です。
脳の人工作成に関する研究は前回紹介しました。
脳細胞をリッチなものに置き換えることで能力向上が図れるならば、人間の脳細胞よりも高性能な細胞体を作ることで、人間の能力を上げることもできそうです。どうなるでしょうか。
人工知能の応用も進んでいるようで、様々なシーンでの利用が始まっています。
- 三井住友銀が顧客電話応対に人工知能=米IBM「ワトソン」導入(時事ドットコム,2014/11/5)
- みずほ銀行、コールセンターに人工知能を導入へ 問い合わせ時間が30分から8分に(THE HUFFINNGTON POST,2014/11/6)
- クエリーアイら、人工知能で1時間後のアプリストア市場を予測–70%の正答率を達成(CNET Japan,2014/12/8)
- Skype通話でリアルタイム通訳が可能に(動画あり)(WIRED jp,2014/12/17)
- 最先端の人工知能が、Skypeのリアルタイム機械通訳を可能にした(WIRED jp,2014/12/20)
三井住友銀行、みずほ銀行ともに、IBMの人工知能「ワトソン」の利用を始めました。ワトソンはクラウド側のリソースを活用した人工知能で、将来的には医療分野での活用も期待されています。『楽観主義者の未来予測』(2013)では、ラボ・オン・チップと呼ばれる簡易解析装置を使って個人で検査を行い、検査結果をワトソンに伝えることで、病院に行かなくても診断を受けられる未来が紹介されていました。
ワトソンはクラウド型サービス「Watson Analytics」として一般にも提供が開始されており、機械学習の進化と、用途の拡大が期待されます。
Skypeの同時通訳もクラウドでの機械学習をベースにしており、クラウドの利用が一気に人工知能開発を加速させていることがわかります。人工知能が全人類の能力を上回る「2045年問題」に向け一直線です。
学生のみなさん、大学にはロボットでも入れるようになりつつあります。ロボットに置き換えできない人になるようによくよく頭を使って大きな勉強をしてください。
<東ロボくん>私立大の8割でA判定 センター模試に挑戦 (毎日新聞) http://t.co/wYG0upWKAv
— ジェル光@3Dゲルプリンター研究員募集中 (@gelmitsu) 2014, 11月 4
頭脳のお話ばかりですが、肉体に関する研究も進んでいます。
病気で体の一部を失った人や、先天性の異常を持つ人を助けるための研究の1つだそう。こんな部分も人工培養できるのかと驚かされます。
バイオ関連としてこんな朗報も。HIVウィルスが感染を繰り返す中で弱体化しているそうです。ウィルスが複製を繰り返すと弱体化する、というのは知りませんでした。
来年2015年は未年なので、羊のニュースを紹介します。。
IoT(モノのインターネット)がバズワード化して久しいですが、応用例の1つとしておもしろそうです。単に羊の居場所がわかるだけでなく、体調管理ができたり、これまで知られていなかった性質も群としてのわかるかもしれません。また、より効率的なセンシングにはどのような技術がさらに必要になってくるのか、羊のネットワーク管理を通してフィードバックが得られるでしょう。
ともかくも羊かわいいです。
かわいい羊の話でこの項を終わらせたい気持ちが山々ですが、生き物繋がりということですみません併せてGブリも紹介です。※閲覧注意
生きたゴキブリのラジコン化は次の記事でも紹介しました。IoTとサイボーグ小動物の組み合わせがどんな未来を招くのか、非常に興味深いところです。
テクノロジーそのもののニュースではありませんが、この3ヶ月で起きた出来事として、ネットの集合知の威力を見せ付けられた2つの事件を紹介します。
- 「小学4年生」でないことを証明していくツイッターの集合知が凄い(さまざまなめりっと,2014/11/23)
- 【ネットのちから】亡くなった叔父さんの日記が暗号で書かれてて読めないけど誰か!?→解読完了!#叔父日記暗号(Togetterまとめ,2014/11)
1つめは2014年11月の衆議院選挙に先立ち、大学生が小学4年生になりすましたサイトを作成して問題提起したもの。問題のサイトは11/20夜に公開されましたが、偽物であると追及され、11/22には謝罪しています。
2つめは1990年代の叔父さんの日記が暗号でつづられていため、Twitterで解読を呼びかけたものです。11/19のつぶやきが11/23夜に話題になり、そのごわずか数時間で2種類の暗号が解読されました。解読に至るプロセスがとても面白く、上述のまとめはおススメです。
人工知能もすごいですが、人間の集合知もあなどれません。隠し事のできない時代になってきていることを実感する事件でした。
ドローンが注目を集めており、この3ヶ月でもドローンに関するニュースがたくさんありました。ちょっと3ヶ月のニュースをまとめてみたいと思います。
まずこの3ヶ月で目立っていたのが、ドローンによる事故や、ドローンを利用した事件です。ドローンの空中衝突等は以前から問題視されていますが、この3ヶ月はとくに目立っていたように思います。まだ大事件には至っていないようですが‥。
- ドローン乱入で試合中止:サッカーのセルビア・アルバニア戦(WIRED.jp,2014/10/16)
- ドローンによる「意図的な」旅客機ニアミス事件が多発(WIRED.jp,2014/10/27)
- 原発上空にまた無人機、グリーンピースは関与を否定 フランス(AFPBB,2014/11/2)
- フランスの13原発に、正体不明のドローン接近(WIRED.jp,2014/11/4)
- 第9回湘南国際マラソン 空撮用ラジコンヘリ墜落と辻堂おでんセンター火事(湘南オヤジのブログ,2014/11/3)
- 航空機へのドローン異常接近が頻発。「ドロニー」も流行(WIRED.jp,2014/11/28)
ドローンに対する法整備は進められているようですが、まだ時間がかかりそう。
- 無人機「ドローン」に免許制検討 米航空局、商用拡大視野に(47NEWS,2014/11/25)
- 「空の産業革命」をけん引するドローンの可能性–用途拡大で求められる法整備(ZDNet Japan、2014/12/3)
規則作りに関しては、ドローンによる配送を計画するAmazonもアプローチを行っています。ドローンを利用したサービスは以前まとめて紹介しました。どこまでのサービスや利用が実現するのか、引き続き注目です。
- アマゾン、ドローン屋外試験飛行の早急な認可をFAAに要請–米国外拠点での試験にも言及(CNET Japan,2014/12/11)
- アメリカでのドローン商用利用、一歩前進:ドローンでの映画製作が可能となった日(WIRED.jp,2014/9/28)
その他のドローン用途にまつわるニュースもタイトルを列挙。色々提案されていますね。
- ウェアラブル・ドローンがカメラの定義を変える:腕に装着できる小型ドローン(動画あり)(WIRED.jp,2014/10/9)
- 「米国・メキシコ国境の半分」は無人機が監視(WIRED.jp,2014/11/22)
- インド警察、「暗視カメラ搭載ドローン」を導入へ(WIRED.jp,2014/12/15)
同じく無人機関係のニュースですが、こちらは別枠で紹介したいと思います。自動運転する無人ボート13隻を「群」としてコントロールした実験です。実験は8月に行われたとのこと。
なぜこのニュースに注目したかというと、無人機の群制御は新たな戦争の「教義」となる可能性があるためです。戦闘教義とは、作戦や戦闘における軍部隊の運用思想を言います。例えばヒトラーの「電撃戦」や、第二次大戦での「艦船に対する航空攻撃」は、その時代の新たな戦闘教義として威力を誇りました。無人機の最先端動向をレポートした『ロボット兵士の戦争』(2010)では、ドローンの普及に伴い研究されている新たな戦闘教義として、「母艦」と「群」を挙げています。このうち「群(Swarm)」は、低コストな無人機を大量に準備し、群れとして強大な攻撃力を持たせるという思想です。
無人ボートの実験は、米軍の「群」教義の進捗を知るうえで気になるニュースでした。無人機の群行動については次の記事も参考になります。
この3か月はハヤブサ2打ち上げや、スペースシャトル次世代機オリオンの試験機打ち上げなど、宇宙関係のニュースも豊富でした。いくつか関連ニュースを眺めてみます。
中国とインドが宇宙開発能力を大きく向上させています。
- 嫦娥五号試験機、月との往復航行を終え地球に帰還 約40年ぶりの快挙(Sorae.jp,2014/11/2)
- ISRO、新型ロケットGSLV Mk-IIIを12月第3週に打ち上げると発表(Sorae.jp,2014/12/12)
中国は有人飛行を成功させ、独自の宇宙ステーションも保有するなど近年躍進が続いています。今回打ち上げられた嫦娥五号試験機は、2017年打ち上げ予定の嫦娥五号のテストで、月の裏側を周回しての期間に成功しました。月探査に向けて着実に進んでいるようです。
インド宇宙研究機関(ISRO)の新型ロケットは静止軌道への打ち上げ能力を持ち、有人飛行も視野に入れているとのこと。宇宙開発参加国が増えていきますね。
インドのロケット(GSLV III)、なんだかとってもインドっぽい。うまく言い表せないけどインドっぽい。 pic.twitter.com/Kc5AX6Q40U
— ぽりごん (@polygon0323) 2014, 12月 18
宇宙というとどうしても外せないのが軍事利用への影響です。次の論評がおもしろかったので、参考にリンクを載せます。X-37BはSFマンガ『ムーンライトマイル』の米軍スペースプレーンを彷彿とさせます。秘密兵器然とした存在感。今後どのように運用されるのか気になります。
- 米国に負けじと宇宙開発に邁進する中国 軍事衛星打ち上げのペースを加速(JBpress,2014/10/1)
- 謎に包まれた米空軍の宇宙往還機X-37B – その虚構と真実 (マイナビニュース,2014/10/21)
一方で残念なニュースも。挑戦に失敗はつきものですが、ぜひ次の成功に結びついてほしいです。火星での寿命については、今回課題が1つ具体的になったということで、これを解決する研究がいずれ成果を結ぶと信じたいと思います。
- 人は火星で68日間の命、米研究(AFPBB News,2014/10/15)
- NASAの無人ロケット「アンタレス」が、打ち上げ失敗、大爆発(死傷者なし)(Naverまとめ,2014/10/29)
- 民間の宇宙船が試験飛行中に墜落、1人死亡 アメリカ(THE HUFFINGTON POST,2014/11/1)
宇宙繋がりでは次のニュースもありました。私はこれを大きなニュースと捉えています。
2014年9月より、国際宇宙ステーションには3Dプリンタが運び込まれており、宇宙空間における3Dプリンティングが行われています。そして今回のニュースが、工具のCADデータお送信して、宇宙ステーション内でプリントアウトしたというもの。印刷されたのはレンチだそうです。
3Dプリンタはバズワード化している感がありますが、この宇宙ステーションでのプリントアウトは、3Dプリンタの可能性を端的に示す事例だと思い今回ニュースを取り上げました。
3Dプリンタの利点の1つには、例えば従来の通常の工程では不可能な造詣が可能になった点があります。しかし最大の特徴は「モノのデータ化」だと思います。互換性のあるデータにすれば、モノをデータとしてインターネットで流通させ、現地で出力できるので、ビジネスの形態を変える可能性を秘めています。
その意味で、宇宙ステーションのような極地に対してモノをデータ化して届ける、という今回の成果は注目です。
最後に紹介するのは材料系のニュースです。こうしたマテリアルが何かの用途に応用されていくことで、世界は変わっていくと信じています。可能性という意味では一番注目のニュースです。
- 米軍が4Dプリンタに投資する理由(GIAMODE,2014/10/13)
- 海水でも育つジャガイモが食糧危機を救う革命的な一歩になる可能性(GIGAZINE,2014/10/20)
- 光が3倍速く進む新物質を開発 「透明マント」に一歩?(47NEWS,2014/10/24)
- 水中での呼吸を可能にする繊維がつくられる(ロシアの声,2014/10/26)
- パナソニックが開発した”魔法の砂”で世界が変わるかもしれない(NAVER まとめ,2014/10/28)
- ガラスがゴムになる ―エントロピー弾性を示す酸化物ガラスを実現―(東京工業大学,2014/12/2)
4Dプリンタは、要するに形状変化するプログラマブルな素材の出力で、今あるものでは形状記憶合金もこの1つと言えるかもしれません。素材ひとつひとつの機能を高める研究は注目されており、米軍も目をつけているようです。
ジャガイモと「魔法の砂」のニュースは、食料関連ニュースとして期待が高いですね。植物工場が一気に普及している感がありますが、こうしたマテリアルによる農業の変化も注目したいと思います。
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他にも紹介したいニュースはたくさんあったんですけど、全てはまとめきれないのでこんなところで。
この3ヶ月のニュースとしては他に、ホバーボード、空飛ぶ車、空中ディスプレイ、小型核融合炉といったテクノロジーについても進捗がありました。これらについては次の記事で別途紹介したいと思います。
次回第3回(2015/1-3)のまとめはこちらから。
1.ビッグデータによる「未来」「デジタル人格」構築/2.電王戦人間勝利と人工知能の感情獲得可能性/3.進化するロボットと自動運転車/4.Falcon9着陸実験と宇宙インターネット・ワイヤレス送電/5.レーザー兵器とレールガン/6.医療技術と自己診断サービス/7.環境技術/8.量子論研究の重大な成果/番外1.パワードスーツやインプランタブルデバイス/番外2.ドローン規制と活用
第1回(2014/7-9)はこちらから。
1.自己再生臓器と人工脳/2.脳内アクセス/3.第2世代ニューロチップと量子コンピュータ/4.ロボット技術の進捗/5.ウェアラブル・IoTの要素技術/6.潮力発電と太陽電池フィルム/7.植物工場、といった話題です。