未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュース9選・第2回(2014年10~12月)

未来きてます。
知らないうちにもうこんなことまで実現しているのか!と驚くばかり。この3ヶ月のテクノロジー系のニュースの中から、特におもしろそうなものをピックアップして紹介します。
ニュースの選別は私の独断と偏見で、特に未来予測の観点で重要になりそうなものを選んでいます。ソースは主にRSSとTwitterです。漏れはあるかもしれませんがご容赦を。

第1回の3ヶ月分はこちらから。

Summary Note

1.脳間インターネット接続と、人間脳マウス

2.人工知能の利用が順調に進捗、キーテクノロジーはクラウド

3.勃起可能な人工ペニスと、HIVウィルスの弱体化

4.羊のネットワーク化

(閑話休題)ネットの集合知の威力がすごい

5.頻発するドローンの異常接近と、法規制

6.新たな戦闘教義「群(Swarm)」の実現に向けた実験

7.宇宙に手と足を伸ばす中国・インド

8.宇宙ステーションでの3Dプリント出力が持つ意味

9.彼らこそが世界を変える、新たなマテリアルたち


1.脳間インターネット接続と、人間脳マウス

今回も脳みその研究がおもしろかったので、脳みそから。
前回の他人の脳に直接メッセージを送る実験に引き続き、人間同士の脳を繋ぐ実験で成果が出ています。

脳インターフェイスを遠隔地にいる2人に繋ぎ、同時にゲームをさせたという実験。送信者にはシューティングゲームのディスプレイが、受信者にはタッチパッドが置かれ、送信者が「発射」を念じることで、受信者側がタッチパッドを操作するというものです。
依然として思考の伝達はできないものの、脳内の信号を他人の脳に伝えることはできるようになっています。

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米ワシントン大学HPより

一方マウスについて、人間の脳細胞をマウスに移植し、マウスの能力を向上させることに成功。マウスの脳構造はあくまでマウスのままですが、人間の脳細胞の方が性能が良いため、マウスの脳の基本性能が上がり賢くなったという結果です。

脳の人工作成に関する研究は前回紹介しました。
脳細胞をリッチなものに置き換えることで能力向上が図れるならば、人間の脳細胞よりも高性能な細胞体を作ることで、人間の能力を上げることもできそうです。どうなるでしょうか。


2.人工知能の利用が順調に進捗、キーテクノロジーはクラウド

人工知能の応用も進んでいるようで、様々なシーンでの利用が始まっています。

三井住友銀行、みずほ銀行ともに、IBMの人工知能「ワトソン」の利用を始めました。ワトソンはクラウド側のリソースを活用した人工知能で、将来的には医療分野での活用も期待されています。『楽観主義者の未来予測』(2013)では、ラボ・オン・チップと呼ばれる簡易解析装置を使って個人で検査を行い、検査結果をワトソンに伝えることで、病院に行かなくても診断を受けられる未来が紹介されていました。
ワトソンはクラウド型サービス「Watson Analytics」として一般にも提供が開始されており、機械学習の進化と、用途の拡大が期待されます。

Skypeの同時通訳もクラウドでの機械学習をベースにしており、クラウドの利用が一気に人工知能開発を加速させていることがわかります。人工知能が全人類の能力を上回る「2045年問題」に向け一直線です。


3.勃起可能な人工ペニスと、HIVウィルスの弱体化

頭脳のお話ばかりですが、肉体に関する研究も進んでいます。

病気で体の一部を失った人や、先天性の異常を持つ人を助けるための研究の1つだそう。こんな部分も人工培養できるのかと驚かされます。

バイオ関連としてこんな朗報も。HIVウィルスが感染を繰り返す中で弱体化しているそうです。ウィルスが複製を繰り返すと弱体化する、というのは知りませんでした。


4.羊のネットワーク化

来年2015年は未年なので、羊のニュースを紹介します。。

IoT(モノのインターネット)がバズワード化して久しいですが、応用例の1つとしておもしろそうです。単に羊の居場所がわかるだけでなく、体調管理ができたり、これまで知られていなかった性質も群としてのわかるかもしれません。また、より効率的なセンシングにはどのような技術がさらに必要になってくるのか、羊のネットワーク管理を通してフィードバックが得られるでしょう。
ともかくも羊かわいいです。

Sheep & lambs 12 and 60
こんな風に番号を付ける必要もなくなるかも
(画像出典:Sheep & lambs “12” and “60”/ARendle)

かわいい羊の話でこの項を終わらせたい気持ちが山々ですが、生き物繋がりということですみません併せてGブリも紹介です。※閲覧注意

生きたゴキブリのラジコン化は次の記事でも紹介しました。IoTとサイボーグ小動物の組み合わせがどんな未来を招くのか、非常に興味深いところです。


ネットの集合知の威力がすごい(閑話休題)

テクノロジーそのもののニュースではありませんが、この3ヶ月で起きた出来事として、ネットの集合知の威力を見せ付けられた2つの事件を紹介します。

1つめは2014年11月の衆議院選挙に先立ち、大学生が小学4年生になりすましたサイトを作成して問題提起したもの。問題のサイトは11/20夜に公開されましたが、偽物であると追及され、11/22には謝罪しています。

2つめは1990年代の叔父さんの日記が暗号でつづられていため、Twitterで解読を呼びかけたものです。11/19のつぶやきが11/23夜に話題になり、そのごわずか数時間で2種類の暗号が解読されました。解読に至るプロセスがとても面白く、上述のまとめはおススメです。

人工知能もすごいですが、人間の集合知もあなどれません。隠し事のできない時代になってきていることを実感する事件でした。


5.頻発するドローンの異常接近と、法規制

ドローンが注目を集めており、この3ヶ月でもドローンに関するニュースがたくさんありました。ちょっと3ヶ月のニュースをまとめてみたいと思います。

まずこの3ヶ月で目立っていたのが、ドローンによる事故や、ドローンを利用した事件です。ドローンの空中衝突等は以前から問題視されていますが、この3ヶ月はとくに目立っていたように思います。まだ大事件には至っていないようですが‥。

ドローンに対する法整備は進められているようですが、まだ時間がかかりそう。

規則作りに関しては、ドローンによる配送を計画するAmazonもアプローチを行っています。ドローンを利用したサービスは以前まとめて紹介しました。どこまでのサービスや利用が実現するのか、引き続き注目です。

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シルクドゥ・ソレイユのドローンを使ったパフォーマンスは必見

その他のドローン用途にまつわるニュースもタイトルを列挙。色々提案されていますね。


6.新たな戦闘教義「群(Swarm)」の実現に向けた実験

同じく無人機関係のニュースですが、こちらは別枠で紹介したいと思います。自動運転する無人ボート13隻を「群」としてコントロールした実験です。実験は8月に行われたとのこと。

YouTube Preview Image なぜこのニュースに注目したかというと、無人機の群制御は新たな戦争の「教義」となる可能性があるためです。戦闘教義とは、作戦や戦闘における軍部隊の運用思想を言います。例えばヒトラーの「電撃戦」や、第二次大戦での「艦船に対する航空攻撃」は、その時代の新たな戦闘教義として威力を誇りました。

無人機の最先端動向をレポートした『ロボット兵士の戦争』(2010)では、ドローンの普及に伴い研究されている新たな戦闘教義として、「母艦」と「群」を挙げています。このうち「群(Swarm)」は、低コストな無人機を大量に準備し、群れとして強大な攻撃力を持たせるという思想です。

無人ボートの実験は、米軍の「群」教義の進捗を知るうえで気になるニュースでした。無人機の群行動については次の記事も参考になります。


7.宇宙に手と足を伸ばす中国・インド

この3か月はハヤブサ2打ち上げや、スペースシャトル次世代機オリオンの試験機打ち上げなど、宇宙関係のニュースも豊富でした。いくつか関連ニュースを眺めてみます。

中国とインドが宇宙開発能力を大きく向上させています。

中国は有人飛行を成功させ、独自の宇宙ステーションも保有するなど近年躍進が続いています。今回打ち上げられた嫦娥五号試験機は、2017年打ち上げ予定の嫦娥五号のテストで、月の裏側を周回しての期間に成功しました。月探査に向けて着実に進んでいるようです。
インド宇宙研究機関(ISRO)の新型ロケットは静止軌道への打ち上げ能力を持ち、有人飛行も視野に入れているとのこと。宇宙開発参加国が増えていきますね。

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※コラージュ画像だそうですが、確かにすごいインドっぽさ

宇宙というとどうしても外せないのが軍事利用への影響です。次の論評がおもしろかったので、参考にリンクを載せます。X-37BはSFマンガ『ムーンライトマイル』の米軍スペースプレーンを彷彿とさせます。秘密兵器然とした存在感。今後どのように運用されるのか気になります。

X-37B_prelaunch MOONLIGHT MILE(3) (ビッグコミックス)
無人スペースプレーンX-37B(左)と、おススメ宇宙マンガ『ムーンライトマイル』(右)

一方で残念なニュースも。挑戦に失敗はつきものですが、ぜひ次の成功に結びついてほしいです。火星での寿命については、今回課題が1つ具体的になったということで、これを解決する研究がいずれ成果を結ぶと信じたいと思います。


8.宇宙ステーションでの3Dプリント出力が持つ意味

宇宙繋がりでは次のニュースもありました。私はこれを大きなニュースと捉えています。

2014年9月より、国際宇宙ステーションには3Dプリンタが運び込まれており、宇宙空間における3Dプリンティングが行われています。そして今回のニュースが、工具のCADデータお送信して、宇宙ステーション内でプリントアウトしたというもの。印刷されたのはレンチだそうです。

3Dプリンタはバズワード化している感がありますが、この宇宙ステーションでのプリントアウトは、3Dプリンタの可能性を端的に示す事例だと思い今回ニュースを取り上げました。
3Dプリンタの利点の1つには、例えば従来の通常の工程では不可能な造詣が可能になった点があります。しかし最大の特徴は「モノのデータ化」だと思います。互換性のあるデータにすれば、モノをデータとしてインターネットで流通させ、現地で出力できるので、ビジネスの形態を変える可能性を秘めています。
その意味で、宇宙ステーションのような極地に対してモノをデータ化して届ける、という今回の成果は注目です。

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手にしているのが3Dプリントされたレンチ(NASAより)


9.彼らこそが世界を変える、新たなマテリアルたち

最後に紹介するのは材料系のニュースです。こうしたマテリアルが何かの用途に応用されていくことで、世界は変わっていくと信じています。可能性という意味では一番注目のニュースです。

4Dプリンタは、要するに形状変化するプログラマブルな素材の出力で、今あるものでは形状記憶合金もこの1つと言えるかもしれません。素材ひとつひとつの機能を高める研究は注目されており、米軍も目をつけているようです。

ジャガイモと「魔法の砂」のニュースは、食料関連ニュースとして期待が高いですね。植物工場が一気に普及している感がありますが、こうしたマテリアルによる農業の変化も注目したいと思います。

 

他にも紹介したいニュースはたくさんあったんですけど、全てはまとめきれないのでこんなところで。
この3ヶ月のニュースとしては他に、ホバーボード、空飛ぶ車、空中ディスプレイ、小型核融合炉といったテクノロジーについても進捗がありました。これらについては次の記事で別途紹介したいと思います。

次回第3回(2015/1-3)のまとめはこちらから。
1.ビッグデータによる「未来」「デジタル人格」構築/2.電王戦人間勝利と人工知能の感情獲得可能性/3.進化するロボットと自動運転車/4.Falcon9着陸実験と宇宙インターネット・ワイヤレス送電/5.レーザー兵器とレールガン/6.医療技術と自己診断サービス/7.環境技術/8.量子論研究の重大な成果/番外1.パワードスーツやインプランタブルデバイス/番外2.ドローン規制と活用

第1回(2014/7-9)はこちらから。
1.自己再生臓器と人工脳/2.脳内アクセス/3.第2世代ニューロチップと量子コンピュータ/4.ロボット技術の進捗/5.ウェアラブル・IoTの要素技術/6.潮力発電と太陽電池フィルム/7.植物工場、といった話題です。

 

楽観主義者の未来予測(上): テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする ロボット兵士の戦争

 

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