未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュース8選・第3回(2015年1月~3月)2/2

3ヶ月間で流れてきたテクノロジー系ニュースのまとめ第3回。2015年1月~3月のニュースで、特に未来に対して重要な影響のありそうなものをまとめてみた。
このうちビッグデータ、人工知能、ロボットと自動運転車、そして宇宙開発の4つの分野については、次の前半記事でまとめた。

今回の後半記事ではこの続きから、兵器、医療、環境、そして科学の各分野のニュースを紹介する。

Summary Note

1.ビッグデータにより構築される「未来」と「デジタル人格」

2.人間勝利の将棋電王戦、Watsonは料理本出すけど、感情獲得はしばらく先

3.引き続き進化していくロボットと、開発が進む自動運転車

4.Falcon9着陸は失敗したが、宇宙インターネットやワイヤレス送電は進捗

5.実用化が進むレーザー兵器とレールガン

6.医療技術が進捗、自己診断サービスも続々リリース

7.無電力での水の収集、プラスチックの生体分解、人工光合成

8.量子論と光の研究で重大な発見

なお、この3ヶ月のニュースの中でも、義肢やパワードスーツ、インプランタブルデバイスといった、人間をサポートしたり改良する技術のニュース、それからドローンに関するニュースについては、次の記事にまとめた。


5.実用化が進むレーザー兵器とレールガン

米国が開発を進めるレーザー兵器の種類について、以前まとめた。

無人機や小型船への攻撃を目的として、米軍はペルシャ湾に配備された揚陸輸送艦ポンスにレーザー兵器システムを配備しており、破壊試験にも成功している。

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ロッキード・マーチンも光ファイバーを使ったレーザーシステムを開発しており、今回、1.6km先の目標を攻撃する実験に成功したという。

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ロッキード・マーチンHPより

大気圏内では減衰が生じるので、レーザーによる長距離攻撃は難しいとされる。レーザー兵器の主な用途は迎撃だ。レーザー兵器はボートなどの標的の破壊の他、ミサイルの迎撃にも既に成功している。
今回ニュースになったロッキード・マーチンのATHENAは、ミサイル迎撃用レーザー・システムADAMの発展形だ。光ファイバーを使うことで、レーザー発振のために光が往復する経路をフレキシブルにでき、ADAMに対して小型化できる。今回の出力は30kWだったが、これを100kWに高めれば、無人機やミサイルの迎撃用途として使えるという。

また、新種の兵器ではレーザー兵器の他に、レールガン(電磁加速砲)も公開されている。こちらもものすごい威力だ。レールガンは射程160kmを誇るが、電力消費が大きいため、現状では搭載できる艦艇は限られる模様。

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こうした新兵器により、ミサイルや戦闘機を十分に迎撃できるようになると、再び砲戦の時代に戻るのでは、とか思ってしまう。何十年後かの戦争では、レールガンの撃ち合いでの艦隊決戦とか行われるんだろうか。

NATO弾対応小銃の機関部の3Dプリンティング

兵器関連では、自動小銃機関部の3Dプリントのニュースも。

小銃の3Dプリンティングはすでに行われているが、今回の特徴は、NATO弾という口径の大きな弾を撃てる小銃でも、故障なく試射できた点だ。ただし、3Dプリンティングだけでなく他の材質が使われている点も疑われている。
3Dプリントによる兵器製造は、テクノロジーが「非対称の戦争」を拡大させる事例の1つとして注目である。その進捗の1つとして、このニュースを留めおきたい。


6.医療技術が進捗、自己診断サービスも続々リリース

がんの早期発見方法や、アルツハイマーの原因物質の解明、エイズワクチンとして有力な化合物の発見など、医療関連の朗報が相次いでいる。老化を止めることのできる成分NMNの発見も興味深く、実用化が待ち遠しい。

再生医療では、小脳の神経組織の作成や、陰茎移植の成功といったニュースも。

ニュースでは誰からの移植であるかはナイショ、としているが、前回紹介した「勃起できる人工ペニス」は5年以内に人間で試験とのことだったので、いずれ移植元を気にする必要もなくなるだろう。

ユーザによる自己検査とクラウド診断

医学研究の成果ではないが、医療分野で注目したいのが、スマフォなどを使った個人による診断だ。専用ツールにより血圧や血液、その他の生体情報をユーザ自身が検出し、これをスマフォや、あるいはクラウドに送って分析する。こうした技術がいよいよ実際のサービスとして提供され始めている。提供者にはオムロンやKDDIの名前も見える。

『楽観主義者の未来予測』(2014)では、今後の医療のあり方を変える技術の1つとして、こうしたユーザ自身による検査とクラウドでの解析を挙げている。病院に通う必要がなく、リアルタイムに診断できることから、低価格で高度な医療サービスをより多くの人が受けられるようになる。
今回ニュースになったサービスはいずれも、今後の医療を変える兆候かもしれない。個人による検査とクラウド診断でどこまでのことができるのか、今後の可能性に注目したい。

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KDDIの「スマホdeドック」は専用キットを使えば、自宅で血液検査もできる(KDDI HPより)

昆虫ラジコンバトルの空中戦モデルがさらに進化!

小動物のサイボーグ化については以前紹介した。例えば、ゴキブリをハックしてのラジコン化である。こう書いてるだけでもMAD感やばい。

カブトムシのラジコン化自体は2009年頃からできてけれど、筋肉の構造を調べることで、さらに高精度な操縦を可能にしたというのが今回のニュース。良かったですね。大きなニュースではないけれど、個人的に気になっているニュースなので、紹介してみた。

画像は載せないので、興味がある人は上記記事を参照のこと。わりとリアルですよ。


7.無電力での水の収集、プラスチックの生体分解、人工光合成

続いて環境に関するニュースから。

水を集める竹の搭は、原始的ながらも意欲的な技術だ。ワカと呼ばれる、竹に似た木を網状に組んで大気中の水分を集める。米国情報会議による未来予測レポート『2030年世界はこう変わる』(2013)では、2030年までに、世界の水需要が40%不足すると予想していた。もしかしたらこの技術は、水が希少な地域に限らず、広範な地域で用いられることになるかもしれない。

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なんだか村のオシャレ度UPにも貢献しそうな「ワカの搭」

プラスチックを食べるキノコの研究も面白い。長い時間がかかるものの、プラスチックを分解できる菌が存在する。これを改良して効率化できれば、環境問題・資源問題に朗報をもたらす。進捗に期待したい。

人工光合成の効率が向上

エネルギーの観点で注目すべきは、人工光合成の実現だ。東芝が炭素化合物への変換効率で1.5%を実現したという。さらに、NEDOもまた水素製造で2%の効率を達成した。NEDOは2021年度末までに変換効率10%を目指している。

ちなみに東芝の変換効率は、植物で最も変換効率の高い藻類に匹敵するものだというから、驚くべき成果だ。もっとも、何に変換できるかなど課題はあるようで、例えば下記の記事では少し批判的に評価している。

今後も効率の数字は伸びていくはずなので、エネルギー問題を解決する1つの可能性として、また、二酸化炭素にまつわる環境問題へのアプローチとして、人工光合成には注目したい。


8.量子論と光の研究で重大な発見

最後に科学のニュースと、併せて先端材料のニュースも紹介したい。

量子の二重性・非局所性に関する観測

量子力学の分野でいくつかの成果が発表されている。その1つが、二重性を持つ光の、粒子としての振る舞いと、波としての振る舞いとを、同時に撮影できたというものだ。

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波としてふるまう光の中に電子をあてることで、粒子としてふるまう光も同時に観測している。WIREDの解説がとても分かりやすかったので引用する。

今回の実験では、波のようにふるまう光の集合体のなかに電子を衝突させることで粒子としてふるまう光子を見つけだし、波と粒子を一度に画像におさめることに成功したという、ひとつの実験で量子の二重性を確認する素晴らしいアイデアなのだ。これは、川波の表面から個々の水分子の運動を知るのは不可能でも、染料を加えた細かい粒を大量に投入することで、粒子と波が同時に見えるという例えを想像してもらえればわかりやすいかもしれない。

光の「粒子」と「波動」を同時に可視化、世界で初めて成功(WIRED.jp)より

科学の世界に「確率」を持ち込んだ量子論は、未だに多くの論争を呼んでいる。この実験の成功は、量子力学の謎を解明し、発展させる大きな一歩になるかもしれない。

また、量子の非局所性の検証もニュースになった。

量子の非局所性とは、光は確率的に分布するが、異なる2点では同時には観測されない性質を指す。つまり、光は波としての性質を持つが、観測すると粒子として1か所でしか見ることができないということだ。
東京大学の古賀研究チームは今回、ある1点における量子の観測が、他の点における観測にも影響を及ぼすことを検証した。

量子の性質を明らかにすることにより、より高性能な量子コンピュータが実現できるかもしれない。例えば量子テレポーテーション等、量子の世界ではマクロの世界では考えられない挙動が起きている。この原理を解明し、工学的に利用できれば、これまでとは原理の異なるコンピュータを作り出せる。今回の研究成果は、その重大な一歩の1つとなるだろう。

光の速度の媒体外での減速に成功

光に関して、光子を加工してその速度を遅らせる実験に成功したという。光は水などの媒体通過中は遅くなり、媒体を出るとまた元の速度に戻る。しかし今回の実験では、ある液晶マスク装置を通して光の形状を変化させ、媒体通過後も低速な光を作り出した。

光の速度では、もう10年以上前になるが、ハーバード大学の研究チームが光を停止させたことがあった。これは、上述した媒体通過中で起きる減速を極端にしたものだ。

光とは、同期して振動する原子の集まりともみることができる。物理学者ミチオ・カクは著書『フューチャー・オブ・マインド』(2015)で、光の速度を制御してこれを使うことができれば、量子コンピュータのような、通常のコンピュータをはるかに超える複雑な計算ができる可能性に触れていた。
今回の光の速度を遅らせた実験は、工学的に利用されるのはまだ遠い未来のことかもしれないが、そのための重要なステップになったかもしれない。

水をはじく金属と、自力で動ける液体金属

先端材料について、撥水加工技術でおもしろいニュースがあった。撥水コーティングを加えるのではなく、金属表面自体をレーザーで加工することで、水をものすごく弾く表面ができたというものだ。動画で見ててなんか気持ちいい。

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UCLAによる別の研究成果も。

また、動く液体金属の研究も。チューブ内でポンプの役割をさせたり、電流の有無で金属の形を制御したり、といった使われ方が紹介されている。いずれは形を変えるロボットの実現にも繋がるとか繋がらないとか。金属に自由度を持たせられれば、実現できることの幅も広がるはずだ。今後どのような用途に使われるのか楽しみである。

 

以上、2015年1月~3月で目についたテクノロジー系のニュースをまとめて紹介した。今回もおもしろい技術が目白押しでまとめるのが大変だった。個人的には、電王戦の人間勝利が嬉しかったのと、宇宙開発、兵器、それから医療に関するニュースが印象的だった。量子論に関する観測はすごそうだけど、応用にはまだ時間がかかりそうだ。
次の3ヶ月間のニュースも引き続き楽しみにしたい。

今回の8つのニュースのうち、前半部分の紹介はこちらから。また、TwitterのTLに流れてたニュースもTogetterでまとめている。

次回第4回(2015/4-6)のニュースのまとめはこちらから。
1.Googleが人工知能に見せた夢/2.独インダストリー4.0とIoT/3.男同士で子作り・記憶操作・バイオプリント/4.各種発電技術/5.新素材/6.世界では開発・利用が進むドローン/7.米軍開発のビックリドッキリ新兵器/8.レーザー照射によるデブリ除去/9.オモシロガジェット

前回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.脳間ネット接続と人間脳マウス/2.人工知能の進捗/3.勃起可能人工ペニスとHIVウィルス/4.羊のIoT/5.ドローンと法規制/6.ドローンを利用した新戦闘教義「群」の実験/7.中国・インドの宇宙開発/8.ISSでの3Dプリント/9.先端材料 について。

 

楽観主義者の未来予測(上): テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする 2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」 フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する

 

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