未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュースまとめ・第7回(2016/1-3)

いなたくんへ

鳥は言語を持っている。例えばオーストラリアに生息するクリボウシオーストラリアマルハシは、音を繋ぎ合わせて会話ができる。身近なところではシジュウカラも会話に文法を持つことが発見された。

ヒト以外も言語を持つという発見は驚きだが、さらに踏み込んで考えると、いずれ我々の言葉に翻訳できる可能性もあるかもしれない。昨今の人工知能(機械学習)は認識精度を飛躍的に向上させ、曖昧なもの、不完全なものにも対応でき、リアルタイム通訳や、赤ちゃんの泣き声や感情の解析が実現している。鳥の言葉が文法を持つほどに構造化されているならば、高い翻訳精度が期待できるかも。通勤しながら鳥たちの下世話なトークを聞ける未来も遠くはない。

人工知能の認識力はどこまで進むのか。
この3ヶ月を振り返ると、AlphaGoによる囲碁9段イ・セドル棋士に対する勝利が大きな衝撃だった。さらには人工知能の書いた小説が星新一賞1次選考を通過したり、ミュージカルが公演されたりして、創造的な仕事も人工知能に奪われようとしている。人工知能技術のハードへの応用では二足歩行ロボットや自動運転の着実な進捗も見逃せない。

ということで今回も、この3ヶ月に起きたテクノロジー系の出来事をまとめてみた。人工知能関連のほかにも、VR技術のアダルト分野での展開や、予言から100年経っての重力波の発見、眼球生成や恐竜の後ろ脚再現など、興味深いニュースがたくさんあった。

Togetterでもまとめたのでこちらから。今回は3本に分けてみた。


1.アダルトVRは2016年のVR普及を牽引するのか

出荷でトラブルはあるものの、本格VRヘッドセットのOculus RiftとHTC Viveがついに発売。PlayStationVRも10月の発売と価格が発表された。PSVRは10月までに50タイトルのVRゲームコンテンツを揃えるとしている。簡易VRヘッドセットCardboardで出荷総数500万台(!)を突破したGoogleもVR部門を新設。兼ねて予想されたとおり、2016年はVRの1年になりそうだ。

コンテンツも面白そうなものが増え始めてて、『アニュビスの仮面』は初のVRボードゲームを謳っていてユニーク。変わったところではVRテトリスとかVRマリオとか、往年のゲームも一人称視点化されている。でもコンテンツで目が離せないのは何といってもアダルトだ。

アダルトコンテンツがVR普及の橋頭堡を築く

詳しくは書かないけど、2月には本邦初となる有料VRアダルト動画の配信がスタート。一気にコンテンツが充実しているようだ。こうした状況はアダルトVR専門のアカウント@VR18jpさんが実況していて、例えば全天周一人称視点の没入撮影のノウハウとか、その後普及するだろう健全コンテンツ製作の観点でも参考になりそう。ビデオ、ライブチャット、ゲームなど、VRアダルトコンテンツの現状は次のまとめ記事もわかりやすい。

紳士諸兄には画像掲載せず申し訳ないが、自分で調べてね。何はともあれ新技術普及の先駆けとして、アダルトコンテンツの隆盛は心強い。VRキャバクラなんてシロモノも。

視界だけでなく触覚・味覚・平衡感覚も

VR用デバイスはヘッド・マウント・ディスプレイだけではない。触覚や温度を再現するワイヤレス全身スーツ「Teslasuit」や、食べ物に電気を通して味を変化させるフォーク、耳の前庭に電気を送り平衡感覚に刺激を与える三星製ヘッドフォンなど、種々提案されている。平衡感覚に刺激とか大丈夫なのかな。「ゲームは1日1時間」が命にかかわる戒めにならないか、ちょっと心配。

Teslasuit
Tesla Studiosより

ここで話をあえてアダルトに戻すと、VRと連動するグッズも発売された。全身スーツとあわせて考えれば、近未来の美少女ゲームを描いた名作マンガ『ルサンチマン』の世界はすぐそこまで来ている(※閲覧注意)ようだ。

みんな美少女になりたい

最後に気になったのはモーションキャプチャ技術だ。これはユーザの動きをキャプチャして、CGなどをその通りに動かす技術。Webカメラで撮影した表情をリアルタイムに画面上のキャラクターに反映できるようになる。

VRが普及したとき、アバターによるコミュニケーションで重要になりそうな技術だ。Webではおっさんが女性キャラに扮するにあたっての身動きノウハウが議論されるなど興味深い。

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2.遺伝子操作による恐竜再現と、細胞にも宿る記憶

VR用ウェアラブル・デバイスは仮想世界の現象を現実の肉体にフィードバックするものだった。一方、現在開発されるウェアラブル/インプランタブル・デバイスはフィードバックにとどまらず、双方向コミュニケーションや肉体の改変をも可能にする。

特に脳に作用する研究が進んでおり、米国防総省のDARPAは脳とコンピュータの通信の開発プロジェクトに投資、兵士のサイボーグ化に注力している。脳関係で目立ったニュースがいくつかあったのでリンクを掲載。

肉体改変系で尖ったインプランタブル・デバイスでは息子用も。これってログ残ったりするのかな。浮気相手にハックされオン・オフ切り替わらないことを願います。

遺伝子操作による恐竜の再現も間近に

肉体改変のみちはインプラントに限られず、大元の遺伝子を編集する技術も進んでいる。2月にはついに英国がヒト受精卵のゲノム編集に認可を出した。ヒト受精卵のゲノム編集では中国が先んじ、世界から懸念が示されていたが、キリスト教国の英国による認可は、今後当該分野の研究を加速させるかもしれないし、倫理的な議論を再燃させるかもしれない。

でもヒトでなければOKでしょ、ということでニワトリの胚の遺伝子を操作して恐竜の後ろ足を作り出した成果も。人間の赤ちゃんも胎児の頃には祖先の形態を段階的にたどるが、その祖先の隔世遺伝的特徴をそのまま発現させることで、ニワトリの祖先である恐竜の肉体を再現した。完全な恐竜の復活も近そうだ。 Do you have to poke that thing at me?!
白亜紀の面影を色濃く残すニワトリ(画像:Jlhopgood)
後脚再現で気になるのはやっぱりケンタッキー・フライドサウルスのお味だろう

記憶はネットワークだけでなく細胞にも宿る

バイオ技術はこれにとどまらず、加齢により薄毛が進む仕組みを解明したとともに、毛髪を生み出す「毛包」のマウスでの大量培養も実現、男性の社会的地位に大きな変化が予想される。再生医療ではiPS細胞から眼球全体の発生にも成功するなど、身体のパーツが次々に出来上がってきている。

そんなバイオ関連のニュースで気になったのは、記憶が単一の神経細胞にも形成されるという発見だ。従来の「シナプス説」では記憶は複数の細胞の相互作用により支えられると考えられていたが、研究によれば、細胞1つ1つでも記憶を持ちうることがわかった。臓器移植により記憶が他人に移る理由もこれで説明できるのかもしれない。また、記憶のメカニズム解明は記憶のデジタル化や外部保存にもつながってゆく。


3.囲碁を制した人工知能はショートショートでデビューを目論む

ヒトのハイブリッド化研究が進む一方、機械の知性も進化している。衝撃だったのはやはりAlphaGoによる囲碁での勝利。チェスではディープブルーが1997年に、将棋では将棋電王戦で2013年に人間に勝利したが、囲碁はまだしばらく先だと思われていた。ところが昨年冬に突如としてGoogle DeepMindのAlphaGoが話題に上り、この3月には世界的名手イ・セドル9段に勝利してしまったから驚きである。

AlphaGoの打ち筋はそれまでの定石からは離れていて、当初人間には意図が理解できず、その圧倒的な実力に「人類はもうダメだ‥」という絶望的な反応も見られた。人工知能との戦いを想定した次の予想は参考になる。

人工知能は人知を超えた存在なのか

私は5番対局のうち、唯一イ・セドル9段が勝利した第4局を観ることができた。9段による上辺白の救出劇は感動的で、AlphaGoの弱点も明らかになった一局だった。

「やっぱり今回もそこに打ってくるんですね」
「しばらくこの打ち方が流行りそうですね」
「こちらに打っても同じように打ち返してくるのか、試してみてほしかったナー」

と、囲碁チャンネルによる解説もA/Bテスト感満載で楽しめた。ここで注目だったのは「流行」という評価だ。過去の棋譜を教師データとしたAlphaGoの手筋は「現時点での最善」の1つに過ぎない。江戸時代の定石が今のそれとは異なるように、10年後、20年後の定石もまた今とは変わっていくだろう。AlphaGoはその道筋を繋いだ現代最強の棋士のひとりに過ぎない。もっとも人工知能の進化の速度を考えると、今後人間が逆転できるかは微妙なところかもだけど。

ショートショートでデビューを目論む

囲碁が論理思考の分野とすれば、感情分野での人工知能の躍進も目立つ。人工知能の作劇によるミュージカルが上演され、絵画が$8,000で売れたり。そして人工知能の書いた小説が星新一賞の1次選考を通過した。

クリエイティブな仕事も任せられるとなると、問題なのが人間との棲み分けだ。仕事を人工知能に任せられるなら生活が楽になる、人間は別の仕事に注力できる、という話も出る一方、政治も任せてみてはどうかという意見もあり、人類サイドの困惑はまだまだ続きそう。
このあたりは著作権問題と絡めて以前にも紹介した。

人工知能の不始末は誰が責任をとるのか

人工知能をめぐっては、Twitterで学習する米Microsoftの人工知能Tayが、差別的発言をしたとしてわずか14時間で緊急停止される事件があった。

原因は悪意あるユーザにコマンドを破られたことにあり、人工知能そのものの問題ではなかった。でも気になるのはMicrosoftの対応だ。人工知能による学習はいわゆるブラックボックスだが、Microsoftはその結果に責任を取ったかっこうになる。これは今後人工知能が事故を起こした場合の先例の1つになるかもしれない。
米国では「自動運転車の運転手とは人工知能である」との当局見解も出ている。その車が疲れからか不幸にも黒塗りの高級車に追突したら、人工知能をかばいすべての責任を負うのはGoogleだろうか。

Tay
「私が愚かなのはお前らに学んだから」と煽り返すTay


4.自動運転車の公道走行@2020年に道筋

人工知能技術の応用分野といえばロボット。キモチワルイ犬Spotで有名なBostonDynamicsは、犬と闘うロボット犬の動画を公開。さらには2足歩行の人型ロボットAtlasが姿を現した。自分でドアを開けて外出し、蹴られ倒れても起き上がるその姿は衝撃的。

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と思ったら親会社のGoogleはBostonDynamicsをあっさり売却。収益化のメドが立たないからと言うけど、これだけの技術力を持つ会社を次に誰が買うのか、注目が集まっている。

政府指針により現実味を帯びてきた自動運転

自動運転では、2020年公道利用に向けての工程表を政府が策定予定。必要な実証実験や法改正を進めるほか、事故の責任を誰が負うのかといった問題も詰めていく。また、国土交通省と経産省は、高速道路でのレベル2自動運転実現(2018年)や自動バレーパーキング(2020年)など具体的な方向性を示した
自動運転は技術的には実現できても規制の壁が……と懸念されてきただけに、出口の兆しが見えて楽しみ。ちなみにレベル2自動運転とは「加速・操舵・制動のうち複数の操作をシステムが行うもの」で、準自動運転とも呼ばれ、スバルが2017年の市販を計画している。

日産がNASAと提携したり、ソフトバンクも参入したり、トヨタが人工知能研究でGoole元幹部を加えたり、この分野もずいぶん賑やかになってきた。トヨタといえば傘下のアイシンが急病を感知して路肩に停車するシステムを開発。こうしたフェールセーフな機能もうれしい。
一方、自動車保険やカーシェアリングなど、自動車をめぐるビジネス環境の変化も議論が盛んになっている。

Roads? Where we’re going, we don’t need roads

業界に一石を投じるダークホースとしてはTerrafugia社にも注目。飛行可能な自動運転車の2018年発売を計画している(お値段たったの3000万円)。車線変更の自動化とかみみっちいよね。未来に道などいらんのです。

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5.人も乗れるドローンは未来の交通事情を変えるかも

自動運転でリードするGoogleは自動運転トラックでの配送も計画するほか、ドローンによる配達プロジェクトを1~3年以内に開始すると発表した。NASAとの共同開発による。ドローン配達は中国やシンガポールですでに行われているが、この3ヶ月では米新興企業Flirteyによるテスト成功や、千葉での実証実験など、一般化の兆しを見せている。

ドローンの積載可能量が増加、人も乗れるように

ドローン配送で気になるスペックの1つが積載量だが、イスラエル企業が開発した垂直離着陸型無人機AirMuleがすごい。最大高度約5.5km、時速177km以上で、約500kgの荷物を48km運搬できる。軍用機ではあるものの、ドローンによる配達の上限を考えたとき、これだけのスペックでも実現できるとわかるのは頼もしい。

一方、中国のドローンメーカーEHANG-homeは、パイロット不要で自動飛行してくれる一人乗りマルチコプターEHANG184を発表した。最大100kgを載せて23分間、平均時速100kmで16kmの飛行が可能とのこと。操縦不要で人が乗れるというのは面白く、未来の交通手段になるかも。

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AirMule(左:Youtubeより)とEHANG184(右:Erick Moenより)

軍用ドローンでは無人潜水艦の開発競争が進む

本家たる軍事用途も拡大している。米軍は無人ステルス爆撃機X-47Bに代えて無人給油機の開発をスタート。RAQ-25スティングレイの名が付いた。DARPAは屋内でも自律飛行可能な市街戦用ドローンを開発中、ロシアは対戦車ミサイルを積んだマルチコプター「タンクキラー」を開発したなど、バリエーションが増えている。

とりわけ無人化がアツそうなのが潜水艦だ。米国とロシアは無人潜水艦の開発競争でしのぎを削っているとされる。そんななか米国は4月に無人対潜ドローンを進水させる。これは補足した敵潜水艦を数か月にわたり追跡可能で、数隻による連携も可能とのこと。これに追われるのはけっこうキツそう‥。潜水艦が大きな脅威となる時代も変わるかもしれない。

もちろん民間用途の無人潜水艦も開発が進んでいて、ボーイングのEcho Voyagerは水上艦のサポートなく6ヶ月の長期にわたり、1万メートル以上の深海を探査可能。潜水艇からタンカー、貨物船まで、多くの船舶は今後無人化されていくのかもしれない。

なお脱線するが、軍事兵器では米国に続きドイツ海軍もレーザー兵器の開発に成功、ドローン兵器も撃墜できる。

ドローンレース参加したい!

ドローンが生む新たな産業分野で注目なのはスポーツ。ドバイでは賞金総額なんと100万ドル(約1億2000万円)のドローンレース「World Drone Prix 2016」が開催され、15歳の少年ルークが優勝に輝いた。ドローン視点の映像は迫力。さらに難しいコースも見てみたい。

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6.民間宇宙機でシャトル型復活、各国が目指す有人月面探査

軍民両者による開発が進むドローンだったが、宇宙開発では民間企業の開発が目覚ましい。
SpaceX社が12月に打ち上げ、再着陸に成功させたファルコン9は、再利用可能であることが確認された。同社はさらにドラゴン2宇宙船の空中静止実験にも成功。スラスター出力でホバリングすることで、正確に回収地点に着陸できる。これらの技術がどの程度打ち上げコストの低下に寄与するか注目だ。

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宇宙開発事業の民間への移行を進めるNASAは、2019年以降のISS補給にシエラネバダ社を追加した。同社はシャトル型宇宙船「ドームチェイサー」を改造した無人補給船を採用する可能性がある。スペースシャトル退役後はロケット型に回帰していたところなので、有翼機の復活はわくわくする。

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ドリームチェイサーはスペースシャトルよりはるかに小型だが、翼があるとカッコいい!

kickstarterでは反物質エンジン実現のための資金調達がスタート。反物質エンジンは光の40%という高速を実現できる。1億ドルの投資があれば、30年ほどでプロトタイプができるとのこと。

各国は2030年までの有人月面探査を目指す

民間企業ががんばっているなか、各国公式の様子を見ると、もう少し遠くを目指している模様。
ロシアは欧州と火星の生命探査を目的としたExoMars計画をスタートし、1回目の打ち上げを行った。また、ロシアは往年の名機ソユーズに変わる新型宇宙船の名称を「フィディラーツィヤ」に決定。4人乗りで月まで飛行が可能、2021年ごろの初打ち上げを目指す。
月へは欧州宇宙機関も2030年までに宇宙飛行士を送り込むと発表しており、60年ぶりに月面に人が立つかも。ちなみに2030年といえばナイジェリアもそれまでの有人宇宙飛行を計画。日本はまだやらないのかなあ。

中国は2018年の月裏側探査を宣言。月の裏側の本格調査は実は人類初となる。中国は2020年以降の早期での有人月面探査にも言及した。中国は2020年完成に向けて着々と宇宙基地建設を進めており、宇宙でのプレゼンスが高まっている。

100年越しの重力波発見、第9惑星も

宇宙に関しては大きな発見の相次いだ3ヶ月だった。1916年のアインシュタインによる予言から100年、ついに重力波が観測された。これが何に役立つのか見当もつかないところがこの発見の先進性を物語る。万物理論が予想より早く教科書に載るかも。発見では太陽系第9惑星の発見も大きなニュース。宇宙のニュースを見てると太陽系なんて庭のように感じちゃうけど、なかなかどうして、やっぱり宇宙は広いです。

そのころインドでは隕石落下による史上初の死者が出ていた。インド人もびっくり、とか言ってられないですよね。ご冥福を祈ります。


7.中国1984と日本のオープンサイエンス推進、ムーアの法則は終焉か

宇宙への野心を隠さぬ中国だが、内政統治にも手を抜かない。6億8000万人と人口の半数がネットユーザとなった中国では、チャットアプリによる通貨交換や小額決済、音波支払いなど、日本よりも便利な世界が築かれている。そんななか政府はビッグデータ活用を謳っており、犯罪の未然逮捕プログラムを開発中とされている。

未来の犯罪が予測可能になったとしても、推定無罪の原則下では事前逮捕は避けられるべきで、思想を抱いた時点で取り締まられるような社会は危険、という話は何度か書いた。

けど迷いなく導入する中国はやっぱりさすが。中国の監視カメラネットワークは袖の下で回避できるという実態があるようだけど、人工知能による運用が始まればそれも難しくなるだろう。最先端テクノロジー×一党独裁のコラボレーションは世界初なので、どんな社会が現出するのか注目である。「上有政策、下有対策」の国で庶民はどう対策するのか、今後は13億とテクノロジーとの闘いになりそうだ。ちなみに犯罪予測システムは京都府警も導入予定

また、中国は3月より外国企業のコンテンツ配信を禁止するなど、コントロールも強化している。ただし、外国人にとって不自由に思われがちな中国のネット環境が本当に不自由かは議論があるところ。このあたりは次のまとめが参考になる。

第5期科学技術基本計画ではオープンサイエンスを推進

日本政府は第5期科学技術基本計画を策定。注目なのはオープンサイエンスの推進で、公的資金による研究データのオープン化方針が述べられている。外国に比べるとようやくといった感もあるが、研究が加速していくかも。

公的資金による研究成果については、その利活用を可能な限り拡大することを、我が国のオープンサイエンス推進の基本姿勢とする。その他の研究成果としての研究二次データについても、分野により研究データの保存と共有方法が異なることを念頭に置いた上で可能な範囲で公開する。

『第5期科学技術基本計画』より

また、国土地理院は日本全国の3次元データを試験公開。精細にいじれて面白そう。同様の試みはシンガポールも予定しており、全島の3Dモデル化を2018年までに計画している。いずれもぜひMinecraftのマップにして配布してほしい。

「ムーアの法則が終焉」は本当か

以上の変化のほか、日本でもビットコインが貨幣と認定されたり、eスポーツが本格化の兆しを見せるなど、ソフト面でのインターネット世界は止むことなく進化している。その一方でハード面では、インテルがムーアの法則の終了を宣言した。これが事実ならけっこう衝撃的なニュースだ。

これはムーアの法則の言う「18ヶ月ごとにトランジスタの集積度が倍」に追いつかなくなったことによる。ただし、ハードウェアの指数関数的進化が止まるかといえば、そこまでは言えないと思う。ムーアの法則を一般化したカーツワイルの法則によれば、「値段あたりの計算速度」は半導体よりはるかに昔の1900年から指数関数的成長が継続している。計算資源を半導体単体で考えるのではなく、たとえばクラウドも含めた郡体として測るなど、指標の変曲点に来ているのかもしれない。

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カーツワイルによれば指数関数的成長はデバイスを変え1900年から継続している

ハードウェアの進歩は続いていて、量子コンピュータ開発が引き続き進捗したほか、360TBの容量を詰め込める5Dデータストレージなんかも。あと変わったところでは、英国で使われている科学捜査用識別情報が組み込まれた「スマートウォーター」がすごかった。これは組成を変えることで100億通りの識別情報を持てる防犯用スプレー。吹きかけたものに固有の識別情報を付与できる。SF小説『know』に出てくる「情報材」のさきがけになるかな。


8.この3ヶ月で気になったおもしろガジェット・コンテンツたち

最後に、この3ヶ月に見かけた素敵なガジェットやコンテンツを3つ紹介。

見る回数によって内容が変わるマンガ

鏡月のプロモーションWeb漫画『ふんわり男』がすごかった。みる回数によって漫画の内容が変わっていき、その度に新たな視点が追加される。著者は『ソラニン』『おやすみプンプン』の浅野いにおで、漫画としてのクオリティももちろん高い。ほっこりできること間違いなしだけど笑える発見も用意されてる。こんな青春うらやましい。

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一見するとチャラ男とマジメな先輩のやりとりだが、読み返すと隠された秘密が明らかになる(画像:SUNTORY)

こうしたインタラクティブなWebコンテンツは今後も増えていくと予想され、仕掛けの1つとしてぜひチェックしておきたい。

空気から飲み水を充てんする自己充填ウォーターボトル

1時間持ち歩くだけで500mlの水を生成する自己充填ウォーターボトル「Fontus」がすごい。太陽電池とろ過フィルタからなる簡単な構造。無電力で水を収集する仕組みは以前紹介したけど、携帯可能なものも出てきた形だ。

日本の梅雨の時期に使うと一瞬で溜まりそう。干ばつ地域の水不足対策にも期待される。

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宙に浮く盆栽

最後に紹介するのは宙に浮く盆栽「Air Bonzsai」。そのまんまだけど何コレ超ほしい!磁石で浮く盆栽で、2月末にはkickstarterで80万ドルの資金調達に成功(達成度1000%)、注目を集めている。価格は200ドルと500ドルとがある様子。

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以上、2016年1月~3月におけるテクノロジー系ニュースについて、目立ったものを取り上げてみた。他にも興味深いニュースがいっぱいあったけど紹介しきれなかったので、そちらについては下記のまとめをご参照。

前回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.ブロックチェーン注目とサイバー紛争・ネット統制/2.AR・VRコンテンツと触覚/3.人工知能の感情理解と創作活動への進出/4.ドローン関連法整備と規制緩和/5.宇宙開発の民間シフトと自作レールガン/6.ゲノム編集と独自路線を行く中国/7.バッテリ残量問題解消と核融合

次回3ヶ月はこちらから。
1.超絶進化中のセキュリティ技術/2.VRとパラサイトヒューマン/3.モビリティが現実世界を闊歩する/4.人工知能の自動彩色・発明・DQN/5.バイオ技術がお前をライフハック(物理)する未来/6.先端デバイスと食品や人体を刷れる3Dプリンタ/7.宇宙開発ベンチャー躍進と深宇宙探査の本格化

 

ルサンチマン(1) (ビッグコミックス) 一九八四年 ハヤカワepi文庫 ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

 

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