アメリカを中心に開発が進むレーザー兵器の種類(地上・空・対衛星)

ついにレーザー兵器が実践投入とのことでドキドキしてます。

米海軍幹部は11日までに、戦闘艦船に初めてレーザー兵器を搭載する計画を明らかにした。輸送揚陸艦ポンスに2014年初期に配備する見通し。(中略)
関連データを控えめに分析した場合、レーザー光線の1回の発射は1ドル以下になるとし、ミサイル1発の発射費用数十万ドルと比べ相当な低価であることを主張した。(中略)
国防総省当局者は、レーザー兵器は艦上改造など特別な処置は必要とせず、多種の艦船上への配備が可能とも指摘。

米海軍、「レーザー兵器」を艦船に初搭載へ 中東に配備か(CNN.co.jp,2013/4/11)

無人機を撃墜する動画はこちら。

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米海軍としては、もともとはメガワット級の出力をもつ自由電子レーザー(FEL)を搭載する構想だったそうです。これだと6メートル鋼板が1秒で貫けるとか。しかし発電能力など課題があり、今回は100kW級固体レーザーの搭載となったようです。

今回は、こうしたレーザー兵器の種類について簡単に調べてみました。
本当は上の記事から想像して、射程とか、照射時間とか、衛星攻撃できるのかとか、色々考察してみたかったのですが。調べるとけっこうな技術が実現してて、単なる紹介記事になっちゃいました。ゴキブリラジコンに引き続き、現実はすごいなと思いました。

原理的なところはこちらも参考になりました。

 

地上配備型レーザー兵器

まずは地上に据え置かれたり、車両に搭載されるものから。

戦術高エネルギーレーザー兵器(THEL:Tactical High Energy Laser)

Wikipediaによる記述をまとめると次の通り。

  • アメリカがイスラエルと1996年から共同開発する対空兵器で、2016年実戦配備予定
  • 中赤外域波長を用いたフッ化重水素化学レーザーを使用
  • 短距離から中距離での使用を想定しており、5kmでの迎撃率100%を目指す
  • 実績としてカチューシャのロケット弾や砲弾、迫撃砲の撃墜にも成功している
  • 1迎撃あたりコストは$3000、トレーラー3台分ほどのサイズとし、移動できるようにする
  • 主契約主はノースロップ・グラマン

「米軍が進める、各種のレーザー兵器プロジェクト」(WIRED japan,2008/9/1)でも同様の記述があって、グラマンとボーイングとで開発競争しているようですね。ボーイングでは35トン級の重高機動戦術トラック(HEMTT:Heavy Expanded Mobility Tactical Truck)に載せることを目的としています。
射程5kmでロケット弾や迫撃砲弾を撃墜とのことなので、イスラエルで活躍中のミサイル迎撃システムのような用途を想定しているのでしょうか。

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THEL実証機(wikipedia)

トール(Thor)

wikipediaを抜粋。

  • イスラエルRafeal社開発の車載レーザー兵器で、レーザー照射することにより、路肩爆弾や不発弾を爆燃処理する
  • 700Wの空冷レーザー(波長域は不明)を用い、火器ステーション全体の重量は850kg

爆燃て言葉を初めて知ったんですけど、爆発よりも膨張速度の遅い燃焼現象をこう呼ぶのですね。

レーザー・ライフル

こちらは8km先の対象を撃つ「レーザー・ライフル」(WIRED japan,2007/8/1)で紹介されていました。
レーザーは実体弾を飛ばすものではないので、無限に使えるように思ってしまいがち。でも実際は稼動させるために膨大なエネルギーが必要で、弾数には制限があるようです。
出力を確保するため、装置の小型化も簡単ではなさそう。上述のThorや、次に述べるボーイングを改造したAL-1も、中々の大きさです。

その点このWIRED記事で紹介されるレーザー・ライフルは、高エネルギーを連続発振するのではなく、短距離パルスレーザーを採用しています。強力な衝撃波を狭い領域に絞って送ることで、必要なエネルギーを少なくしているとのこと。
レーザーを用いることの利点としては、長射程を直進できることの他、威力を致死・非致死と切り替えられる点が挙げられています。


空中配備型レーザー兵器

次に紹介するのは空中から発射される形態のレーザー兵器。

空中発射レーザー(ABL;Airborne Laser)

こちらもwikipediaから。

  • ボーイング747を改造した弾道ミサイル迎撃システムで、2011年に計画は中断されたが、技術開発は継続中
  • メガワット級酸素・ヨウ素化学レーザー(COIL)を搭載、この大きさは自動車6台を直列させた程度
  • スカッドミサイルのような戦術弾道ミサイルを加速段階で迎撃する
  • ただし中間段階や落下段階での迎撃は想定されておらず、発射地点から数百キロ以内にいなければならない
  • 低軌道衛星への攻撃も視野に入れられている
  • 一度の補給でできる連続射撃は40発

ミサイルの迎撃についても詳しく触れられていました。ミサイルを直接破壊するというよりは、ミサイル表面に熱を加えて表面を劣化させることで、飛行中の圧力による機能不全を起こさせるというものだそう。
すでに80年代にはこうした迎撃実験に成功しており、歴史の長いプロジェクトとなっています。

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AL-1(wikipedia)

見た目が普通の航空機というのがちょっとかわいいですね。
動画もありました。
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高度戦術レーザー兵器(ATL:Advanced Tactical Laser)

「米軍が進める、各種のレーザー兵器プロジェクト」(WIRED japan,2008/9/1)で触れられていました。詳しい情報はwikipedia(英語)に載っています。

  • AC-130攻撃機に搭載し、戦闘車両などを破壊することが想定され、2009年に46回のテストが行われた
  • 最小限の範囲に限定してダメージを与えることが目的
  • 100kW級の酸素・ヨウ素化学レーザー(COIL)を採用し、重量は5000~7000kg

攻撃の精度は結局は運用(使う人の使い方次第)だと思うのですが、多発している民間人の巻き添えといった悲劇が少なくなればいいですね。

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AC-130攻撃機(wikipedia)

衛星攻撃用レーザー兵器

レーザーの利点は直進性と長射程。それでは衛星も攻撃できるのか、と調べたところ、こちらもずいぶん古くから研究されていました。

中赤外線先進化学レーザー(MIRACL;Mid-Infrared Advanced Chemical Laser)

wikipediaによると次のような感じ。

  • 1997年の試射で、420kmの高度にあった米空軍人工衛星の無力化に成功
  • メガワット級のフッ化重水素化学レーザーを使用
  • ただし同時期に、人工衛星の無力化には30ワット程度の低出力レーザーでも可能だとわかった
  • このレーザーを小型化・移動可能化したものがTHEL(前述)

米国は1984年から、中国は2007年にミサイルによる衛星破壊を行いましたが、もうレーザーを使って十分に無力化できるんですね。
レーザーは曲げられないので地球の影にある衛星は狙えませんが、ボーイング改造のAL-1(前述)がメガワット、AC-130に搭載のATL(前述)で100kWの出力なので、これらを撃てば解決です。

ただし人工衛星の軌道は低軌道(国際宇宙ステーションとか)でも350kmから、静止軌道だと36,000kmにもなるので、射程が問題になりそうです。
地上からレーザーを撃つ場合には大気による光の吸収が1つめの課題です。これについては、大気の窓と呼ばれる特定の赤外波長域を用いることで、長距離への投射が可能。
すると次に問題になるのが精度でしょうか。軌道が計算で出せるは言え、1万キロ先の物体に当てるのはかなり際どそう。そうすると航空機よりも地上からの方が、固定されているので精度が出せそうです。

 
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ざっと調べたところでは以上でした。
レーザー兵器の開発は思ったよりも進んでいたというか、実戦配備されたくらいなので、もうレーザーの時代が来たと言っても過言ではないですね。(その割には米国・イスラエル以外の話を聞きませんが)
こうした兵器が実際には使われることがないよう祈りたいところです。
 

おまけ

レーザーではありませんが、記事を書いていたら「なんだ?レ、レーザーとでもいうのか?」というドズル中将の声が頭によぎったので、関連動画をひとつ紹介。太陽の光を集めて色々破壊する動画です。小さい装置(しかも大学生の手作り)でこの威力ですから、兵器に転用されたら恐ろしいなと思いました。

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最終兵器の夢――「平和のための戦争」とアメリカSFの想像力  レーザーはこうして生まれた
 

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