未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュース9選・第4回(2015年4月~6月)2/2

3ヶ月間で流れてきたテクノロジー系ニュースのまとめ第4回。2015年4月~6月のニュースから、未来に対して重要な影響のありそうなものをまとめてみた。
このうち情報技術、IoT、バイオ技術、エネルギー関連技術、そして先端材料・素材の5つについては、次の前半記事でまとめた。

後半記事ではこの続きから、ドローン、軍事技術、宇宙開発、ガジェットについてのニュースを紹介する。

Summary Note

1.世界の情報を絶賛整理中のGoogleが人工知能に見せた夢

2.独インダストリー4.0を契機に盛り上がりを見せるIoT

3.男同士で子作り、記憶操作、バイオプリント…、ヒトの可能性を押し拡げるバイオ技術

4.デバイス進化の自由度を広げる各種発電技術

5.未来の世界に影響を与える新素材たち

6.日本では規制気味だけど、世界では開発・利用が進むドローン

7.米軍開発のビックリドッキリ新兵器たち(新型ドローン、銃、透明スーツ)

8.レーザー照射によるデブリ除去で、宇宙旅行のリスクが低減

9.この3ヶ月でみかけたオモシロガジェットたち

 

6.日本では規制気味だけど、世界では開発・利用が進むドローン

昨今注目を集めるようになったドローン。日本は規制が少なく開発に有利な地域と言われていたのだけど、2015年4月の「官邸ドローン事件」で大きく風向きが変わってしまった。東京とかもう事実上飛ばせないよね。利活用の道が閉ざされないことを願うばかり。

それでも世界は動いている。例えば米当局による規制が懸念されていたAmazonのドローン宅配サービス「Amazon Prime Air」も、2016年には法整備が整いそうとのこと。

ドローンを利用したサービスを検討しているのは、もちろんAmazonに限られない。いくつか関連ニュースのリンクをまとめてみよう。
米国ベンチャー企業Matternetもドローン配送を計画しており、スイスで実証を予定。ペイロード1kgで20km飛ぶことができ、電子商取引の「ラストマイル」でのコスト解消を狙っている。

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Matternet社より、赤いボックス部分がペイロードの試作ドローン

中国では、世界シェア6割のDJIをはじめ、数百社のドローン新興企業を擁し、ドローン配送もすでに始まっている。最近ではカンニングを巡る争いにドローンが活用されている模様。上空500mを飛行し、周囲1kmを監視して、不正な通信を監視するというものだ(ドローンである必要あるのかな)。

その他には、ドローンの特性の活かせる分野として農業利用にも注目である。

こういう未来にはならないといいですね

ドローン開発とサービス

ドローンの要素技術もいくつかニュースがあったので、ついでにまとめてみたい。電池関するニュースが目立っていた。
コンスーマー向けのドローンは10分から30分程度しか飛ぶことができず、大きなネックになっている。これに対して、シンガポールのHorizon Unmanned Systems社が開発中のHycopterは、水素燃料電池を用いることで、4時間の飛行を実現するという。1kgのペイロードでも2時間半とのこと。年内に試作機の飛行試験を予定している。

また、日立マクセルもドローン向け電池開発を発表しており、航続時間延長が期待される。日立マクセルはドローンに対する非接触給電技術も開発していて、自動給電等が可能になるので、利便性が増しそうだ。

他には極小ドローンや、セキュリティ観点ではドローン探知システムなど、ドローン関連の開発は続いている。少し変わったところでは、ドローン向け気象予測サービスがあった。日本気象によるサービスで、10日先まで3時間刻みで、高度3000メートルまで提供するという。けっこうな高度。こういうとこにもビジネスチャンスあるのね。

ロボットの進化も著しい(おまけ)

無人機つながりで、最新ロボットについてもリンクだけ紹介。ナノマシン含めて、小型ロボットのニュースが相次いでいる。

要素技術では、ナイロン糸を使うことにより人工筋肉レベルの高い応答性を実現した、というニュースがあった。ディズニーが開発なところがおもしろい。

 

7.米軍開発のビックリドッキリ新兵器たち(新型ドローン、銃、透明スーツ)

民間利用のドローンが注目されているが、もともとドローンは兵器として開発されてきたものである。本家たる米軍での成果にも注目だ。また米軍は、ドローン以外にもビックリ兵器を開発しており、紹介したい。

F35が最後の有人戦闘機になる

米軍の無人機開発を追った『ロボット兵士の戦争』(2010)によれば、2008年時点で米軍が保有する無人機は5331機で、有人機の2倍となっていた(数字で見るロボット・無人兵器の普及状況(『ロボット兵士の戦争』書評 1/3)(希望は天上にあり,2013/7/8))。
米軍は引き続き航空兵器の無人化を進めており、F35が最後の有人戦闘機になる、という米海軍長官の発言もみられた。米軍開発のドローンで個人的にも注目なのは、射出型ドローンと「群」戦術だ。

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「群」戦術は、低コストなドローンの大量投入にあたり、ドローンをネットワーク化させて群行動をとらせ、効率的な飽和攻撃をしかけるものだ。ドローン戦術の教義として期待されており、上述のランチャー射出型ドローンLOCUSTは、チープな見た目とは裏腹に、驚異的な新兵器になるかもしれない。ドローンの群行動については次の記事でも紹介した。

米軍開発の新型ドローンはほかにも様々なタイプがある。昨年のニュースや、NASA開発のものも含まれるけど、リンクを紹介。

電磁パルス銃アタッチメントと誘導ライフル弾

米軍開発の新兵器はドローンだけではない。歩兵用のライフルでもイノベーションが起きている。

1つ目のニュースの電磁パルスガンは、電子機器を電気的に破壊するもの。映画『マトリックス』でセンチネルの動きを止めたりしたアレ。ドローンに対しても攻撃できるみたい。
既存の銃へのアタッチメントとして実現したところがすごい。弾丸を放たないので証拠が残らなさそうだが、そのうち一般人の手にも渡るようになって悪用されないかちょっと心配。

2つ目のニュースの誘導ライフル弾もビックリで、誘導ってミサイルの世界の話だと思ってたけど、ライフル弾でもいけるのね。弾丸自体がスラスターや制御機構を備えるとのことだけど、一体中身どうなってるんだろ。

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透明スーツの実現に秒読み

SF度の高い米軍兵器でさらに22世紀的なのが「透明スーツ」の開発だ。周囲の光を屈折させ、特定角度から装着者を見えなくするメタマテリアルについて、米軍要求仕様を満たすものが1年半以内にできるという。

ちなみに理研も理論実証を示している。

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理化学研究所HPより、これまでの光学迷彩と非対称光学迷彩の概念図

光学迷彩ってずっと未来の技術だと思ってたけど、もうすぐ実現しちゃうのね。ドラえもんが出してくれた「透明マント」は、ドラえもんの来た22世紀ではずいぶんレガシーな技術だったことになる。

 

8.レーザー照射によるデブリ除去で、宇宙旅行のリスクが低減

米軍の技術はずいぶんSF的だったけど、SFといえば宇宙開発分野も負けていない。
スペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去技術に関するニュースが気になった。軌道上から高強度レーザをデブリに照射し、デブリに推力を与えて地球に落とすというもので、理化学研究所の提案だ。広角望遠鏡と射程100kmの500kWレーザを組み合わせた構成で、5年間の運用でcmサイズのデブリの大部分を除去できるという。

軌道上を回る衛星のうち機能を停止したものは2600基あり、幅10センチ以上の衛星の破片は2万、それ以下では70万を超えるという。こうしたデブリが起こす重篤事故は、『プラネテス』『ムーンライト・マイル』『ゼロ・グラビティ』等、多くのSF作品の題材にもなっている。後述する宇宙旅行に対しても、デブリの存在は大きなリスクになってしまう。

大きなデブリを除去する方法としては、ゴミとなった衛星にテザーやソーラーセイルを取り付け移動させる方法が提案されている。一方、10センチ以下の小規模デブリに対しては、理化学研究所のレーザー照射法が有利だという。宇宙のごみ問題が顕在化する中、こうした解決方法が実行され、リスクが解消されることを願いたい。

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高度2000km以下を周回するスペースデブリの分布(wikipediaより)

気になる宇宙旅行の開発進捗

さて宇宙旅行に関しては、民間企業の躍進が続いている。イーロン・マスクのSpaceX社は、残念ながらFalcon9に関する失敗が続いてしまっているものの、今後も打ち上げは続くし、ジェフ・ベゾスのBlue Origin社にも注目だ。ここでは主なニュース記事のリンクだけ紹介。

打ち上げだけでなく、新しい宇宙船の開発や、火星探査・火星旅行のための研究開発も進捗している。WIREDの『火星へ「半分の時間」で行く方法』の記事では、太陽エネルギーを集めてイオンスラスターで推進する方法など、NASAによる技術探索が初会されている。

個人的には惑星協会のソーラーセイル展開に注目。ソーラーセイル自体は2010年にもJAXAがイカロスを打ち上げている。実証が進めば、宇宙ヨットの完成が見られるかもしれない。

最後に、日本の月面着陸計画のニュースも。平成30年度(2018年度)に、月面探査機SLIMをイプシロンで打ち上げるとのことで、待ち遠しいところ。

 

9.この3ヶ月でみかけたオモシロガジェットたち

最後に、この3ヶ月でみかけた素敵なガジェットを3つを紹介したい。

車輪の再発明

1つめはスポークのない自転車。スポークなし自転車タイヤは以前にも紹介されているものがあって、そちらも素晴らしかったけど、今回は別のタイプ。

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Loopwheels HPより

タイや内側のループによって対衝撃性に優れ、車いすなどで効果を発揮するという。何よりデザインがかっこいい。

手作りレーザー兵器

おつぎはDYI兵器の最新のもの。5Wのレーザダイオードを8つ合わせて40Wの出力を実現し、色々なものに火をつけている。サイコ感がたまらないっす。

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仮想空間に没入するためのキーとなる、触覚デバイス

バーチャルリアリティの普及に伴い、触覚デバイスの開発が進んでいる。例えば空気圧で指先に触感を伝えるゲーム用グローブが発表されていた。そんな触覚デバイスの中でも一歩抜きんでているのが、電気通信大学による発明だ。

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花沢健吾のマンガ『ルサンチマン』では近未来のアダルトゲームが描かれており、同様の触覚デバイスも重要な役割を果たしているような、いないような感じだった。これが本当に現実になるとは思わなかった。

VHSのような記録デバイスもそうだったけど、技術が普及することの一翼を担うのがアダルトであることは間違いない。今後の開発もぜひ応援したい。

 

2015年4月~6月の注目テクノロジー系ニュースは以上の通り。私としては、Google人工知能の描いた夢がショッキングだったかな。ドローンについては、日本では風向きが悪いものの、世界では製品・サービスの開発が進んでいる。IoTと併せて、今後も注目を続けていきたいと思う。

今回の9つのニュースのうち、前半部分の紹介はこちらから。

TwitterのTLに流れてたニュースのまとめはこちらから。

次回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.宇宙産レタスとウィスキー、火星の水の発見/2.MegaBot2から挑戦は米国との総力戦/3.ドローン軍事利用とドローンキラー/4.りんなちゃんはこれから進化し人間とチームを作る/5.AR/VRコンテンツのコラボレーションに期待/6.再生・培養される「男性」と脳/7.進化を続ける3Dプリント可能な材料・構造/8.おもしろガジェットたち

前回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.ビッグデータによる「未来」「デジタル人格」構築/2.電王戦人間勝利と人工知能の感情獲得/3.進化するロボットと自動運転車/4.Falcon9着陸実験と宇宙インターネット・ワイヤレス送電/5.レーザー兵器とレールガン/6.医療技術と自己診断サービス/7.環境技術/8.量子論研究の重大な成果/番外1.パワードスーツ・インプランタブルデバイス/番外2.ドローン規制と活用

 

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