内発的動機付けから予測する2044年の労働

いなたくんへ

ディープラーニングに代表されるAIブーム(第三次)は、例えばガートナーの『先進テクノロジのハイプサイクル』をみても社会普及の段階に入り、話題としてはひと段落した感がある。

AIの普及に伴い脅威視されるのが「AIが人間から職を奪う」という未来だ。未来予測に定評のある理論物理学者ミチオ・カクは「パターン認識を必要とする仕事」「人間関係を扱う仕事」「創造的労働やリーダーシップ」は人の手に残ると予想したが、さっそくパターン認識はAIが人を凌駕してしまった。

ベストセラー『人工知能と経済の未来』(2017)では、AIに代替困難な領域として「クリエイティブ」「マネジメント」「ホスピタリティ」の3つを挙げるものの、AIがいわゆる「心の理論」を獲得しうる可能性もあり、油断はできない。

AIのおかげで新たに生まれる仕事もあるはずだけど、現在のAIの普及状況やAIの指数関数的進化を考えると、「人間にしかできない仕事」がどこまで残るかは懐疑的だと私は思う。

そんな未来の仕事であるが、今回は別のアプローチから予想してみた。「その仕事が機械により代替可能か」という視点ではなく、「機械に代替可能であるとしてもなお人間がやる仕事は何か」という問いである。

ユートピアな予想のひとつに、機械が自己再生産能力を持つに至り、ベーシック・インカムのようなものが導入され、人は働かなくてもよくなるというビジョンある。しかし仮にそのような未来が訪れたとしても、人はなお働くかもしれない。そのとき人を突き動かすものは何か。

Summary Note

AIによる資本主義終焉と、創造性の時代(前フリ)

MBTIに基づく16の価値観

INTP(戦略家/論理学者)型の内発動機と未来の労働

ESFJ(社交家/領事官)型の内発動機と未来の労働


AIによる資本主義終焉と、創造性の時代(前フリ)

極端な未来を考えてみる。AIやロボットが十分な生産性を獲得し、人類が必要とする生産量を担保することで、人間自身は労働をせずとも成立する社会だ。そのような未来においては、ロボットの生産物はベーシック・インカムのような形で人に配分され、資本主義は終焉する。

しかし仮にこのような社会が実現しても、人間はなお労働をやめないかもしれない。この時代における「労働」とは、いわゆる「資本家に雇用される形での労働力の提供」ではなく、現在も非賃金労働として行われる家庭内での活動、地域のための活動、そして自分のため労働となる。

人間が働く必要がなくなる、というのはもちろん「極端な」予想だけど、仮にそうなったとしても、なお人間には活動の余地が残される。その動機となるのが「内発的動機付け」だ。

2044年に重要になる「創造性」

いくつかの予想が、次なる時代のキーワードとして「創造性」を挙げている。

例えばオハイオ州立大学のリズ・サンダース准教授は、「デザイン思考」の次のデザイン手法として「Co-Design」を挙げている。これは「当事者デザイン」とも訳され、デザインの主体が開発者からユーザ自身に移っていく、という考え方だ。リズ・サンダースはこれを2044年とおいている。

この時代の人々の役割が「創造する生活者」である。


日本デザイン学会討論会補足資料『当事者デザインを巡る枠組みについて』(2017)より抜粋引用

背景にはインターネットの登場がある。それまで出会うことのなかった小さな需要と小さな供給がマッチングされ、需給一致の機会が増えた。また、消費者のニーズは多様化・細分化され、企業が一方的に大量生産品を売るのではく、ユーザと共創しての価値創造が求められるようになっている。これがさらに進み、ユーザ自身が価値創造者になるのが「Co-Design」の時代である。

ところで「創造性」って何よ

「創造性」は狭義には「より遠いもの同士を結びつける能力」と定義されることがある。これは「拡散的思考」と呼ばれる。詩人は遠い言葉同士を結び付けて価値を生み、優れた発明家やイノベーターは技術と技術、人と人とを結びつけて世界を変える。

ただし、次の時代において重要とされる「創造性」は、もう少し広義の意味となるだろう。その答えとなるのが、先に触れた「内発的動機付け」だ。「内発的動機」とは、金銭などの外的報酬ではなく、「その活動を自分がやりたいからやる」という動機である。

ユーザ自身が共創的に価値創造を担う場合、生まれる価値は当該ユーザ周辺の問題を解決したり、あるいはユーザ自身の内的創意から顕れてくる。

テクノロジーの発展により、物を具現化するハードルや、アイディアを必要な誰かに伝えるコストが下がっている。このおかげで「自分がやりたいからやる活動」が価値として交換容易になっていく。

そのような未来においては、自分がやりたいことを自覚し、その強みを生かすことこそ、創造性の向上に繋がり、より大きな価値を生む可能性がある。

そしてさらに時代が進み、AIやロボットが全ての人間の労働を代替可能になったとしても、人間自身が「やりたいからやる」活動は失われない。

前フリが長くなった(ここまでが前フリでした)。
それでは、未来における「内発的動機に基づく労働」とはどのようなものになるだろう。さらに具体的に考えてみる。


MBTIに基づく16の価値観

一口に「内発的動機」といっても、それは人により様々であるはずだ。人は多様であり、多様であるからこそ比較優位が生まれ、価値の交換が成立する。

内発動機の多様性を類型化して理解するため、ここではパーソナリティ理論を参照してみる。パーソナリティ理論とは、人のパーソナリティをいくつかの評価軸に写像し、特性や類型を定義したものである。統計的有意性が担保された性格診断、と考えればわかりやすい。

パーソナリティ理論ではビッグファイブ理論が有名だが、今回はMBTIを参照する。というのも、MBTIに基づく適職を整理したポール・D・ティーガー/バーバラ・バロン著『あなたの天職がわかる16の性格』(2016)がすごく使いやすかったのよね。

MBTIとは

MBTI(Mayers-Briggs Type Indicator)とは、日本MBTI協会によれば、ユングのタイプ論をもとにした国際規格に基づく性格検査手法であり、「個人一人ひとりが、自分の心を理解し、自分をより生かすための座標軸」と説明される。

評価軸は次の4つだ。

  • 外向(E)/内向(I):他人といるか独りでいるか、どちらが元気が出るか
  • 五感(S)/直観(N):五感(現在)と第六感(将来)のどちらに注意を払うか
  • 思考(T)/情緒(F):決断にあたり感情を優先するか否か
  • 決断(J)/柔軟(P):早めに決断するか、情報を取り入れてから決断するか

そしてこれらの組み合わせにより、16種類の性格タイプに分類される。

『16 Personalities』

モノは試しで、実際に診断を受けるとわかりやすい。次のサイトではMBTIに基づく分類診断が無料でできる。Web上で質問に答えていくだけ。

『16 Personalitis』の診断では、16の分類それぞれにタイトルがつく。例えば次の診断結果はINTJ(内向・直観・思考・決断)型の例だが、タイトルは「建築家」となっている。

診断結果では性格の詳細のほか、同じ分類の有名人も提示されておもしろい。「建築家」型の有名人はクリストファー・ノーランやイーロン・マスク、ウラジミール・プーチンなど。

16のタイトルは目標や興味、優先行動に基づき4つの役割(分析家/外交官/探検家/番人)に大別され、さらに価値観に基づき4つのタイトルに分類される。併せて16分類となる。

  • 分析家 …建築家・論理学者・指揮官・討論者
  • 外交官 …提唱者・仲介者・主人公・広報活動家
  • 探検家 …巨匠・冒険家・企業家・エンターテイナー
  • 番人  …管理者・擁護者・幹部・領事官

なお、『あなたの天職がわかる~』でも同じようなタイトル付けがされているが、『16 Parsonalities』とは名称は異なっている。


INTP(戦略家/論理学者)型の内発動機と未来の労働

では『あなたの天職がわかる~』の記載に基づき、性格タイプ毎の内発動機を確かめてみる。

ここでは例としてINTP型を選んでみた。INTP型は『あなたの~』では「戦略家」と呼ばれる。『16 Personalities』では「論理学者」というタイトルがつけられていた。

  • I(内向)…独りでいると元気が出る
  • N(直観)…第六感や将来のことに注意を払う
  • T(思考)…感情よりも論理を優先して判断する
  • P(柔軟)…即断せず、情報を集めてから判断する

INTP型の性格

『あなたの~』によれば、INTP型は端的には「完全無欠を求める人」「独創的に問題を解決する人」と表現され、キーワードとして「独創性」「理論」「秩序」「完璧」「分析力」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • 物事の本質を見極めたり、難しい概念上の問題を考えたりするのが得意
  • 一見物静かで控えめで、超然としているが、頭の中では問題を常に分析している
  • 自分の考えを整理し、秩序だったものにするために、原理や原則を見つけたい、活用したいと思っている
  • もっと才能を伸ばしたい、同じように有能な相手と切磋琢磨したいと思っている
  • 既存の者や確立されたものではなく、可能性や将来性といったものに惹かれる
  • 現在の状況を改善したり、難問を解決したりして、新たなモデルを作りたいという強い情熱がある
  • 複雑な問題について、ああでもないこうでもないとじっくり考えるのが好き
  • 人と接しているときよりは、頭の中でアイディアや概念をひねくり回しているときの方が幸せ
  • 出来れば一人で独立して働きたいという意志が強い

また、短所として例えば以下が挙げられていた

  • 論理的分析に夢中になりすぎるとこがあり、他人が重視しているものを見過ごしがち
  • 他人の意見に少しでも論理的でない部分があると許せないのと同様に、自分の考え方にも論理的ではない部分があると、かえりみようとしない
  • ひとつでも間違いや欠点があると、そこばかり気になってしまい、プロジェクト全体を最後までやり遂げることができない
  • 決まりきったルーチンワークは苦手

INTP型の適職

今回MBTI法を選んだ理由は、『あなたの~』が各性格タイプに適した職業を挙げてくれていたためだ。特にありがたかったのが、単に職業名を挙げるだけでなく、職域ごとになぜその職が向くのか、どのような働き方をすると強みが生きるのか、という観点で説明されていた点だった。

INTP型の場合、以下のような職域が適する。

コンピュータ/テクノロジー

  • 問題を分析し、革新的な解決策を提案するという、最も得意とする作業ができる
  • 全体像を見る力があるうえ、その製品やサービス、システムなどが産業界全体の中で、あるいは会社全体の中でどのような地位を占めているのか、うまく適応できるのかといった分析ができる点で向く

健康・医療/テクノロジー

  • すぐれた推測力と、技術を擁する危機を手際よく扱える能力とを発揮できる
  • ある程度の危険を冒す度量も求められるので向く
  • 知的で才能ある人たちのグループに所属しながら、基本的に一人で研究作業を進めることができるので向く

専門職/ビジネス

  • 複雑な問題を分析したり解決したりする機会があるのでやりがいを覚える
  • 建築士や心理学者など創造性を発揮できる仕事も魅力的
  • 物事の全体像をみたり、将来性を予測するのも得意なので、経済学や金融分野でも活躍する

学術

  • 常に何かを探求し、新たな方法を模索するところが性に合っている
  • ひとりでコツコツ研究できる仕事も好む

クリエイティブ

  • 独創的なものを新たに作り出せるところが魅力的
  • 様々な人たちと、多様な手段を駆使して物を作っていく過程を好む

INTP型の未来の労働

INTP型の性格の特徴、すなわち内発的動機と、それが活きる環境は、概ね以上の整理を見れば明らかだろう。そして、未来における労働、すなわち価値創造が内発的動機に基づくものとなるならば、以上の特性に沿った労働が「未来にあり得る仕事の姿」ということになる。

例えばINTP型の場合、次のような労働が想定される

  • 対象の全体像をみて問題分析を行い、独創的な解決策を提案する
  • 知的な少数の人からなるグループに属し、深い探求の上で創造性を発揮する
  • 様々な知見を集めて、新奇な概念の発見や成果物の提示を行う(その過程を楽しむ)

かなり抽象的なので、これが本稿の掘り下げる「未来の仕事」の結論と言われるとガッカリされるかもだけど、労働の要件としてはこうなる。INTP型にとってこのような活動は、究極的にはAIやロボットにより完全に代替可能であったとしても、自発的に行われることになる。

「やりたいことだから価値がある」わけではないが

もちろん、こうした「INTP型がやりたい活動」が「市場価値を持つ活動」であるかは別問題だ。努力したぶん報われる、というのは労働価値説的見地であるが、実際には労働の対価は「受け手が喜ぶかどうか」により決まる。つまり価値の多寡は市場に委ねられる。よって、INTP型にとって上述の活動が心地よくとも、それを市場が価値として認めるとは限らない。

しかし、これは繰り返しになるけど、市場のニーズが多様化し、テクノロジーが小さな需給を一致させるようになれば、「やりたいこと」の結果が価値として認められる機会は増える。それが「Co-Design」の時代であり、消費者自身の創造性が重要になる時代の特徴である。

さらにはAIやロボットの生産が人類の生活を担保したとき、INTP型はより身近な対象に絞って、具体的には家庭や、地域や、あるいは自分のために、上述の活動を行うだろう。もちろんそのような時代の「労働」とは、もはや市場への労働力の提供ではなく、より広義に「人間の生活」そのものを指すようになる。


ESFJ(社交家/領事官)型の内発動機と未来の労働

せっかくなのでもう一例挙げてみる。今度はINTP型の逆となるESFJ型を見てみよう。ESFJ型は『あなたの~』では「社交家」と呼ばれる。『16 Personalities』では「領事官」というタイトルがつけられていた。

  • E(外向)…他人といると元気が出る
  • S(五感)…五感や現在のことに注意を払う
  • F(情緒)…論理よりも感情を優先して判断する
  • J(決断)…すぐに判断を行う

ESFJ型の性格

『あなたの~』によれば、ESFJP型は端的には「人の役に立ち感謝されたい人」「思いやりに溢れた社交的な人」と表現され、キーワードとして「良い人間関係」「評価」「事実」「忠誠心」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • 相手と直接かかわり、協力したい
  • 調和のある人間関係を築きたい
  • 親しみやすく、思いやりがあり、愛想がよく、他人を喜ばせたいという意気込みが強く、話し好き
  • 人の力になるため、面倒なこともいとわない
  • 他人から評価されたい、自分がこれだけ尽くしていることを認められたい
  • 他人から批判されたり、無関心な態度を取られると傷つく
  • あくまでも事実を重視し、秩序を好み、他人にも事実を重視してほしいと思っている
  • 五感を通じて物事を感じる
  • 誠実で伝統を重んじる

また、短所として例えば以下が挙げられていた

  • 対立を避けようとし、相手の意見や感情を重視しすぎる
  • 人間関係で緊張が続いたり、傷つくと、状況を現実的に直視できなくなる
  • 何かを頼まれたときに拒絶したり、自分から支援を求めることができない
  • 性急に決断を下す傾向がある

ESFJ型の適職

INTP型の場合、以下のような職域が適する。

健康・医療

  • 直接人と関わり、人の力になる能力を発揮できるので向く
  • 患者や同僚との間に強い絆が生まれ、それを維持できるため、やりがいを感じる

教育

  • 相手ときちんと関り、自分の経験から教えることに関心がるため向く
  • 子どもたちと直接触れ合う機会があることが魅力
  • 学校という安定した体制に身を置けるのも魅力

社会福祉/カウンセリング

  • 地域のために貢献でき魅力
  • 個人や家族が問題を克服する力となれる社会の一員であろうとする
  • カウンセリング、宗教教育、聖職も、相手の心を深く探りながら力になれるので向く

セールス/サービス

  • 人と直接かかわり、生活を楽しいものにしたり、ストレスを軽減する役に立てるのでやりがいを感じる
  • トラブルが起こったり、危機に直面したとき、詳細まで気を配り、状況に対処できる
  • 葬祭を司る仕事では、人の感情を敏感に感じ取りつつ仕事を進める必要があり向く
  • 客室乗務員として旅を楽しみ、様々な人たちと触れ合うことにもやりがいを感じる
  • レストランやホテルでは愛想よく温かいもてなしをすることができる

ESFJ型の未来の労働

ESFJ型はとにかく他者と関り、他者のために尽くしたい性格であり、人から好かれやすいタイプでもある。

「身体性」や「感情」は現行のAIには苦手な分野だが、未来においては克服し、人間以上に人間を理解し、温かく接するかもしれない。しかしそうなったとしても、ESFJ型の人は自ら他者と関り、他者のための活動を行う。そしてそれは受け手にとっても嬉しい話であるはずだ。

したがって、AIの進化や、その普及状況に関わらず、ESFJ型が得意とする仕事は残る。というか、対価があろうとなかろうと、そのような活動はなされる。


まとめ

以上、「AIに代替可能であるとしてもなお人間がやる仕事は何か」という観点で、未来の労働を考えてみた。ちょっと抽象度高い結論になったので、期待外れだったらゴメン。ホントはもう少し具体的な職業とかに落とし込みたかったんだけど、今回はこんな感じで勘弁。でも要件は出せたと思う。

現在のAIブーム(第三次)はひと段落かもしれないけれど、次のブレイクスルーも必ず起きて、機械は人間らしく進化し、人間の能力を代替していくだろう。それに合わせて、人間が使うツールは変化し、さらには市場で流通する労働も変わっていく。

しかしそれでも人間の行動原理は変わらず、特に内発的動機に基づく活動は価値として認められ、あるいは市場価値がなくとも行われていくことになる。

イイハナシダナー。
おしまい。

ホントにそんなユートピアが実現するのか?

さて今回の記事は以上でおしまいなんだけど、ここから次の話題に移りたい。

以上の結論は、次の2段階の未来予測を前提とした。

  • テクノロジーの発展により、「やりたいこと」を市場価値に換えるハードルが下がっていく
  • AIやロボットが十分な生産能力を獲得し、人間は労働せずとも生活できるようになる

私はこれら2つの予想を信じているが、問題は時間軸だ。特に1つめの予想。労働の多様性が今後も拡大するとしても、それ以上に速いスピードでAIやロボットの能力が向上すれば、やはり人間の労働機会は奪われてしまう。

そしてそれは、パーソナリティ特性により差がある可能性がある。MBTI法においては特にIST(内向・五感・思考)を含む型、「ISTJ(努力家/管理者)」や「ISTP(実務家/巨匠)」が危なそうだと思っている。これについて次回述べたい。

 

  

 

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