パーソナリティ特性から見る、AIにより失職する人・しない人

いなたくんへ

AIの発展と普及により「AIに仕事を奪われる」論がまことしやかに語られている。『人工知能と経済の未来』(2017)では過去の技術革新を顧み、「新しい技術は多くの場合、ある職業を根こそぎ消滅させるよりも、雇用を一定程度減少させる」と指摘する。

もっともこれは一時的な現象であって、その後には新たな職業が生まれるとされる。が、人工知能の場合はホワイトカラーの仕事を奪う可能性が高く、人間にしかできない「次の仕事」がまだ不透明であるため、不安が拭えずにいるのだろう。

このとき、AIにより奪われやすい仕事と、そうでない仕事とあるはずだけど、その差について、パーソナリティ理論から説明できるかもしれない。特にヤバそうなのが、「内向」「五感」「思考」タイプの性格因子に関する仕事だ。逆にこの反対となる「外向」「直観」「情緒」に関する仕事は、しばらくは安泰である可能性がある。

これについて整理してみた。

Summary Note

AIが進化しても内発的動機に基づく労働は残る…のか?

「I(内向)」「S(五感)」「T(思考)」因子の仕事がやばい

ISTJ(努力家/管理者)型の特徴とAIの特徴

ENFP(創作者/広報運動家)型の特徴とAIの課題


AIが進化しても内発的動機に基づく労働は残る…のか?

『人工知能と経済の未来』では、特に「強いAI」が実現したとき、機械による自己再生産が可能になると指摘する。これはこれまでの技術革新との本質的な違いであり、産業革命以来の第二の「大分岐」をもたらし、資本主義を終焉させる。

AIやロボットが人間の能力を完全に代替可能となる、というのは極端な未来像だが、仮にそうなってもなお、人間は何かしらの活動を行うだろう。その活動は「内発的動機」と呼ばれる、「やりたいからやる」という動機に基づくものとなる。

インターネットがいま様々な「小さな仕事」「多様な働き方」を成立させ、なお拡大を続けるように、テクノロジーの発展は「やりたいこと」を仕事にできる機会を増やしていく。
未来においてはそうした内発的動機に基づく活動が重要になり、労働として成り立っていく。

内発的動機は人により様々であるところ、パーソナリティ理論のひとつであるMBTI法を参考に、前回記事では未来の労働を予想してみた。

その結論は抽象的なものとなったが、各々のパーソナリティ特性により「やりがい」や「向く活動」は違っていて、個性に適した労働は価値を認められやすく、かつ自発的に行われるため、それが未来の労働となる。

本当にそうなの?

以上のユートピアな結論は、次の点を前提としている。

  • テクノロジーの発展により「やりたいこと」を市場価値に換えるハードルが下がっていく

しかしながら、それ以上に速いスピードでAIの能力が向上したらどうなるだろう。「やりたいこと」が価値になり易くなるとは言え、機会の労働がそれより安価となれば、やはり仕事としては成立しない。

このとき、「AIに奪われる仕事」と「そうでない仕事」とあるはずだけど、私はこれもパーソナリティ特性により説明できる気がしている。


「I(内向)」「S(五感)」「T(思考)」因子の仕事がやばい

前回紹介した通り、MBTI法はパーソナリティ理論の1つであり、次の4つの評価軸に基づき、人を16タイプに分類する。

  • 外向(E)/内向(I):他人といるか独りでいるか、どちらが元気が出るか
  • 五感(S)/直観(N):五感(現在)と第六感(将来)のどちらに注意を払うか
  • 思考(T)/情緒(F):決断にあたり感情を優先するか否か
  • 決断(J)/柔軟(P):早めに決断するか、情報を取り入れてから決断するか

前回はMBTI法に基づく適職のあり方を整理した『あなたの天職がわかる16の性格』(2016)を参考に、具体的な性格タイプを例にして、未来の労働の要件を挙げてみた。

16タイプそれぞれの「適職」を眺めてみると、どうもAIに代替されやすそうな人と、そうでない人とが見えてくる。特に気になるのがIST因子を持つ人で、典型的にはISTJ型(「努力家」、16 Personalitiesの分類では「管理者」)とISTP型(「実務家」、16 Personalitiesの分類では「巨匠」)がこれに当たる。

なぜIST因子なのか

なぜIST因子がヤバそうかといえば、それは深層学習を発端とする第三次ブーム人工知能の特性と重複するためである。

現在のAIの能力をMBTI法に当てはめるとわかりやすい。MBTIの評価軸について、現在の人工知能は次のように特定できる。

  • 内向(I)…他者との対話ではなく自己完結して動く(機械なので当然)
  • 五感(S)…大量のデータに基づき判断を行う
  • 思考(T)…判断は情緒ではなく、論理により行う

このようにISTを含むタイプの人は、AIと能力が被る可能性があるのである。

ところで現行AIは「五感」型が「直観」型か

なおMBTI法の「五感/直観」の分類について、「五感(S)」ではなく「直観(N)」が正しいのでは、という指摘もあるだろう。なぜなら、現行AIの特徴は「ブラックボックス処理に基づく直観」と説明されることがあるからだ。

ただMBTI法の「五感/直観」の軸は「判断の根拠として何を注視するか」を問題にしており、データに立脚したデータドリブンの処理を行うAIは、ここでは「直観」ではなく「五感」とするのが適切と思う。

さらに言えば、MBTI法の「五感/直観」軸は、より高次の「意思決定」とか「発想」のフェイズの話であって、これは現行AIのフレームを超えた領域である。

ということで、現行AIは処理アルゴリズムとしては「直観」と表現されることがあるけど、MBTI法の分類においては「五感(S)」を採用する。


ISTJ(努力家/管理者)型の特徴とAIの特徴

それでは『あなたの天職がわかる16の性格』を参考に、ISTを含むタイプの適職を確かめてみる。

今回は「努力家」と呼ばれる、ISTJ型を選んでみた。ISTJ型は『16 Personalities』の分類では「管理者」とも呼ばれ、人類の中で最も多く、13%の人がこのタイプであるとされる。

ISTJ型の性格

『あなたの~』によれば、ISTJ型は端的には「ひとりでコツコツ努力する人」「時間をかけて正しいことをする人」と表現され、キーワードとして「責任感」「信念」「集中力」「几帳面」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • まじめで、責任感が強く、分別があり、信念が強い
  • 自分が言ったことに対して責任を持つ
  • 労を惜しまずに正確を期し、規律正しく、大いなる集中力を発揮する
  • なんでも整然と行い、信頼がおける
  • いったん活動を始めたら、決して途中で投げ出したり、挫折したりしない
  • 実践的な判断を下す
  • 詳細を驚くほど記憶している
  • 論理を重んじ、私情を交えず分析し、順序だてて物事を行い、予定通りに計画を実行する
  • 事実だけを述べ、几帳面
  • 事実に基づいた明確な物事を好み、話をするときは明確に内容を伝える
  • 感情を滅多に表そうとはしない

また、短所として例えば以下が挙げられていた。

  • 熱中すると自分とは違う意見を受け入れられず、即座に結果が出なかったり、実践的な応用が利かなかったりするものを疑ってかかる傾向にある
  • 他人が必要としているものを理解できないことがある
  • 自分の判断を他人に押し付ける危険があり、あまり強く自己主張しない人たちの気持ちを踏みにじることもある

ISTJ型の適職

INTP型の場合、以下のような職域が適する。

ビジネス

  • 運営や管理業務が得意
  • システムを運営し、物事が円滑に進むよう維持する才能がある
  • 昔ながらの伝統的な手法や組織を好み、自分の努力により状況が安定するとやりがいを感じる
  • 有能なマネージャーであり、組織のために与えられた仕事をまっとうしようとする

サービス

  • 人の生活に役立つシステムを維持する役割を好む
  • データや事実に基づき実践的な判断を下せる

金融

  • 数字に強い人が多いため向く
  • ひとりで働く機会が多く、データや正確性が求められる点も向く
  • 労を惜しまず働き、細部まで正確にやり抜く

法律/テクノロジー

  • 自分の技能を活かせ、正確性が求められるため向く
  • 欠陥や見落としを許さず、必要な手順を踏み、誠意をもってシステムを維持しようとする

健康・医療

  • 患者の状態に注意を払い、実践的に役立とうとし、誠意を持って働き、責任を全うしようとする

言いにくいんだけどこの特徴は……

なんかISTJ型の人をディスるみたいになったら申し訳ないんだけど(そのつもりは本当にないのだけど)、「記憶力がある」「物事を正確に行う」「データや数字に強い」という特徴は、機械にも得意な領域なんだよね。AIやツールによっても代替しやすそう、と思われるのはそのためだ。

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もちろん、ISTJ型の人が担う仕事が、ただちに機械に置き換え可能であるとは思わない。現行AIは実際にはそこまでの性能は出ないし、仮にAIの能力が伸長したとしても、さらに上位のフレームで人が行うべき仕事はあるからだ。

また、ISTJ型の場合、「責任感」や「誠意」もAIに対しての強みとなるだろう。従来の慣習を重視するISTJ型は、きちんとした「常識」を持つ。「常識」や「現実接地」は現行AIの弱みであるとともに、やはり機械ではなく人間を信頼したい、という需要は未来においても残るはずだ。

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他の性格タイプとの相対評価で言えば、ISTJ型の人はAIと比較的近い位置にいる、という可能性は否定しにくい。
では、ISTJ型の反対となるENFP型だとどうだろう。


ENFP(創作者/広報運動家)型の特徴とAIの課題

ENFP型は『あなたの天職がわかる16の性格』では「創作者」と呼ばれる。『16 Personalities』では「広報運動家」というタイトルがつけられていた。

  • E(外向)…他人といると元気が出る
  • N(直観)…第六感や将来のことに注意を払う
  • F(情緒)…論理よりも感情を優先して判断する
  • P(柔軟)…即断せず、情報を集めてから判断する

ENFP型の性格

『あなたの~』によれば、ENFP型は端的には「可能性を追求する人」「好奇心の塊の名交渉役」と表現され、キーワードとして「ひらめき」「活力」「自然体」「想像力」が挙げられる。

その特徴は例えば以下のようなものである。

  • 楽観的で、自然体でのびのびしており、自信をみなぎらせている
  • 熱意に溢れており、いつも新しいアイディアを思いついている
  • なによりひらめきを重視し、独創的な発明や発案をすることも多い
  • 一般社会の常識に捉われないところがあり、既存のやり方を打ち破り、新たなものの見方を示すのが得意
  • 独創的なアイディアがひらめくと、衝動に駆られて実行に移す
  • 何かトラブルが起こっても、それを刺激的だと感じ、よけいにはりきる
  • 将来を見通す力がある一方で、ごく普通の、なんでもないことに鋭い観察眼を向け、重要なことを発見する才能も持ち合わせる
  • 不和を嫌い、調和を好む
  • 他人の力と自分の才能とをうまく協調させ、仕事を成功させる
  • 思いやりをもって優しく人と接し、困っている人がいれば助け舟を出そうとする
  • 人の成長に役に立ちたいと願っている

また、短所として例えば以下が挙げられていた。

  • ひとつのことに集中するのが苦手
  • 手を広げすぎて収拾がつかなくなったり、多くのことに関わりすぎてしまう
  • 自分のひらめきに従って重要な問題を解決したときには大きな喜びを得るが、この段階が終わると、もう興味を失ってしまう
  • 事前にコツコツ準備をするのは苦手
  • 常に変化を求めているので落ち着きがなく、面倒なことは後回しにして、次の目新しいものに飛びついてしまう

ENFP型の適職

ENFP型の場合、以下のような職域が適する。

クリエイティブ

  • 常に新たな方法や独創的な手法を編み出せるので惹かれる
  • スタッフや同僚と力を合わせ、刺激を受けつつ共同製作ができると、大きなやりがいを感じる

マーケティング/企画

  • 長期的に物事を見る力があり、アイディア、プログラム、サービスなどが人に与える影響やその結果を見通すことができる
  • 他人の欲求や希望を理解し、それをよく考慮し、自分の企画に反映させることができる
  • 聡明でありながら愉快なことも大好きなので、広告宣伝用のコピーを考えるのも得意
  • 企業の顔として観衆を前にスピーチや講演をするのも得意

教育/カウンセリング

  • 支援を惜しまない思いやりに溢れた心理学者になる
  • 創造性に溢れた熱心なキャリアカウンセラーにもなる
  • 顧客サービス担当者やオンブズマンなど、組織と人の間に立ち、解決策を探る役割にも向く

企業家/ビジネス

  • 生まれながらの企業家であり、できれば起業し、独立して働きたい
  • チームを形成し、対立を解決し、職場の効率を上げていく作業を楽しむ
  • 旧態依然としたビジネスの世界には関心を持たない

現行AIの不得意領域をなりわいとするENFP型

どうだろう。「ひらめきと独創性」「実行力」「他者との協調」といった特徴はいずれも、現行AIが苦手とする領域だ。したがってENFP型が得意とするような職域は、機械による代替は比較的難しいかもしれない。

// ISTJ型とバランスとるためここからENFP型をdisる

ただし、だからと言ってENFP型が安泰というわけでもない。ある課題空間における「ひらめき」は、教師なし学習によるAIの方が人間の芸術家以上の能力を持つ可能性がすでに示唆されている。人の「感情」のような曖昧な状態も、むしろAIの方が高精度に認識し、優れた協調性を発揮する未来も遠くはない。

ENFP型もまたISTJ型と同様に、その活動が市場価値としては認められなくなる可能性を孕んではいて、油断はできない。

// ENFP型へのdisりここまで


まとめ

ちょっと長くなったけど、MBTI法におけるITSJ型とENFP型を参考に、AIに代替されやすそうな仕事と、そうでない仕事を挙げてみた。やはり性格タイプによって、機械に近い人とそうでない人というのはいると思う。

ただENFP型の評価としても述べたけど、人工知能の能力は日進月歩で進んでおり、長い目で見ればITSJ型もENFP型も大きな差はないのかもしれない。

ここでもう一つフォローを入れるなら、「ある仕事のほとんどを代替可能であること」と、「ある仕事のすべてを代替できること」との間には、小さそうに見えて大きな差がある点である。

2040年の女子高生・鷲尾野ゆずりは(17)の視点で未来の日常を予想する「ゆずりはPj」でも、ゆずりはのパーソナリティを特定して、彼女の視点で日々の生活、そして労働の姿を考えてみた。少なくとも2040年という時間軸では、やはり人間の仕事は残る気がする。

 

 

 

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