数字で見るロボット・無人兵器の普及状況(『ロボット兵士の戦争』書評 1/3)

「ロボット」というと二足歩行で手足のついたやつを想像しがちですが、現実においては人間型ロボットは少数派かもしれません。米軍が開発中の最新型ロボットが最近ニュースになっていました。なにこれカッコいい。

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「【まるでスターウォーズ】X-47無人ステルス攻撃機が空母から発着着艦する詳細画像集!」より

こちらはタキシングの様子。
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これロボットじゃなくて無人戦闘機でしょ? というツッコミには私も同意。ロボットの定義が問題になりますが、P・W・シンガー著『ロボット兵士の戦争』では、無人機も広義の「ロボット」と捉えていました。曰く、次の3つを備えていることをロボットの定義とします。

  • 1.センサ
  • 2.プロセッサ(人工知能を含む)
  • 3.外界に影響を及ぼすエフェクタ

エフェクタ無しだとただのコンピュータになりますね。
X-47Bはセンシングした情報をもとにしての自律飛行できるので、ロボットの枠に入るということになります。そうすると、オートパイロットが可能な旅客機とか、最近のラジコンなんかもロボットに入っちゃうわけですが。

『ロボット兵士の戦争』では、主に米軍が運用・開発するロボット兵器を軸として、ロボットの現在から未来を丁寧に予測しています。2010年時点で米軍が運用するロボットは、紹介されていた代表的なものだけでも陸5種類、空6種類、海1種類。開発中のもの紹介されていて、陸2種類、空10種類、海4種類の新型機がありました。

陸だと、家庭用ロボット掃除機「ルンバ」で有名なiRobot社による兵器とか。同社の自走ロボット「パックボット」はUSBポートを8つ持っていて、兵器モジュールを用途に応じて換装可能。今は機関銃もUSB接続で制御する時代なんですね。
空では、手投げ式小型偵察機からX-47Bのような無人攻撃機まで、多岐に渡っていました。

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「ルンバ」でお馴染みiRobot社の陸上ロボット「パックボット」(iRobot社HPより)
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35時間の滞空飛行が可能な「グローバルホーク」(ノースロップ・グラマンHPより)

本書が最新ロボットの紹介に費やしたページは、実は多くはありませんでした。
ロボットそのものの紹介よりも、ロボットの登場がもたらす戦争・軍組織の変化や、未来における戦闘の方法、そして社会に及ぼす影響を丁寧に分析。こちらのボリュームが厚いです。「未来予測」と言いつつ現状分析に毛の生えただけの本も多い中、本書は先の先まで踏み込んで予測しており、大胆な1冊でした。
今回はこの『ロボット兵士の戦争』を紹介します。

ロボット兵士の戦争

長くなったので記事は3つに分けました。


着実に進むロボットの軍事利用(まずは数字から見てみる)

東日本大震災の原発事故で米軍のロボットが投入されて、アトムやガンダムを生んだはずの日本は一体何やってるんだ、という声があがりました。しかし本書を読むと、米国は2003年のイラク戦争当時からロボット兵器を積極運用しており、すでに数歩も先を行っていることがわかります。
ロボットの普及状況は数字を見ると分かりやすいので、本書で述べられていた数字を並べてみます。

まずは運用状況。

  • イラク戦争に投入されたロボットは2008年末までに12,000台
  • 2008年にイラクの地上で稼動するロボットは22種類
  • 2008年に米軍が保有する無人機は5,331機で、有人機の2倍
  • 2006年6月までの1年間に無人攻撃機プレデターがこなした任務は2,073件、飛行時間は33,833時間、調査した標的は18,490件、加わった奇襲は242件

次に開発状況と、産業全体についての予測。

  • 米国防総省の共同ロボット計画は現在、知能を持つ地上車両の試作品22種類を開発中
  • 2015年までに、軍の地上車両の1/3の無人化を目指すことを米議会は要求
  • 全世界で無人飛行機とコンピュータ誘導式ミサイルに投じられる資金は、2016年までの10年で1,037億ドルにのぼる(防衛コンサル企業ティール・グループによる予測)
  • 「現在のロボット工学は1980年ごろのコンピュータ産業と同じような状況にある」(ビル・ゲイツ)
  • 2025年にはロボット産業は年商でも雇用でも、自動車業界やコンピュータ業界に匹敵するようになるだろう

他に中国による無人機開発状況についても触れられてました。

  • 中国軍は旧式の1960年型戦闘機を、破壊したりお蔵入りさせるのではなく、無人攻撃機に改造、数100機に及ぶと見られる

最近ではこんな記事も。

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「中国ヤバいかも…ステルス無人爆撃機の開発スピードに唖然」より

21世紀はロボットの時代!と思うのは私だけですかね

数字を見て驚いたのは、米軍の航空機のうち、すでに無人機が2/3までを占めていたこと。このまま進むと有人戦闘機の方が珍しくなるかもしれません。また、他国も米軍の状況に追随するはずで、未来における空中戦は無人機同士の戦いが一般的になる可能性が高いです。

産業規模は自動車業界に匹敵すると予測されており、実現すれば21世紀において最もインパクトのある市場創出になりそうです。市場を最初に作るのは、米国企業かもしれません。でも、かつて日本企業が自動車市場を奪ったように、他の国がロボット開発のメッカになる可能性もあります。さらには、オープンソース化により「個人」が開発の主体となることもあり得そうだと私は思っています。

その辺りも含めて、ロボット兵器の出現がどのような影響をもたらすか、読んでおもしろかった点を以下にまとめました。

 

ロボット兵士の戦争 われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)

 

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