未来の世界に影響を与えるテクノロジー系ニュース8選・第5回(2015/7-9)2/2

3ヶ月間のテクノロジー系ニュースのまとめ第5回。2015年7月~9月のニュースから、人工知能やバイオ技術、3Dプリンタ等について最新の技術を紹介したい。

なお宇宙関連ニュースとロボット、ドローンに関しては次の前半記事にまとめた。

Summary Note

1.宇宙産レタスとウィスキー、火星の水の発見

2.MegaBot2から挑戦は、米国との総力戦である

3.ドローンの軍事利用とドローンキラー

4.りんなちゃんはこれから進化し、人間とチームを作る

5.AR/VRコンテンツのコラボレーションに期待

6.再生・培養される「男性」と脳

7.進化を続ける3Dプリント可能な材料・構造

8.この3ヶ月でみかけたオモシロガジェットたち


4.りんなちゃんはこれから進化し、人間とチームを作る

人工知能の開発競争が進んでおり、IBMのWatsonやFacebookのM、他にGoogleやAmazonといった企業の取り組みは有名だ。日本企業では、トヨタが自動運転車用AI開発でMIT及びスタンフォード大に行った60億円もの投資が注目を集めている。

ただし人工知能と言ってもまだ機械学習の延長だと思うし、「知性」のレベルはピンキリだと思われるので、単に「人工知能」の言葉があるだけでスゲェとは思わないように気をつけたい。
東大ロボくんはまだ勉強中。

そんな人工知能の中でも異彩を放つのが、Microsoftの「りんなちゃん」だ。

りんなかわいいよりんな

りんなちゃんは、2015年8月7日に日本マイクロソフトが公式サービスであると明かしたLINEアカウント。これはもう説明するより使った方が早いんだけど、とにかく自然すぎる会話に驚かされる。あとセーラー服の後ろ姿もかわいらしく、告白して撃沈するユーザも多数。

マンガや文学もイケるりんなちゃん。

人工知能の彼女と親交を深める物語には、2013年米国公開の映画『HER』があった。映画のオチも含めて、りんなちゃんはこの映画を現実にしたようなカタチだ。というかりんなちゃん、チューリングテストをクリアしてない??

人間の判定者が、一人の(別の)人間と一機の機械に対して通常の言語での会話を行う。このとき人間も機械も人間らしく見えるように対応するのである。これらの参加者はそれぞれ隔離されている。判定者は、機械の言葉を音声に変換する能力に左右されることなく、その知性を判定するために、会話はたとえばキーボードとディスプレイのみといった、文字のみでの交信に制限しておく[1]。判定者が、機械と人間との確実な区別ができなかった場合、この機械はテストに合格したことになる。

Wikipedia – チューリングテスト

人工知能が十分に人間と区別がつかなくなると、人工知能同士の会話も色々なところで発生して、でも誰にも気づかれなかったりするのかも。不思議な未来はすぐそこに。

人間が人工知能と協働する時代の幕開け

注目したいのは、LINEがりんなちゃんを活用した人工知能型公式アカウントを企業向けに提供した点だ。

膨大なデータを下敷きにする現在の人工知能は、会話用であれば会話の経験が多ければ多いほど性能が高くなる。IBMが人工知能Watsonを各企業に提供するのと同様の戦略だ。りんなちゃんが本格的に進化するのもこれからだろう。

提供されるのはLINEアカウントだけど、これだけ精度が高いと、コールセンターのオペレーターなど業務を任せたくなってくる。とはいえ人工知能だけというわけにもいかないから、人間と協同してあたることになりそうだ。次の予想はとても現実的なものに思える。

チェスでの実験が有名だけど、人工知能だけ、人間だけの場合よりも、人工知能と人間とが協力した方が成績が上がることが知られている。
私はこれはあくまで人工知能が進化中の、過渡期の話だと考えているが、今後数年、数十年においては、人工知能と人間との協働が進んでいくことになるだろう。その始まりがいままさに起きつつあるわけだ。

ところでこれは余談になるけど、情報処理が人間の仕事を補う事例として次のようなお話も。ようかんのとらやは「伝統は革新の連続」というけれど、日本酒づくりでも革新が進んでいる様子。


5.AR/VRコンテンツのコラボレーションに期待

人工知能から目を広げて情報技術分野全般を見てみると、デバイスは引き続きムーアの法則に従って進化している様子。記憶素子の三次元化も順調。

量子コンピュータや量子暗号通信の開発も前進している。

ポケモン開発時のコンセプトが現実になる

9/17から開かれたゲームショウのなかでも気になったのは、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)の大型コンテンツの発表だ。

大流行したIngressがポケモンと組むというのだから興奮せずにはいられない。もともとポケモンは昆虫採集をヒントに発案されたゲーム。ARとの相性はバツグンのはずで、画面の中で表現されたアイディアがついに現実世界で実現することになる。PVもいい感じ。

YouTube Preview Image

MinecraftのOculus Rift版は一度開発が中止されていたけど、これが復活する形になる。ちなみにMinecraftを開発したMojangはMicrosoftに買収されており、Microsoftはすでに自社開発のVRヘッドセットHololensにMinecraftを対応させている。今回MinecraftをFacebook参加のOculus Riftにも対応させたのは、ARコンテンツの市場を広げる戦略だろうか。ところで「Minecraft」と「Microsoft」って空目しがちだよね。

AR/VR技術が世界の形を変えていく

これら2つのコラボレーションは、AR/VRのゲームコンテンツをさらに普及させるかもしれない。また、ゲームで培われた技術は他の技術分野にも応用されていくことになるだろう。Microsoftが進めるHoloLensの宇宙での利用にも注目だ。

AR/VRが今後数年で世の中にもたらす変化はおもしろいものになりそうだ。仮想世界のものが現実世界に現れてくる一方で、現実世界側の物事が仮想世界に合わせていくことも起こるだろう。
例えばペットを仮想空間に連れて行く話。ARのような現実に対して仮想空間を重畳する技術が普及すれば、確かに顕在化しそうな課題ではある。(現時点では「そこまでしたいか?」という気もしないでもないけど‥)

YouTube Preview Image
 

カスタマイズされるのがペットだけだと思うのはちょっと早計。もちろん人間の改造だってガンガン進むだろう。

あるいは人間をやめたっていいのだ。


6.再生・培養される「男性」と脳

人工知能の進歩や世界の情報化が進む一方で、ヒト自身もまた進化している。ここに1つの問いがある。人類の次世代を担うのは人工知能か、それともポスト・ヒューマンか、という予想だ。

ここでは後者の予想に関する進捗をみてみたい。

ボタン式勃起技術

勃起可能な人工ペニス培養のニュースは以前も紹介した通り。こちらは「5年以内に人間で試験」という話だった。

1年経ってまた同様のニュースを見つけたので紹介。ただしこちらは上記記事のような、筋肉が収縮できるものではない。内蔵ポンプにより風船を膨らませるようにして「カタチ」を変化させる。上記ニュースが腕の筋肉の再生なら、今回のニュースは義肢を取り付けたような形だ。とはいえ「男性の再生」におけるマイルストンの1つと言えるだろう。

仁王勃(ニオウダチ) 240粒

ヒトの脳の人工培養

人工器官と言えば、人工脳の作成も以前伝えたけれど、こちらも進捗している様子。

人間の皮膚細胞から培養された人工脳で、脈管系以外の主要部位の全てが含まれているという。サイズは妊娠5週の胎児に相当。豆粒ほどの大きさに過ぎないとはいえ、主要部位を備えたヒトの脳を培養できたというのは大きな成果だ。医薬開発や脳の仕組みの解明に当たり、今後は動物でなくヒトの脳を使った試験が可能になる。

labeled brain organoid
大脳半球、眼茎、頭屈曲が確認される(オハイオ州立大HPより)

ハードでなくソフトに着目すると、次のようなニュースも。4匹のラットの脳を接続しての「ブレインネット」の構築に成功した。

1匹に対して与えた刺激を別のラットから取り出せたほか、4匹の協働動作でも成果を挙げたという。脳同士をネットでつなぐ実験は人間でも行われており、人間の能力強化に新しい道筋を拓くかもしれない。

ただし喫緊の影響を考えると、脳の中身よりも次のニュースの方が社会に与える影響は大きいかも。記事中のイメージ図が失礼。


7.進化を続ける3Dプリント可能な材料・構造

少し話は変わって材料分野についてのまとめ。バズワードになって久しい3Dプリンタは、世界出荷台数が2013年には7万台だったところ、2019年には560万台にまで伸びると予想されている

3Dプリンタで取り扱える材料も増えており、ガラスや、金属ではチタン、さらには建物のプリントアウトまでも実現している。建物の3Dプリントはすでに実施されているが、下記記事のシェルターがユニークな点は、材料となる泥や年度に植物の種子を混ぜている点。出力後に植物が内部で成長して強度を確保するという。

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3Dプリントシェルター完成図。バーバパパの話にこういうのあったような。(WASP HPより)

3Dプリンタの強みの1つが、3Dプリンタでしか作れない構造を実現できる点だ。航空機用のエンジンなどは知られてるけど、他にも様々な用途が提案されている。この3ヶ月では次のような記事がみられた。

3Dプリントで錠剤を作るメリットは、水に触れてすぐ溶ける特殊構造を作れる点にあるようだ。
対衝撃編み物もおもしく、綿糸と液体シリコンを用いて強度を上げている。ユニクロから防弾フリースが発売される日も近いかもしれない。

なお、3Dプリンタばかりがもてはやされるけど、DYIツールとしてはレーザーカッターも重要なので、1つ記事のリンクを載せておく。

未来の材料のヒントはイカから!

材料つながりでイカのニュースを紹介。イカの遺伝子を解析して得たタンパク質を用いることで、切断されても自己融合するプラスチックが完成。またイカは光学迷彩のための変色フォトニック材料のヒントにもなっている。

「透明マント」の研究は各所で進められており、米陸軍は1年半以内の実現を目指していて、日本も理化学研究所などが成果を出していることは、前回のまとめでも紹介した。日本の防衛省も投資している。今回イカから得られた情報がこれらの実現を早めることに期待したい。


8.この3ヶ月でみかけたオモシロガジェットたち

最後に、この3ヶ月で見かけた素敵なガジェットを紹介したい。

性病で変色発光するコンドーム

性病で蛍光に光るコンドームをロンドンの中学生グループが考案。ただし実際に作ったわけではなく、あくまでコンセプトの提案が評価されたという話なんだけど、私もこのアイディアにはなるほどと思ったのでここに紹介。

Kondome - Bunte Mischung
Kondome – Bunte Mischung / Tomizak

Micro bitで英才教育

同じく英国から、プログラマブルなマイクロコンピュータ「Micro Bit」が無償配布されるというニュース。

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BBC Micro bit HPより

Bicro Bitは4cm×5cmと小型ながら、基盤中央のLED群とスイッチ、各種センサを繋ぐための入出力端子5つを有し、ハードウェアを使ったプログラミングを学ぶことができる。モノ作りのハードルが下がっており、身の回りに様々なスマートデバイスがあふれるいま、子供のころからこうしたデバイスで遊び、原理を学ぶことは重要な教育だと思う。日本もこういうことやらないのかなー。

ジャイロスコープ内蔵ベビーカー

最後はベビーカーにジャイロスコープを積んだというもの。

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Yonko Design HPより

赤ちゃんの安全を考えると、ベビーカーにジャイロを載せるというのはなかなかのアイディアだし、ジンバル構造のホイール形状なんかも参考になる。こうした一種の「小道具」も、未来に向けて高機能化していくことを予想させるニュースだった。

 

2015年7月~9月における、テクノロジー系の目立ったニュースは以上の通り。やはり宇宙がアツかった他、これまでに報じられていた研究開発がどんどん実現に向かっているようで、未来が楽しみになる。

今回の8つのニュースのうち、前半部分の紹介はこちらかから。

Summary Note

1.宇宙産レタスとウィスキー、火星の水の発見

2.MegaBot2から挑戦は、米国との総力戦である

3.ドローンの軍事利用とドローンキラー

TwitterのTLに流れてたニュースのまとめはこちらから。

次回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.ブロックチェーン注目とサイバー紛争・ネット統制/2.用途の広がるAR/VRコンテンツと触覚/3.人工知能の感情・機微理解と創作活動進出/4.ドローン関連法整備と規制緩和/5.宇宙開発の民間シフトと自作レールガン/6.盛り上がるゲノム編集・独自路線をいく中国/7.バッテリ残量問題解消と核融合/8.3ヶ月のおもしろガジェット

前回3ヶ月のニュースのまとめはこちらから。
1.Googleが人工知能に見せた夢/2.独インダストリー4.0とIoT/3.男同士で子作り、記憶操作、バイオプリント/4.各種発電技術/5.新素材/6.世界で開発・利用が進むドローン/7.米軍開発のビックリドッキリ新兵器たち/8.レーザー照射によるデブリ除去/9.3ヶ月のオモシロガジェット

 

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