氷・水の発見が相次ぐ月と火星、有人探査・植民はいよいよ進むか

いなたくんへ

2002年の創業時より火星移住を目標に掲げるイーロン・マスクのSpaceXは、再利用型ロケットの開発成功や巨大宇宙船BFR(Big Falcon Rocket)の製造など、破竹の勢いで開発を進めている。計画によれば、2022年までにBFRを用いた物資運搬を開始し、2024年には火星移住が開始される。

そんなSpaceXはBFRによる世界初の民間月観光旅行を発表。そしてその最初の旅行者として、スタートトゥデイの前澤友作社長が選ばれたことを伝えた


旅行は2023年に行われ、旅程は約1週間、帰還を含めると11日間が想定される
(図:SpaceXより)

月世界旅行に火星植民。夢のあふれる話題だが、これを後押しするかのようなニュースがあった。それは月と火星での水の発見である。今回は最近のニュースから、月・火星植民に関する話題を紹介したい。

Summary Note

1.月の両極で氷を発見、探査計画・基地計画も具体化

2.火星地下で湖を発見、イーロン・マスクは火星基地予想図を発表

3.往還手段はSpaceXの専売特許ではない

なお、宇宙に関するニュースはこれまでも定期的にまとめている。


1.月の両極で氷を発見、探査計画・基地計画も具体化

2018年8月、NASAは月の両極に氷が存在する決定的な証拠を確認したと発表した。インドが打ち上げた月周回衛星チャンドラヤーン1号搭載の、NASAの月面鉱物マッピング装置「M3」の観測に基づく。太陽光が当たらない月面の極地では、氷が個体として存在しているようだ。


図:NASA

もともと東北大学等のチームは月隕石の分析により月地下に大量の氷が眠る可能性を示唆していたが、チャンドラヤーン1号のM3は反射光の分析なので、南極・北極の氷は露出しているということだろう。

昨年には月の地下数十メートル~数百メートルの深さに巨大な空洞も発見されている。こうした自然の地形も利用することで、月への有人拠点開発は早まるかもしれない。

月近傍の宇宙開発計画は……

詳細は以前も紹介したけど、NASAは火星や深宇宙の探索拠点として、月近傍領域に「深宇宙探査ゲートウェイ」と呼ばれる拠点を作ることを計画している。

そしてこの8月には、計画の具体案として、当該プラットフォームに2024年までに宇宙飛行士を派遣すると発表した。名前はいつの間にか「月軌道プラットフォームゲートウェイ」に変わったみたい。

日本もこのゲートウェイステーションを利用しての2030年の有人月面着陸を検討するほか、欧州は欧州も2030年までに『Moon Village』と呼ばれる有人月面基地を作ることを計画している


図:JAXAより

NASAと契約して月面探査用宇宙船「オライオン」を開発するロッキード・マーティン社は、この度再使用可能な有人月着陸船のイメージを公開。有人打ち上げは2023年を予定とのこと。


図:LockheedMartinより

イメージ図を見るとワクワクするね。アポロ計画以来の月探査はどんなものになるだろう。

予習しよう!

あと10年ちょっとで、月はより身近なものになるかもしれない。あるいは行けることもあるかもよ。ということで月の予習が必要である。天文学と地理学のそれぞれの視点から書かれたガイドブックが発売されたようなので、まずはこちらから押さえていきたい。


2.火星地下で湖を発見、イーロン・マスクは火星基地予想図を発表

氷といえば、火星でも既に氷が発見されている。火星の場合には二酸化炭素の氷と水の氷とで区別する必要があるが、水の氷も南極等に存在する。

しかし2018年7月には、なんと液体状態の水が発見された。欧州宇宙機関の探査機「マーズ・エクスプレス」搭載のレーダーが、火星の極冠の下に幅20kmの湖があることを見つけたのだ。

深さは約1.5kmの氷層の下で、少なくとも1m以上の厚さがあるとされる。推定温度がマイナス10~30度でも液体状であることから、塩分濃度が高いと推定されているようだ。

さらに、10月にNature Geoscienceに掲載された論文によれば、火星地下の塩水湖には、原始的な微生物を生存させられる量の酸素が存在する可能性があるという。

これは火星生命の存在を肯定しうる結果であり、実地での調査が待ち望まれる。

期待される火星のテラフォーミング

無人探査もいいけど、やっぱり有人探査したいよね。となれば期待が集まるのはSpaceX。イーロン・マスクTwitterで火星基地のイメージ図を公開した。彼が「Alpha」と呼ぶ基地には、前澤社長も乗せる予定の巨大宇宙船BFRが映っている。

なお火星移住ともなると住環境をきちんと整えることも必要になるが、次の記事では、火星移住を視野に入れた各国研究機関の研究を紹介。「微小重力空間での生野菜生産」「プラナリアの再生能力の医療応用」「宇宙空間での3Dプリンティング」「微小重力空間でのビール醸造」が挙げられている。

やがては人類は火星に移住し、そこに生活を築くだろうか。二酸化炭素量の不足から火星のテラフォーミングは現在の技術では難しい、との試算も最近発表されはしたものの、近年相次ぐ新発見や技術の進歩を鑑みれば、決して遠い未来の夢物語ではないだろう。


3.往還手段はSpaceXの専売特許ではない

開発が進んでるのでSpaceXが注目されがちだが、それ以外にも宇宙へ行くための挑戦は行われている。ロケットの再利用はジェフ・ベゾスのBlueOrigin社も成功させているほか、Microsoft創業者ポール・アレンのストラトローンチ・システム社は、2018年8月に飛行機発射型スペースプレーンの打ち上げ構想を発表した。


図:Stratolaunchより

母機は翼長117mとなる「世界最大の航空機」はすでに実機が完成。構想ではペイロードに応じてて4種類の打ち上げが可能となる。初打ち上げは2020年を予定。

ポール・アレンは戦艦武蔵の発見でも有名だが、残念なことに9月に癌でこの世を去ったた。冥福を祈るとともに、ストラトローンチ・システムズが遺志を遂げることに期待したい。

打ち上げだけが道ではない

地上ではなく空中からロケットを発射する、というのがストラトローンチ・システムズの思想だが、打ち上げ以外にも方法はある。宇宙エレベーターだ。

宇宙エレベーターといえば夢のSF技術の代表例の1つで、過去には大林組が(カーボンナノチューブが実現したという前提で)10兆円という予算を試算していた。あれ、意外に安い‥?

そんな宇宙エレベーター、いよいよ宇宙空間での世界初の実証実験が行われる。静岡大学の実証用衛星「STARS-Me」、通称「てんりゅう」である。


図:静岡大学

「てんりゅう」はいわゆるCubeSatと呼ばれる10cm四方の超小型衛星2基からなる。両基のあいだにケーブルを張り、エレベーターに見立てた箱を実際に昇降させることで、宇宙空間における実際の挙動を検証する。

何度かの延期はあったものの、「てんりゅう」は9/26に無事H-IIBロケットで打ち上げられ、10/6にISSから放出された。詳細は次のページから。

今後どのような知見が得られるのか楽しみだ。

 

以上、月と火星についての最近のニュースを整理してみた。宇宙開発はまさに日進月歩で進んでおり、引き続きチェックしていきたい。

宇宙に関するニュースのこれまでのまとめはこちらから。

 

  

 

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