いなたくんへ
未来に関するビジョンやコンセプトの提示のまとめ。最近の話題から気になるものを挙げてみた。イランの水耕栽培タワーとか、AIが死者の残像をつくる短編マンガとか、未来の航空戦とか、ビジュアライズされるとイメージが沸いておもしろい。
Summary Note
まずはコンセプトカーを提示しがちな自動車業界から、米国のスタートアップNuro社による人間がのらないことを前提とした車のデザイン。こちらはラスト・ワン・マイルの配送用途のモビリティで、低速走行が前提となる。車体全体がカーゴで、上法にはセンサユニット。フロントサイドのデザインが通常の車を模しているのは興味深い。
Nuro HPより
コンセプトカーと言えばジュネーヴモーターショーに9台のコンセプトカーが登場。自動運転関連のデザインはすでに出尽くした感ありサプライズはないものの、どれも未来的でカッコいい。
モビリティに関して注目なのは、タイヤメーカーのグッドイヤーが発表した光合成するタイヤ「Oxygene」。内部に生きたコケが入っているという。部品に本来機能と異なる付加機能を持たせるアプローチはおもしろい
Goodyear HPより
無人機と言えば、未来の航空戦を描いたYoutube動画『Air Force 2030 Call to Action』が迫力あったので紹介。有人機と無人機との連携やEMPミサイル、レーザー兵器、そしてスォームなどが描かれている。いずれも新しい話はないが、絵になると想像しやすい。
なお前フリ映像が激しく長めで、本題は3:09あたりから。
Youtubeより
バルセロナのデザインスタジオNoumenaは、エストニアの無人島に亀型ロボットを解き放ち、独自の生態系を作らせる実験を構想している。
センサを内蔵したロボットたちは、環境に適応して変化していくとされる。
NOUMENA HPより
思い出されるのは、メモリ空間で自己複製するデジタル生物「Tierra」だ。Tierraは自己複製の過程で突然変異が起こるよう設計されていて、これにより進化が実験された。
ただ、Noumenaは自己複製できるわけではないので、進化というよりは「適応」と言ったほうが正しそう。それにしてもエネルギーどうするのかとか気になるけれど、自然環境での耐久性や、ロボットの汎用性獲得を考えるうえで興味深い。
そしていずれは自己複製能力を持つロボットが野良化して人知れず群れを作ったら、と想像するのも楽しい。
AI技術により死後49日だけ生前の人格をよみがえらせる、という5pの短編マンガが話題になった。とても良いマンガなのでおススメ!
【創作】49日のブラックボックス pic.twitter.com/4lgBOJWyLO
— 園田ゆり/あしあと探偵2巻 (@sonoda_yuri) 2018年3月12日
AIというよりはポストヒューマン技術の未来と捉えた方が正しいかも。テクノロジーにより人間の身体を強化するポストヒューマン技術の分野では、その行きつく先として、人間が情報体(コネクトーム)となることが予想されている。
SFマンガ『銃夢』では身体も脳も機械に置換可能な世界が描かれ、そこでは人間とは「人格と記憶」と定義される。本作『49日のブラックボックス』でも、人間性を疑われる主人公が「記憶も思考回路も確かに『僕』」と述べている。
果たして本作の主人公は機械だろうか。それとも、肉体を失っただけの「人間」だろうか。
ラストのセリフ「生まれてよかったと思えたんだ」は、「僕だけに許された」との言葉から、生前の本人ではなく、死後シミュレートされるAI人格としての「僕」が生まれたことを指すように思える。しかし生前の本人と人格・記憶が連続するなら、「僕」とはAIではなく、肉体の死後も生きる「お母さんから生まれた僕」であるはずなのだ。しかし本作の主人公はそう認識できてはおらず、けなげである。
AI関連のTweetでは次の寓話も未来を可視化してくれて素敵だった。
「ママ、僕、労働で生きていく!」
「何言ってるの、労働でなんて生きていける訳ないじゃない。なんでも機械がやってくれるこの時代に、労働で生きていける人なんて、ほんの一握りよ。私たち普通の人は、歌を歌ったり、絵を描いて、暮らしていくしかないの。分かったら、お歌の練習してらっしゃい」
— つちやみ@星新一っぽい話 (@tsuchi_yami) 2018年1月30日
100万人以上の人口を持つイランの都市シーラーズで、水耕栽培設備を導入した植物タワーの構想が発表された。通常の構想タワーの外壁に植物栽培システムを導入するもので、栽培面積は1.2haに及ぶという。イランではすべての露地栽培の施設栽培化も構想されている。
IFP Newsより
景観として素晴らしいよね。虫すごそうだけど。
貨物用コンテナを改装した年間2-4トンの収穫が見込める水耕栽培システムとか、植物工場アツいよなあ。コストはまだまだ下げなきゃ普及は厳しいかもだけど、宇宙空間や南極基地など極地での運用には特に期待が大きい。
ところで環境関連では、温暖化による氷河融解を防ぐ技術として、氷河と温かい海水が接するところに海中堤防を作るというプリンストン大学のアイディアも。温暖化は止められなくとも、海面上昇の防止には効果があるみたい。
人口減少・高齢社会のインパクトを地域レベルで実感できる「未来カルテ」が公開された。現在ver.2.1がダウンロード可能。
- 人口・高齢化・産業・医療・介護・保育など2040年の全国の各市町村の姿が一瞬でわかる「未来カルテ」無料ダウンロード開始(千葉大学・JST,2017/10/30)
- 「未来カルテ」Ver.2.1(2018/03/30)公開!(OPOSSUM,2018/4/6)
こちらはJST社会技術研究開発センターが推進する戦略的創造研究推進事業の「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」で作成されたもの。中高生による政策提言ワークショップなど、未来予測に用いることが期待される。
ということで早速33MBのエクセルファイルをダウンロードしてみた。気になる街の市町村コード(エクセル中に索引あり)を入れるだけで、2040年の人口構成とか産業構造とか年齢別の色々とか保育・教育事情とか医療・介護事情とか住宅事情とか農地とか財政とか、色んなデータがグラフ化されて提示される。これはすごい!
地元の人口構成のヤバみは予想通りだったが、人口が現在比72%にしか減らないのは朗報だった。将来どうしようかなー。グラフ眺めて考えてみよ。
野村総合研究所は2018年から2100年の未来年表を発表。「政治・社会」「経済・産業」「国際」の軸で整理している。公的予測値のまとめなのでサプライズはないけど、一元化されてて参考になる。1945-2017の過去年表も付属。
長期の未来では、INGが3Dプリンタが2060年までに世界貿易の25%を消滅させるとの予測を発表。3Dプリンタへの投資が現在のペースで伸びれば、2060年までに製品の半数が3Dプリンタで作れるようになり、流通・貿易に破壊的な影響が及ぶとのこと。
未来のビジュアライズではMicrosoftとか定期的に動画作ってるけど(2015年の『Productivity Future Vision』とか)、同様の取り組みもNTTデータもやっていたので、一応リンクを載せる。だがしかし、9本もある動画のどれもちょっと退屈というか新しくないというかどこかで見たような話しばかりで、とても見ていられなかった‥。これ本当に2018年公開の動画だろうか。5ヵ月経つけど視聴回数500程度というのもさびしい‥。
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テクノロジー系ニュースもまとめているのでこちらから。
ビジョン・コンセプトの前回まとめはこちらから。
1.機械の眼を意図したデザイン/2.モビリティの未来のカタチ/3.山谷剛史が視せる中国の近未来/4.近未来トレンド予想/5.今後生まれる21の未来の仕事