「ドローン」と呼ばれる無人航空機の話題を耳にすることが増えてきました。
たとえばAmazonがドローンによる無人配達を目指していたり、あるいは無人のステルス爆撃機が各国で導入され始めていたり。
米国無人偵察機協会の報告書「アメリカにおける無人システムの経済的影響」では、米国の無人機産業は2025年までに821億ドル(約8兆円)になると予想しています。
また、スタンフォード大学によるハードウェア開発の未来予測では、「現在始まっているドローンや物流に関する革命は2021年くらいまで続く」としています。
今回はドローンを使ったサービスとして開発・検討されているものや、すでに導入されている業界についてまとめてみました。
2015年を目前にして、まだ空飛ぶ自動車の普及に至っていないのが悔しいですが、様々な用途のドローンが空を飛び交う未来はもうそこまで来ているようです。
なお、ドローンの兵器としての利用も次の記事にまとめました。
Summary Note
- ドローンによる無人配送サービス(Amazon)
- 高高度を数年間飛び続ける「大気圏衛星」(Google)
- ドローンを利用したネット接続中継(Facebook)
- ドローンの環境観測がみせる新たな景色
- ヤマハが攻める農業用ドローン
- ドローンによる未来の警備と安全保障
- ドローン普及にむけ法整備を進める米国
Amazon、Google、Facebookといった大手IT企業によるドローン利用の検討が報道されており、まずはこれについて紹介です。
こちらは大きな話題になったので有名ですが、物流の歴史を変えつつあるAmazonは、「最後の1マイル」問題までも解決しようとしています。
- アマゾン、無人飛行機による配送を目指す(CNET Japan,2013/12/2)
- 米アマゾン、無人飛行機で宅配テスト 商品の86%対象(朝日新聞デジタル,2013/12/2)
- アマゾンCEO、ドローンによる配送サービスの進捗を報告–第7~8世代が設計段階(CNET Japan,2014/4/12)
サービス名は「Amazon Preme Air」。Amazon CEOのジェフ・ベゾスは、無人機配送サービスは4~5年で実現すると考えているそうです。
各地域まではトラック輸送して、地域ごとの配送センターからドローンが飛び立つ感じでしょうか。家の裏庭にはAmazonドローン着陸用のポートがあるのが当たり前、という日も来るかもしれません。
ただ日本ではどうなんでしょう。
土地の広い米国だと、最終配送センターから各家庭までをいちいち回るのは比較的大きなコストになりそうです。でも住宅の密集しがちな日本では、トラックに詰めて回っちゃった方が早そうな気も。
Amazonは他にも配送にビッグデータを利用するなど、いろいろ研究してますね。
なお、ドローンによる配送を目指しているのはAmazonだけではありません。
オーストラリアで教科書の販売・レンタルを行うZookal.comが、オーストラリアにてドローン配送を準備しています。ニュースとしてはAmazonよりも先にこちらが報道されていたようですね。
サービスと連携するためのスマフォアプリもすでに開発されているようです。
民間企業だけでなく、公共機関や国として取り組んでいるところもあります。
特にドバイは、2015年には無人機使用が全国に拡大するとしてます。スピード速いですね。実現できるか楽しみです。
無人飛行機を数年間飛ばし続けて衛星の代替とする、「大気圏衛星」が注目されています。
Titan Aerospace社による「Solara」は翼にソーラーパネルを載せて5年間飛行。翼の全幅は50mにもなりますが、重量は159kgにとどまり、時速約100kmで飛び続けるそうです。
フランスの「Starto Bus」は飛行船に近い巨体ですが、こちらも太陽光発電を利用し、運用想定1年、耐用年数5年としています。
こうした大気圏衛星は従来の衛星のように使われるほか、通信インフラとしての利用も検討されているそうです。
国際宇宙ステーションも地上から視認できることを考えると、大気圏衛星も地上から見ることができそうですね。空を見上げる楽しみが増えそうです。
そして、紹介いた「Solara」を開発するTitan Aerospace社がGoogleに買収されたのが先月のこと。Google mapsなどへの活用が予想されているようです。Googleが自前の衛星を手にすることで、便利な新しいサービスが他にも生まれるかもしれません。
こうしたドローンが実現するのは、太陽光発電の効率化や、軽量で頑丈な新素材によるものでしょうか。技術の進歩により、空や宇宙を利用する民間のサービスがどんどん増えていきそうです。
通信インフラとしてのドローン利用に積極的なのがFacebookです。Facebokは、ネット環境未整備の地域にネットを提供することを目的として、接続中継点となるドローンの開発を進めています。
記事によれば、開発チームは必要な技術を「無人機、衛星、レーザー」としいます。
Facebookはもともと、グーグルが買収したTitan Aerospace社の買収を検討していました。このことからすると、Facobookのプロジェクトも大気圏衛星に近いものかもしれないですね。
ちなみにこれをドローンと呼べるかわかりませんが、Googleもネット接続中継点の目的で気球を飛ばしていたようです。
ネットインフラの空への進出はすぐそこまで来ています。
大手企業以外にもドローンの利用・導入は検討されています。実際にどのようなことに使われているのか、使われようとしているのか、気になる記事をまとめてみました。
空からの気象や環境の観測は、衛星や航空機を使ってこれまでも行われてきました。ドローンの普及により、これが一歩先へ進む可能性があります。
たとえば英国ブリストル大学は、ドローンを利用した放射線観測を目指しています。
ブリストル大学の試みで興味深いのは、単に空高くから観測するのではなく、超小型無人航空機により室内の観測も行う点です。従来のようにマクロな観測だけでなく、ある程度特定された環境にも適用できるとなると、用途が大きく広がりそうです。
ドローンの特徴としてはその他に、衛星等に比べて1機あたりのコストが低いことから、「壊れても構わない」点も挙げられそうです。
見たことのない地球の景色がこれからもたくさん見られそうで楽しみです。
ドローン市場として注目されているのが農業です。特に農場の観測とそれに基づく解析は、ドローンだけでなくソリューションのビジネスとして大きな可能性がありそう。
農業用ドローンについては、WIREDの記事でも紹介されている通り、ヤマハが攻めているようです。
記事によると、ヤマハは農薬や種もみの散布に使用できる無人ヘリの新型機「フェーザー」を2013年11月から導入。開発では特に墜落を防ぐ飛行制御に注力したそうです。
価格の1231万円は、農業機器としては別に高い値段ではないとのこと。トラクターとかコンバインもそのくらいしますもんね。
農水省によれば、2013年度の無人ヘリ普及機数は約2550機で、日本の水田の30%がドローンにより農薬散布されているそうです。知らなかった。
現在日本では無人機製造について離陸時重量100kgという制限があるそう。経産省はこれを150kgに緩和する予定があるようです。
観測ができるなら「監視」もできるわけです。すでに外国機関では、無人機の警備・安全保障への利用が始まっているようです。
- ドイツ鉄道、無人偵察機で落書き防止(WIRED.jp,2013/5/29)
- FBI、「無人機で米国内を監視」認める(WIRED.jp,2013/6/21)
- メキシコ麻薬王の拘束作戦、無人機と盗聴で米国が支援(AFPBBNews,2014/2/24))
据え置きの監視カメラと比べて、機動性があるのは良いことですね。
プライバシー問題の観点で大きな論争を呼びそうではありますが、犯罪抑止力としては期待ができそうです。
ちなみにドイツ鉄道の記事では、クアッドコプター1機当たりの導入コストが790万円となっています。整備・運用も含めてでしょうが、コストはかかるようですね。
最後に、ドローン利用に関する法的規制についていくつか記事をピックアップしました。
日本で長らく著作権法がYahooを違法としてきたように、新しい技術が出現しても、法律が普及を妨げることが多々あります。ドローン利用においては、米国では順調に普及できる方向に進みそうです。
記事によれば、米国は2015年から段階的に民間のドローン参入を進める方針で、6団体に対して試験飛行場の運用を認めたとのこと。
米国でのドローン利用は軍事に独占されていたようですが、軍用に利用されてきたScanEagleの民間企業による利用も認可されるなど、徐々に民間にシフトしています。
また次の記事では、米国家運用安全委員会が「米連邦航空局(FAA)がドローンの飛行を6年間禁止した件について、実際的な法的拘束力は持たない」と判断したと報じています。
本格的に法制度が整備されるのは2015年以降まで待たねばならないようですが、2015年以降に本格的な市場競争が始まるとも考えられそうです。
また、他の国がドローン普及に対してどうアプローチするのかも気になりますね。
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先端技術を確かめる上では、軍事用途も見逃せません。いま開発中の軍用ドローンについてもまとめてみました。