未来のビジョン・コンセプトまとめ・第4回(2017/4-9)

いなたくんへ

未来についてのビジョンやコンセプトの提示について、最近見かけたトピックの中から、気になったものをまとめてみた。
今回はデザインや技術的なものよりも、未来の社会制度を想像したものも目についた。それぞれ概略を紹介したい。

テクノロジー関連のニュースもまとめているのでこちらから。

ガートナーが発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル2017」についても昨年との比較をまとめてみた。


1.技術が変える未来のデザイン:空間UI

技術デザインに関しては、大きな変革が予想されるのが「空間UI」だ。VRやARの普及に伴い、これまでの二次元的なUIとは全く異なるUIが必要とされている。Hololens開発を進めるMicrosoftがこのあたりのデファクトを握ると予想されるが、スタートアップも空中付箋や空間デスクトップなどユニークな提案を行っている。次の記事はmeta社の紹介。

YouTube Preview Image
Youtubeより

どんなUIが未来の「当たり前」になるのか、今から予想するのもおもしろい。


2.技術が変える未来のデザイン:モビリティ

自動車メーカーもコンセプトを打ち出しがちな業界。特に自動運転技術はクルマだけでなく都市のデザインも変えていく。いくつか気になる記事があったが、内容自体はこれまでも議論されてきた範囲なのでリンクだけ並べておく。

「7本のストーリー」の記事はWIREDが自身の過去記事をまとめたもので、大きなトピックとしては「電気トラックによる陸運」「高速道路上でのワイヤレス充電」「街灯LED化と余剰電力利用」といったところか。

ダイナミック横断歩道

モビリティ関連ではインフラ側、つまり道路側の変化も面白いのだけど、イギリスでは歩行者の有無に応じて横断歩道を表示させる技術「Starling Crossing」がテスト運用されている。

道路状況をリアルタイムに監視し、自動車や歩行者の位置や動き、速度などを解析して、表示を最適な形に切り替えるという。


図:unbrellium HPより

図:unbrellium HPより

テクノロジーにより交通ルールも変化していくのは面白いし、なにより未来的なビジュアルにワクワクする。実現が楽しみだ。

モビリティの未来についてはこちらでもまとめた。


3.レイ・カーツワイルが予測するAIと人間の未来

話題沸騰が止まらない人工知能に関しては、「2045問題」の提唱で知られるレイ・カーツワイルによる未来予想がまとめられていた。

イシューは以下の4点。時系列ではなく、それぞれが独立した(しかし相互に連関した)論点と言えるだろう。

  • 1. 人工知能が、人間と同等かそれ以上の「アートを創造」できるようになる
  • 2.人間は「クラウドに接続」することで高い言語スキルを獲得する
  • 3.キャラクターになりきって物語を体験できるようになる
  • 4.死者がアバターとして「復活」する

共通するのは、テクノロジーが人間と機械の境界、あるいは現実と非現実の境界を曖昧に溶かしてしまうこと、その上で我々は自分たち「人間」をどう定義しなおすのか、ということだろう。

私は2045年という時間軸には否定的な立場だが、しかし4つのイシューに対しては必ず向き合う時がくるだろう。


4.AIが突きつける「都市集中か地方分散か」の意思決定

人工知能による政策提言を目指すのは、日立製作所と京都大学が2016年に開設した日立未来課題探索共同研究部門(日立京大ラボ)だ。実際に2万の未来予測シナリオが生成され、これをいくつかの類型に分類して、その分岐の発生に注目し、政策提言につなげている。

具体的なプロセスは概ね次のように説明されている

  • 1.因果関係モデルに基づき確率的シミュレーションを行い、未来に起こるシナリオを生成し、クラスタリングする(今回は23に分類)
  • 2.代表的シナリオを解析し、シナリオ間の分岐がいつ、どのような順番で発生するか検証する
  • 3.分岐の要因となる社会要因を特定し、望ましいシナリオへ誘導するための政策に落とし込む

因果関係モデルは、社会課題に関する8つ観点(①人口や出生率、②財政や社会保障、③都市や地域、④環境や資源、⑤雇用の維持、⑥格差の解消、⑦人間の幸福、⑧健康の維持・増進)から、京大有識者が149の社会要因を挙げ、人手により作成したとのこと。


図:日立製作所HPより

2050年の都市集中シナリオ・地方分散シナリオへの分岐は8-10年後

2050年に向けた未来シナリオとしては、主に次の2つに大別できるという。

  • 都市企業主導の技術革新を要因として、人口の都市集中・地方衰退が起こり、出生率低下・格差拡大・幸福感低下に繋がるが、政府財政は持ち直す(都市集中シナリオ)
  • 人口の地方分散を要因として、出生率が持ち直して格差縮小・幸福感増大に繋がるが、持続可能性維持には細心の注意が必要(地方分散シナリオ)

分析結果によれば、この大きな2つのシナリオに向けての分岐は8-10年後に起こるとされ、以降両シナリオは交わらない。

「細心の注意が必要」としつつも持続可能性がより高い「地方分散シナリオ」に振り向けるため、8-10年後までに行うべき政策や、その後の17-20年後に起こる「持続不可能シナリオ」への分岐を回避するための政策も挙げられていた。

モデル化など人の手に頼る部分はまだまだ大きいようだが、未来予測シミュレータの用途としておもしろい。今後の研究にも期待したい。

他国にも似た動き

人工知能に政治を扱わせようとする動きは他国にもあり、例えば社会的・政治的な意思決定を合理的に行えるAI「ロバマ(ROBAMA)」が開発されている。命名の由来は「ロボット」と「オバマ」から。

「人工知能には偏見や私利私欲がないため、今後、政治の舞台で公正な意思決定を下す用途で使われはじめるだろう」との仮説の下で開発されている。が、人間のフレームをどこまで超えられるかは疑問は残る。

ろくに政策も掲げず選挙シーズンにだけ人気取りを図る政治屋は駆逐されてほしいと思う一方、有権者が結局政策を気にしていないならば、AIがどれだけ頑張ってもダメかもしれない、とは思う。


5.使う「経済システム」「通貨」を選べる未来

ビットコインやFintechが注目を集めているが、『FinTechの未来「経済は選べるようになる」–木村新司(AnyPay)× 佐藤航陽(メタップス)』なる対談記事の次の言葉が気になったので引用紹介。

どの経済システムのどの通貨で自分の価値を保存していくのかを選べるようになっていく

『FinTechの未来「経済は選べるようになる」』より

趣旨としては、例えば評価経済のように新しい対価の支払い方が生まれたり、交換に使われる価値のカタチも多様になっていて、昔に比べて選択肢が増えているというもの。であれば未来においては、経済システムや通貨も個人の選択の範囲になるかも、という話だ。

経済システムや通貨というのは表現形であって本質は変わらないと私は思うが、カタチが変われば自由度が高まるのも確かだ。ということで、上記の言葉も未来を考えるうえで気に留めたい。

評価経済や信用システムに関しては、テクノロジーとの関連で最近起きた出来事をまとめた。


6.水不足対策の氷山輸送

21世紀においては水不足が世界的イシューになると予想されているが、アラブ首長国連邦はその解決策として南極大陸から氷山を運ぶことを検討中。100万人に5年分の水を提供できるほか、氷山がつくり出す微気候は雨をもたらしたり、観光資源としても期待できるとされている。

同様の解決策としては、南米アマゾンの淡水を巨大なボールに詰めて海流に流しアフリカへ運ぶ、という話もあったが、いずれも沿岸国ならではのダイナミックな解決策としておもしろい。ロマンがあるよね!

ただ、今後は海水の淡水化技術も進みそうで、沿岸国ならそちらの選択肢も持つことができる。氷山を運ぶかはコストの問題になるのかも。

 

以上、未来のビジョンやコンセプトに関して気になったトピックをいくつか挙げてみた。
未来予測に関する資料やリンクはこちらのページでまとめており、これまでに見かけた未来のビジョンも蓄積している。

テクノロジー関連ニュースのまとめはこちらから。

ビジョン・コンセプトの前回まとめはこちらから。
1.未来の診察室Forward/2.自動運転の論点/3.2038年までの成長産業市場予測/4.ロボット革命が起こるまでの6ステップ/5.冨野由悠季×山崎直子の宇宙エレベーター議論と認知革命/6.宇宙旅行とデザイン

 

  

 

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