昨今存在感を増しつつある無人航空機「ドローン」について、配送や農業、通信インフラへの利用といった、現在の導入状況を紹介しました。
ハードウェア開発におけるドローンに関する革命は2021年頃まで続くとされ、無人機産業は米国だけでも2025年までに821億ドル(約8兆円)に成長すると予想されています。
民間での利用が注目され始めたドローンですが、多くの最先端技術と同様に、その歴史は軍事と深く関わるものでした。
今回は、軍事目的でいま開発されているドローンや、その用法についてまとめてみました。無人機開発の将来の方向性が見えてくるかもしれません。
Summary Note
戦場での利用状況と最新型機
- 最新型ステルス無人機の開発に成功したのは4ヶ国
米軍が開発中の次世代ドローン
- 水中からの侵攻
- 日常生活に潜む超小型ドローン
- 防御目的でのドローン利用
- 高高度・長期滞空型の無人偵察機
- 宇宙に進出するドローン
無人航空機の歴史は古く、第二次大戦の頃にはすでに研究が始められていたようです。
本格的には、1980年代から米国により研究がされました。無人機を用いた最初の攻撃は2001年、アフガニスタン戦争での米軍RQ-1プレデターによるタリバン・アルカイダ標的の殺害とされています。
プレデターのような遠隔操作型のほか、高高度を長時間滞空する自動操縦型のRQ-4グローバルホーク、兵士が手で投げて飛ばす全長1メートル程度の大きさのRQ-11レイヴンなど、運用されているドローンの種類は多岐にわたります。
現在運用されているドローンについては、Wikipediaがドローン図鑑みたいになっててそちらを見るのが早そう。
ドローンを始めとする無人兵器の現状を解説した『ロボット兵士の戦争』によれば、2008年時点で米軍が保有する無人機は5331機にのぼり、有人機の2倍とされています。レイヴンのような小型機も多くカウントされているのでしょうが、それでも決して少ない数ではありません。
最近では北朝鮮製ドローンの韓国での墜落が報告されるなど、各国で運用されているようです。
ドローンの中でも最先端機種の1つが、ステルス型の無人攻撃機です。攻撃用の無人機は今後のドローン開発の目玉とされており、ステルス型はその上位機種にあたります。現在この開発に成功しているのが、米国、フランス、ドイツ、そして中国の4ヶ国と言われています。
特に中国は軍用無人機数で世界2位との報告もあり、積極的に開発が進められているようです。
ドローン先進国の米国でいまどのような次世代型ドローンが開発・計画されているのか、前述の『ロボット兵士の戦争』やネットの記事を参考にまとめてみました。
無人ステルス攻撃機X-47Bの空母離発着成功についてはすでに触れましたが、米軍はそれだけでなく、水中からの無人機利用も成功させているたようです。
潜水艦での運用は、魚雷発射管から「シーロビン」と呼ばれる打ち上げ機を射出し、そこから無人機が飛び出す仕組み。偵察用途での活用が目的とされています。
海底設置タイプの無人機は2017年春にテスト予定とのこと。機雷の超未来進化版とでも考えればよいでしょうか。バレたときのことを考えると、仮想敵国近海への埋伏よりは、自国近海に配置しての防衛が現実的な気がします。いずれにせよ記事で言及されている通り、安全性が大きな問題になりそうです。
こうした長期休眠タイプの兵器について、『ロボット兵士の戦争』では、バッテリの性能が1つのカギになると指摘していました。
あと海関係だとこんな記事も。
鳥型・昆虫型のドローンについて、米空軍がイメージ動画を公開しています。
カメラやセンサを搭載したドローンが電線に止まって標的を監視する姿がおもしろいです。昆虫型は飛び方が本当に虫みたいでちょっと気持ち悪いですね。
現実にこういうのが近くを飛んでたら不自然すぎて気付くだろと思いますが、偽装技術も発達していくのでしょうか。
DARPA(米国防高等研究計画局)では15センチ以下のサイズのドローンをMAV(Micro Air Vehicle)と定義し、開発を進めています。2006年には実際に昆虫型の使用の無人機の発注も行っていたようです。
積極的な防御目的のドローンも開発されています。
次の記事で紹介されるのは、電子戦装備を用いて敵のレーダーを妨害できるドローン。ドローンは有人機と異なり、小型で探知されにくいものを多数運用できるので、有効な防御手段になりそうです。
防衛目的としては、ミサイル迎撃用のドローンも開発がされています。ノースロップ・グラマンとロッキード・マーティンが関わっており、2016年完成が目標。
レーザーによるミサイル迎撃といえば、ボーイング747を改造した空中発射型レーザーの開発が過去に行われていました。この計画は2011年に中断されましたが、技術開発は継続とされており、それが身を結んだのかもしれません。
偵察機では、最高2万メートルを35時間飛べるグローバルホークを紹介しました。
DARPAはさらに高性能な機体の開発を目指しているようです。2007年に発表されたVULTURE(超高度超航続戦場巡航無人戦闘機)開発計画では、5年間の連続滞空が目標とされました。
こうした長期滞空型の無人機について、『ロボット兵士の戦争』でも紹介がありました。
ボーイングが開発するのは、フットボール競技場ほどの翼幅を持つグライダーで、太陽エネルギーと液体水素を燃料として7~10日ほど飛び続けることができるそうです。
また、ロッキード・マーチンは飛行船型の無人機を開発しており、30キロ上空で数か月から数年間停止することが可能です。通信の中継の他、偵察や、弾道ミサイル防衛システムのハブ、空中での燃料補給基地、あるいは航空機の滑走路としての利用が想定されているとのことでした。
なお、同様のコンセプトの「大気圏衛星」開発企業をGoogleが買収したことは、すでに別記事で紹介した通りです。
高高度と言えば成層圏を突き抜けて、宇宙でのドローン運用も検討がされています。
DARPAが参画してボーイングが開発たX-37は、スペースシャトルを1/4ほどの大きさにした無人の機動実験宇宙船です。2006年に最初の試験飛行が行われ、その後2010年と2011年に軌道への往還に成功しました。
注目すべきはその滞在時間で、2回目の打ち上げでは476日間軌道に滞在しています。3回目の打ち上げも2012年にされており、この機体は現在(2014年5月時点)もなお宇宙を飛んでいるようです。
長期間宇宙に滞在し、無人での大気圏再突入が可能とのことで、兵器としては脅威になることが予想されています。
ところで米国はいま国際宇宙ステーションへの補給を民間に任せようとしていますが、こうした機体は使わないのですかね。
また別の機体では、DARPAのファルコン計画に沿って開発されたX-41がありました。
こちらは「地球上のどこに対しても1時間以内に攻撃をする」ことを目的として、宇宙と大気圏の境界を超音速で飛行します。2011年に第2回目のテスト飛行がされました。弾道ミサイルの発展形と言った方が正しいかもしれません。
以上、軍事目的で開発されているドローンについて、いくつかおもしろそうなものを紹介しました。
兵器としてのドローンの運用は歴史が浅く、様々な問題が生じることが予想されます。
- 殺人ロボット兵器=無人機・無人攻撃機、国連人権理事会で討議へ(HUFFPOST,2013/5/27)
- イラン、「ドローン狩り」を学校の授業に(WIRED.jp,2013/8/20)
- 米無人機攻撃の実際、操縦者が語る 退役後はPTSDに(CNN,2013/10/24)
また日本においては、隣国・中国との関係を巡っても、ドローンがイシューの1つになる日が来るかもしれません。
- 領空侵犯無人機、撃墜も検討=対処方針策定へ—政府(THE WALL STREET JOURNAL 日本版,2013/9/18)
- 中国無人機を日本が撃墜した場合、その自衛隊機は絶対に無事に帰れない(XINHUA.JP,2013/11/1)
新たなコンセプトのドローンが研究・開発される中、こうしたドローンを巡る枠組みがどう整備されていくのかにも注目したいところです。