いま注目の「ウェアラブル」から少し先にある未来型デバイス

注目技術や流行の製品群を表すバズワードとしてこれまで「ナノ」「クラウド」「スマート」などがありましたが、新しいものとして「ウェアラブル」がきていそうな予感です。

火付け役となったのは、グーグルが開発中のメガネ型端末「グーグルグラス」でしょうか。プライバシー問題も含めて盛んな議論がされており、注目を集めますね。
ウェアラブル端末として他に代表的なものと言えば、スマートフォンと連携する時計型デバイスが挙げられそう。ソニーが昨年から売り出しているSmart wathch(すでに2世代目が出てます)や、キックスターターの成功例とされ、この7月にようやく発売されたPebble、開発中と噂だけどなかなか出ないアップルのiWatchなどがこれにあたります。

ウェアラブルデバイスは下記サイトのまとめも参考になりそう。メガネ型や時計型をはじめとして、ライフログを採るためのデバイスなども紹介されています。

Recon Instruments社のスポーツ用サングラス型デバイスがかっこいいです。欲しい。

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視点をもう少し未来にずらすと、ウェアラブルデバイスはより身体に近いものになったり、あるいは体内に埋め込まれる形に進化します(インプランタブルとでも呼べばいいのでしょうか)。英エコノミスト誌による未来予測『2050年の世界』でも、未来の通信機器について次のように予測していました。

通信装置は個別の機器ではなくなって、携帯電話はわたしたちがふだん必ず身につけるもの(指輪やブレスレット)に組み込まれたり、ことによると、肉体に埋め込まれたりするだろう。

第18章 情報技術はどこまで進歩するか

今回はこうしたウェアラブルの少し先の技術をまとめてみました。現時点ではまだ現実していないものの、開発が始まっていたり、提唱されている技術たちです。


眼・耳・口に着けるもの

顔は目や耳といった人間のセンサーが集中する部位ですが、ここに装着または埋め込まれる技術をまずは紹介したいと思います。

望遠コンタクトレンズ

表面にスリットと偏光フィルタを持たせることで、倍率切り替えが可能となったコンタクトレンズ。米国とスイスの共同研究で、倍率は約3倍までいけるそうです。視力1.0の人なら3.0まで上がるということですかね。

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“Switchable telescopic contact lens”: Eric. J. Tremblay,
Igor Stamenov, R. Dirk Beer, Ashkan Arianpour, and Joseph E. Ford

コンタクトレンズ型ディスプレイ

メガネ型の次として思い浮かぶのがコンタクトレンズ型。この開発は少し前から、けっこう色んなところでされているようです。目に入れるのはさすがにちょっと抵抗ありますけどねー。

米ワシントン大とフィンランド・アールト大の共同研究で、発表時点の解像度はまだ1ピクセル。

米INNNOVEGA社が開発し、米国防総省もオーダー。iOptikという名称があるそうです。

ベルギーの研究機関IMECによる開発で、「$」マークがちゃんと表示できてます。

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IMEC HPより

韓国三星も興味を示している模様。

 

耳に埋め込むイヤフォン

耳の皮膚の下にマグネットを埋め込むことで、イヤフォンを着けずとも音楽が聴けるようになったそうです。

若干ネタの気もしますが、デバイスを埋め込むことが当たり前の時代が来れば、決して笑い事ではなくなるかも。音楽が聴けるということは通話ももちろんできるはずで、通信コミュニケーションデバイスの幅が広がります。彼はその実証をしてくれたということですね。

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口に隠せる小型ワイヤレスマイク

Sonitus Medical社によるこのデバイスは、口内に隠せる小型マイクで、拾った音は近くのデバイスにWiFi送信するそうです。CIAの投資部門を担うベンチャーキャピタルが出資する、本物のスパイ用小道具。

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Sonitus Medical社HPより,思ったよりは大きそう

医療用義肢型センサ

こちらは医療目的の入れ歯型センサで、3軸加速度センサとBlue toothを備えます。

注目すべきは、これだけ小さなサイズのセンサとすることで、口内の動きのログが取れるということ。例えば歯を食いしばることから間接的に運動の様子を検知したり、極めて小さな声でも音声認識できるようになったりと、用途はさまざま考えられそうです。
ただ入れ歯となると、若い人にはあまり普及できなさそう。

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論文“Sensor-Embedded Teeth for Oral Activity Recognition”(PDF)より
 

脳みそ活用系デバイス

常に身につけるという意味でのウェアラブルとは違うかもしれませんが、着用するタイプのデバイスで気になるものがあったので紹介したいと思います。

脳に電流を流して反応速度を高めるヘッドセット

頭に搭載するタイプにはヘッドセットやヘッドマウントディスプレイがありますが、こうした用途のデバイスもあるんですねえ。

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FOC.USHPより

将来的に小型化されて、ゲーム以外の私生活でも常用されるようになれば、スポーツで鉄壁のディフェンスを誇るとか、車にはねられそうになっても神業的に避けるとか、夢が広がりそう。
 

インターフェイスとしての「脳波」

ゲームと言えば、脳波を使ったゲームが少し前からいくつか発売されています。

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NeuroSky社HPより

ゲームではありますが、脳波の利用は着実に実用化に向けて進んでいるようです。未来のデバイスのインターフェイスの1つとして、脳波はチェックしておくべきかもしれません。
 

もう具体的な形になっているのかはわかりませんが、Augumented Cognition(拡張認識)というテーマで、脳とコンピュータを直接繋ぐ研究が行われています。研究開発を行っている有名な機関は米国防総省。
動物実験のレベルでは、脳へのアクセスはすでに成果が上がっているようです。

 

文字通りウェアラブルな衣服型デバイス

続いては衣服として着るタイプのデバイスを紹介します。開発状況を見ると、このジャンルが実現するのもまだしばらく先になりそうです。

検知・通信できる繊維で編まれた服

MITと米陸軍が共同開発の軍服で、繊維自体がセンサや通信回路の役割を果たすことで、着用者が特定デバイスを用いずともさまざまな利便性が得られるというもの。

テストでは75メートルまでデータ通信ができたそうです。指揮官による隊員の状況把握とかにも役立ちそう。

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Institute for Soldier Nanotechnologies/MITより,繊維が編み込まれた軍服

皮膚に貼り付けるタトゥー型電子センサ

特殊ワイヤを用いることで、皮膚に貼りつけてもタトゥーにしか見えないくらい薄型化されたセンサ。

肌の乾燥や温度、筋肉や脳の動きの信号などがセンシングできるそうです。ウェアラブルデバイスの用途の1つにライフログの取得があるので、皮膚の情報をこうして得られるようになるのは大きそうですね。他のデバイスへのジェスチャ入力なんかにも役立ちそうです。

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論文“Epidermal Electronics”(PDF)より,英語ですが色んな写真があって眺めるだけでもおもしろいです

服の下に着る強化スキンスーツ

情報端末ではありませんが、ウェアラブルというとどうしても思いつくのがパワーアシストスーツ。最先端はやはり米軍開発のこちらでしょうか。

関節と筋肉を電動アシストして負傷を防ぎ疲労を軽減する歩兵用「スキンスーツ」で、開発は2013年秋からスタートするとのことです。
 

タッチディスプレイ型の服

こちらは開発が始まっているというよりは、あくまでコンセプトモデルのようですね。動画の0:43あたりから。未来感ハンパないです。自己表現の幅が広がりそう。あとこれが実現すれば背景色迷彩もいけそうですね。

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身体に埋め込む電子回路

ウェアを超えてインプラントなデバイスも開発されています。下記は医療目的で体内に埋め込む回路。例えば回路を作動させて、身体に熱を与えることなどが提案されています。

これは、埋め込み型ホッカイロが実現するという理解でよろしいんですかね?冬の間に背中とかに内蔵して、WiFiでスイッチ入れると暖かくなって、春になるころ融解してなくなるみたいな。
将来的には、1日3回時間になると自動的に薬剤成分を体内に溶かすとか、検知した身体の状態に応じて治療強度を変えるとか、色々考えられそうです。

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WIRED記事より,論文“Advanced Materials”の溶けるインプラント回路

加工の対象がいま、人間にまで及ぶようになった

経済活動を主体とした「経済の時代」から、経済のためでなく技術開発そのものが重視される「技術の時代」への転換が起こる、と予想する『先端技術のゆくえ』という一冊があります。この本では、過去の技術史にさかのぼって「技術とは何か?」という問いも掘り下げるのですが、「技術とは能力の対象化である」という定義がちょっと示唆に富んでいました。

技術の歴史を一言で言うとすれば、それは人間能力の対象化と外的自然の主体化の歴史である。つまり技術とは人間能力の対象化と外的自然の主体化に他ならない。乗り物のことを「足」と呼び、望遠鏡のことを「目」といい、道具のことを「手」と呼ぶのはこの事情を反映しているのである。(中略)

現在のところ技術としてはまだ素朴な段階でしかないが、重要なのは加工の対象が人間にまで及んできたことであり、いわば対象化が人間にまで拡大され、それによって人間の主体性まで加工される状況に立ち至ったことである。

道具が手に持つものから着るものになり、やがて埋め込まれるほどに身体に接近すると、次はいよいよ人間そのものの改良が本格化するかもしれません。

 

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