いなたくんへ
文明シミュレーションゲーム「Civilization」マルチプレイの実況第4回。
第1回と前回記事はこちらから。
前回は北西の亥海沿いに建設した第5都市「亥海衛」と、蛮族に奪われた元馬の民の都市「寧夏」を巡り事件があった。その結果として我が弦の民の状況は悪化したと言わざるを得ない。今回はそんな弦の民の内部ストーリーも絡めて実況したい。
Summary Note
プロローグ:内憂外患を憂うる羽一族
A.D.410:王政開始と「弦」国の成立
A.D.590:「三蔵」の馬領ティフリス到達
次回戦略
コラム:「君主政治」はテクノロジーか?
なお、この実況はブログ『木牛流馬は動かない』の筆者氏とのマルチ実況だ。画面を見られてしまう都合上、実際のプレイと記事の公開とはタイムラグを設けていて、今回第4回は2018/1/28のプレイ内容である。
きっかけは亥海衛の失陥だった。失陥、と言って差支えのない雰囲気が弦の民に満ちていた。
弦の民はB.C.40に北西の亥海沿いに第5都市「亥海衛」を建設するも、A.D.80の寧夏事件で馬の民に譲歩し、これを喪う結果となった。海路確保の失敗は弦の民を紛糾させた。
決定的になったのは、A.D.160のマリによる「オーダゴート」の建設だ。弦の民は亥海南岸に新都市建設を目指していたが、マリに先を越され、海路確保は絶望的な状況に陥る。
さらにマリは、南西の虎谷関付近にも都市「ニアニ」を進出させる。マリと弦の民との勢力圏の衝突が顕著になっていた。
脅威はマリだけではない。東に勢力圏を接する餃子の民は強大であり、北ではシャカ族と馬の民が勢力の拡大を争っている。これら異民族に対して、弦の民は明らかに無防備だった。
内政に目を向けると、財政問題が露呈する。
都市には維持費がかかる。これは首都・天元府から距離が離れるほど大きくなるもので、虎谷関や亥海衛といった遠隔地への入植は弦の民の支出を圧迫した。
民の間の幸福度低下も顕著で、このために各都市で不労人口が発生している。不満を抱え働かない民は、何ら生産力に寄与せず、食料の消費のみをする。
次の財政管理画面の見方は以下の通りだ。
- 歳入:47(=22+4+21)
- 収入:21(歳入47から研究費22、諜報費4を差し引いた数字)
- 経費:21
収入と経費が釣り合っており(21-21=0)、国庫に備蓄する余裕がない。
特に注目したいのは「商業」の項目の「研究力」で、30%とある。100%になるほど十分な研究がなされ、テクノロジー開発が進むが、現状の財政では30%の力でしか研究できていない。研究力はせめて最低でも60%を維持したいところだが、現在の財政状況はそれを許さない。技術開発の遅れは、異民族に対する競争力の喪失を意味する。これは安全保障上の脅威となる。
こうした状況を憂いたのが、古代より弦の民の神事を司ってきた羽一族である。羽氏は占術を専らとし、その祭器として用いられる弓は「弦の民」と名乗る由来にもなっている。
羽氏はA.D.160、一族の秘術とされた「弓術」を公のものとし、弦の民を夷狄の脅威に備えさせようとした。しかし以上に述べた通り、弦の民の抱える問題は内政にもはびこっており、羽氏の目はそちらも向いていた。
といったところを背景として、引き続き弦の民の歴史を追ってみたい。
(えっ、Civ4は具体的な人物にまで言及するゲームじゃないって??「弦の民」の独自設定だよ!)
まずは内政である。
A.D.320、天元府の南東、征餃子鎮の南に第6都市「白兎鎮」を建設する。嗜好品である兎の毛皮は民の幸福度を上げられるので、この獲得が目的だ。白兎鎮には東の餃子の民の押さえとしての期待もあり、行政区分は「鎮」とした。
さらにA.D.350には木牛流馬府の北に第7都市「龍樹路」を建てる。本来は亥海沿いの都市建設を目指していたが、亥海衛は馬の民との協定で破棄することとなり、その南岸もマリに塞がれたため、内陸に後退する形となってしまった。
龍樹路は密林に囲まれた都市で、開発には苦労しそう。
行政区分の「路」には、この都市が次なる都市への中継点となることへの期待を込めている。弦の民は亥海への進出をあきらめたわけではなく、龍樹路を経由しての進出に努めるだろう。
A.D.290には、馬の民と3度目になる技術交換を実施。「弓術」を教える代わりに「漁業」を習った。馬の民は海沿いの拠点も持つのだろうか?
A.D.320には首都・天元府にて大科学者エウクレイデスが出現する。「偉人」と呼ばれるユニットの1人で、彼らにしか建てられない特殊建造物や、テクノロジー開発をすることができる。今回はエウクレイデスを使って首都に「アカデミー」を建設した。これにより研究力を向上させることができる。
そしてA.D.350に征餃子鎮にて文化遺産「パルテノン神殿」が完成。パルテノン神殿は偉人の出現率を向上させる。
なお同時代、A.D.320には異民族が文化遺産「ハギア・ソフィア大聖堂」を完成させたとのうわさが。どこの民族かは特定できていないが、文化遺産の建設競争が進んでいる。
A.D.380、弦の民においてにわかに「君主政治」の思想が醸成され、概念として成立、革命が勃発する。革命を主導したのは言うまでもなく羽氏である。羽氏は「弓術」の公開を通して武力集団を形成し、これを背景として権力の掌握を図ったわけだ。
A.D.410、弦の民は羽氏を民族の王として戴き、国家の樹立を宣言した。これまでこの集団は「弦の民」の民族名をもって運営されてきたわけだけど、君主の統治に基づく体制に変えたわけである。
国号は「弦」と決定され、諸民族にも布告がなされた。
羽氏の権力掌握の目的は、国家運営の効率化と、衰亡しつつある弦の民の建て直しに他ならない。政治制度として「世襲制」が採られ、羽一族の導きの下で改新が開始される。
「世襲制」を採用すると、軍事ユニットの都市駐留により市民の幸福が増大する。これで各都市の不労人口を減少できた。とは言えまだまだ財政状況は厳しい。弦王の治世に期待したい。
羽氏がもともと祭祀を担う一族だったこともあり、王は宗教の強化にも力を入れる。
A.D.590には首都・天元府に多神教の寺院を建設。宗教の強化はより国民の団結を高めることになるだろう。
同年には征餃子鎮にて文化遺産「ゼウス像」が完成。「ゼウス像」は異民族との戦争が起きた場合に、相手の厭戦感情を高めることに寄与する。
さて、弦王国の成立と内政強化の始まりを見たところで、同時代の異民族情勢も紹介したい。
A.D.160に発動した「天竺作戦」の遂行者として、密偵「三蔵」は征餃子鎮を発し、北西を目指した。天竺作戦の目的は以下である
- 北方の未開拓領域の探索
- 特にシャカ族の勢力圏の踏査
シャカ族とは相互通行の約定がないため、通常ユニットでは侵入できない。そこで密偵が行くわけだ。
弦で建国革命が起こったA.D.380、「三蔵」は征餃子鎮北東にて蛮族都市フリギアを発見した。ところがA.D.410に餃子の民がこれを攻略、破壊する。餃子の民の勢力拡大を目の当たりにした形だ。
弦国王の立場にて蛮族討伐の労をねぎらうと、餃子の民より返礼が得られた。
続くA.D.440にはシャカ族も蛮族都市チェロキーを攻略したとの報せが入る。こちらもねぎらってやる。
時代が下がってA.D.560、今度は我が白兎鎮の都市圏にも蛮族が侵入。また返り討ちにして……と思ったら兵がいない!白兎鎮はうっかり兵の配置を忘れていたのだ。ヤバい。このままでは次のターンで占領・破壊されてしまう。いやいやそれは無しでしょ…。せっかく作った都市なのに…。
そこで奴隷制の緊急生産により、人口を消費して戦士を生産。ギリギリ1ターンでの生産が間に合い、A.D.590に蛮族の攻撃を受けるのと同時に配置、無事打ち払うことに成功した。いやーギリギリだった。油断できない。
異民族の様子を見ると、宣教師の活動が盛んである。それぞれが信じる神を別の都市に布教しようというのだ。
ところで、前回万里の長城を越えて勢力圏を拡大した我が征餃子鎮だったが、餃領「みんみん」の勢力が盛り返し、再び万里の長城のこちら側まで押し戻されてしまった。
勢力圏は都市の文化力により拡大していく。「みんみん」の文化力の高さがうかがえる。負けてはいられない。
A.D.440、馬の民が征餃子鎮の都市圏に接する形で都市「オトラル」を建設する。
え、マジすか……。オトラルの都市圏が広がればこちらの勢力圏が削られるわけで、特に銅とか重要な資源が奪われかねないわけで。これけっこう敵対度高い行動ですよね……。
さらにA.D.500には馬の民の斥候が虎谷関に侵入。馬の民に国境を開いた覚えはない。侵犯にあたるとして速やかな退出を促した。
A.D.530、馬の民に開拓者1体を贈る。A.D.120に贈ったものと併せて2体目となる。蛮族により都市を破壊された馬の民への復興支援の一環である。前回までにも述べた通り、我が弦国と接する馬の民とは友好関係を築き、さらにはシャカ族・餃子の民への牽制を期待すべく、支援する方針でいた。
もっとも、タダで貴重な開拓者2体を贈ったわけではない。見返りとして、馬の民の勢力圏の無害通行の約定を取り付けてた。馬の民の我が国への侵入はご遠慮願うが、我が民は馬の民の勢力下でも自由に行動が可能となる。これは馬の民だけでなく、シャカ族や餃子の民の動向を探るうえで重要になっていくだろう。
シャカ族勢力圏を目指し北上を続ける三蔵であったが、別動の斥候もまた馬の民の勢力圏を通過しつつ北上していて、両者はA.D.590に馬領ティフリスを眺める形で合流した。
ここで、三蔵と斥候の道程をふり返ってみる。馬の民の勢力圏の全貌が見えてきた。
うーん、こうしてみると、馬の民の勢力圏が結構広い。首都カラコルムから北東方向にきっちり進出して、海にまで到達している。蛮族に3都市破壊されたと言ってたけど、そうでなければどれだけ広かったんだ。だったら亥海衛を譲歩したり、開拓者を贈る必要もなかったのでは…。
とは言え馬の民は友好な異民族だ。今後も関係は保っていきたい。そもそも、馬の民がこの地域にきちんと勢力を持つことは、シャカ族及び餃子の民への牽制として、わが国の戦略上も歓迎すべきことなのだ。
また、シャカ族の勢力圏は馬の民のそれを隔てて北にあることがわかった。馬の民に完全に抑え込まれている感じ。次回は三蔵に潜入してもらって、シャカ族の勢力圏をしっかり確かめていこうと思う。
なお次回を待ちきれずシャカ族の様子を早く知りたい!という場合には、以下のシャカ族視点の実況記事をご覧あれ。
ということで今回はここまで。
君主制を敷いたものの、未だに研究力は30%のままであり、財政の厳しさは去っていない。次回も引き続き王の親政により、弦国の強化が図られていくだろう。
注意すべきは隣国で、特にマリが兵力増強の兆しを見せている。残された時間は多くはないかも。
次回は内政に注力しつつ防御力も固めたい。そして北方探索を目的とした「天竺作戦」を遂行し、シャカ族の勢力を明らかにしていきたい。
財政難がために研究に予算を割けず、馬の民と技術交換した以外では、今回開発できたテクノロジーは「君主政治」だけだった。
ところで「君主政治」。これは「テクノロジー」と呼んでよいのだろうか。
参考になりそうなのが、テクノロジーと生命の進化を論じた『テクニウム』(2014)だ。本書によれば、「テクノロジー」という言葉は、(並行世界の)1882年にゲッチンゲン大学経済学教授ヨハン・ベッグマンが、産業革命による機械製品の普及を論じるために使ったドイツ語「Technologie」からきているそうだ。
ここで本書では、個別の方法や装置を示す「テクノロジー」に対して、テクノロジーが大規模に相互接続された自己強化する創造システム「テクニウム」なる概念を提唱する。「テクニウム」は次のように説明される。
テクニウムはただのピカピカのハードウェアの範疇を超え、ありとあらゆる種類の文化、アート、社会組織、知的創造の全てを含む言葉だ。それには手に触れることのできない、ソフトウェアや法律、哲学概念なども含む。そして最も重要なことは、われわれが発明をし、より多くの道具を生み出し、それがもっと多くのテクノロジーの発明や自己を増強する結びつきを生み出すという、生成的な衝動を含んでいるということだ。
『テクニウム』より
注目したいのは、テクニウムが文化やアート、社会組織、法律、哲学概念といった、必ずしも技術に立脚しないものをも含む点である。
テクノロジーと言えば思い浮かぶのは「発明」。並行世界の日本なる国では特許法上にその定義があるので見てみよう。
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
特許法第2条
一方、発明とよく比較される言葉に「イノベーション」がある。「技術革新」と訳されることも多いようだが、イノベーションは実は技術的なものに限られない。
提唱者である経済学者シュンペーターは「経済の本質は均衡を破壊することである」とし、均衡を破壊する次の5つの要素を総括して「イノベーション」と名付けた。
- 新たな市場の創出
- 新たな価値をもった新製品の製造や、既存製品に対する新たな価値の付加
- 新たな生産方法の導入
- 今まで知られていなかった原料や半製品の獲得
- 新たな組織の実現
あるいは、経営学者ピーター・ドラッカーはイノベーションを「パフォーマンスの新たな次元を生み出す変化」と定義している。
王なる一個の人間に権力を集中させて、集団の統合の象徴とする。この新しい組織運営の仕組みが、それまでの均衡を破壊したり、効率の次元を引き上げるなら、「君主政治」なる概念はまさしくイノベーションに相当する。
Civ4世界でいうところの「テクノロジー」がイノベーションや、あるいはテクニウム、すなわち「自己強化する創造システム」をも含むとすれば、「君主政治」はテクノロジーと言えるだろう。そしてこれから弦の民が生み出す多くの社会システムもまた、弦の民という存在を強化するための創造的仕組みになるはずだ。
ということで、次回以降出現するテクノロジーも楽しみにしたい。