未来予測のためのSF小説

未来予測のためには、SF小説も読まなければ!
今回言いたいことはこの一言だけで、別におススメのSF小説を紹介するとかでは全然ないですすみません。理由は「経営学者のためのSF」で翻訳されている、ノア・スミス氏のブログポストの言及の通り。

実のところ、ほとんどのSFは経済学についてのものだ。たいていの未来についてのビジョンでおもしろいのは、新しくてカッコいい何かについての技術的なことじゃなくて、その社会的な影響だ。

同様のことは、SFをSFと侮るなという文脈で、P・W・シンガー著『ロボット兵士の戦争』でも述べられていました。

シャーリーによれば、SF作家がしばしば作り出す架空の世界がSFを構成しているのではない。科学が物語のプロットを直接動かしているわけでもない。むしろ、SFは受け手を、科学が社会に及ぼす影響と格闘させる。「興味深いのは技術じゃない。技術に人間がどう対処するか」だと、シャーリーは言う。ほとんどのSFは、新しい出来事や技術がもたらすある種の、普通は政治的な副産物を扱っている。

※注:シャーリーはSF殿堂博物館艦長のドナ・シャーリー

本書では具体例として映画『マイノリティ・リポート』を挙げ、当作品が技術そのものでなく、技術が確立した場合においける政治的・法的影響をテーマとしていると指摘します。

私はSFが「ほとんどが経済学」とは思いませんし(経済学的な要素はいずれも含むのではありましょうが)、「新しくてカッコいい何かについての技術的なこと」も大好きです。
そしてそれに加えて、未来の社会についての思考実験という意味合いでも、SFは重要だと考えます。
ということで、なるべくSF小説読んでいきたいです。時間次第ですが‥。

なお、SFはファンタジーとの境目が微妙なところですが、SF作家山本弘の定義によれば、「超常的な存在から逃げるのがホラー、交流するのがファンタジー、思考停止せずに研究するのがSFである」とのことでした。
ジェイムズ・ホーガンの『星を継ぐ者』はそうすると、SFよりもファンタジー寄りでしょうか。『星を継ぐ者』もテンポよくておもしろかったです。

星を継ぐもの (創元SF文庫)

SF作家に予測された未来

SF作家達が未来を言い当ててきたことは、『ロボット兵士の戦争』で具体例が挙げられていました。一部を引用します。

ミルンは愛すべき『くまのプーさん』で有名だが、1909年に「陸軍飛行機の物語」と題するSF短編を書いている。ライト兄弟が初めて空を飛んでからわずか6年後に、人間はいつの日か、それらの常軌を逸した機械を戦争に使うかもしれないと予測したのだ。

ウェルズの最も重要かつ影響力のある予測は、おそらく1914年の『開放された世界』に出てくる。放射性物質でできた新種の兵器を予測し、「原子爆弾」と呼んだのだ。

シャーロック・ホームズの生みの親であるアーサー・コナン・ドイルは、第一次大戦が始まる直前の1914年に短編を書いた。『危険!』というタイトルで、新たに発明された潜水艦が商船を沈めるのに使われる可能性について警告する内容だった。英海軍本部は実際、「どの国もそうした行為を許さず、そんなことをする将校がいれば撃たれるだろう」と、公然にコナン・ドイルに反論し、彼を嘲笑した。それからちょうど7か月後、客船ルシタニア号がドイツ軍のUボートに撃沈され、水中戦の時代が幕を開けた。

『ロボット兵士の戦争』より

『ロボット兵士の戦争』は全体が無人機の軍事利用の話なので、逸話もほとんどが軍事関連の話になってます。『20世紀軍事SF傑作選』(20世紀に書かれたSF短編を集めたもの)に登場する34の技術について、現在米軍により開発されていることも指摘していました。

フィクションが根拠であっても、それをもとに未来を予想するというのは意味のあることのように思います。「事実は小説より奇なり」と言いますが、すでにされた想像の中に未来のヒントはあるのです。

とはいえ、技術の発達や、それがもたらす未来を予想することがいかに難しいかは、、同書の次の記載からうかがえます。

1903年10月9日付のニューヨーク・タイムズ紙の記事は傑作だ。「実際に空を飛ぶ機械が、数学者と機械工の協力と普段の努力によって発明されるまでには、百万年から10万年かかるだろう」と、同誌は予測した。まさにその日、オハイオ州で自転車店を経営していたふたりの兄弟が、史上初の飛行機を組み立てはじめ、数週間後には空を飛んだのである。

IBMの社長であるトーマス・ワトソンは、1943年にこう言ったことで知られる。「コンピュータは、売れても世界全体で5台だろう」

『ロボット兵士の戦争』より

 

SFな技術も次々に実現

「未来の社会のシミュレーション」という観点でSF小説を読むのは非常に有用、というのが今回の結論です。
が、SFで外せないのはやっぱり技術。登場するガジェットたちです。社会のことをよそに置いて、技術に注目するだけでも十分楽しめます。そんな空想の技術が実現するとワクワクしますね。

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あとは2015年までに車が空を飛ぶのを待つばかりです。
 

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