ゲームに最適化されていく世界

近年ゲームの社会的認知度は上がっていて、プロスポーツ化もされてるようです。

エレクトロニック・スポーツ(Electronic sports )は、複数のプレイヤーで対戦されるコンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ競技として捉える際の名称。実際はe-Sports(eスポーツ)と省略した形で使われることのほうが多い。
オンラインでの大会や高額な賞金(『League of Legends』では総額6億円)のかけられた世界的な規模の大会などアマチュアからプロフェッショナルまで競技が行われている。プロチームやプロリーグも多数あり、中には年収1億円を超えるプロ・ゲーマーも存在する。世界のeスポーツ競技人口は5500万人以上。

エレクトロニック・スポーツ -wikipedia

クーリエ・ジャポンのコラムによれば、米国を中心に市場は拡大しており、2011年の世界の売上げは740億ドルとのことです。
日本人だと、格闘ゲームでプロとして活躍する梅原大悟さんなんかが知られてますね。

ただ、「スポーツ」と言いこそすれゲームはゲーム。サッカーやバスケットといった現実のものに比べて、まだ社会的イメージが高くはない現状があるように思います。
例えばあなたの10歳の子供が「プロのゲーマーを目指したいから、これから毎日特訓する!」と言い出したらどうしますか?
晴れてプロになれればいいですが、狭き門をくぐれなければただのゲーマーです。同級生が日々グラウンドを駆け回る中で、放課後毎日コントローラーを握る姿は、どうしても暗い。サッカーとかだと「鍛錬」になりますが、ゲームには「娯楽(それも退廃的な)」というイメージが拭えません。

じゃあゲームに打ち込んで得たスキルは全然役に立たないのか? というとそれはどうなんでしょう。


戦争で重宝されるゲーム世代

ロボットを含む無人兵器の現状と未来を書いたP・W・シンガー著『ロボット兵士の』戦争。このなかで著者は、ゲームで育った若者の持つ新兵器運用の素養について述べています。

軍にとっての明らかなメリットは、新兵がある程度訓練を受けた状態で入ってくることだ。オンラインゲームに費やした時間のおかげで、若い兵士は無人システムを使うことにすぐ慣れる。(中略)

パックボットを操縦する若者は普通、一日半ほどあれば基本をのみ込む。ゲームの場合と同じように、その後ほんの数週間で、あらゆる動きを理解し、エキスパートの域に達する。

注:パックボットはルンバで有名なiRobot社による陸軍向けロボット

具体的な事例としては、イスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」でロケット弾を迎撃しまくるエースの話とか。

こういう事例を見ていくと、敵国の攻撃に遭った民間人の少年が偶然近くの軍用機に乗り込んで「こいつ…動くぞ…!」「すごい、5倍のゲインだ」とか言っちゃう展開もあり得なくはなさそうに思えるのです。

もっとも、戦争はわかりやすすぎる一例かもしれません。戦争に関するゲームは数多ありますが、サラリーマンの毎日を追うゲームは無いですからね。かといって戦争だけが特別なゲーム能力の活用先かというと、そういうわけでもなさそうです。

ロボット兵士の戦争

無限に広がる庭を駆け回る子供たち

流行りのゲーム『どうぶつの森』に関して面白い話がありました。

賛否両論(というか主に批判)ありそうですが、私こういう話大好きです。
みんなで遊んでて謎の侵入者見つけて対処するとか、イベントとしてはおいしすぎです。彼らの中では「あの日こんなことあったけどなんだったんだろなー」と思い出として語られていくことになるでしょう。
鬼ごっこしてたら近所の知らないお兄さんも乱入してきたとか、子供の頃はありましたけど、要はそのゲーム版ってことですよね。このご時世だと色々厳しいので、あんまり軽いことは言えないのかもですが。
 

上司と飲み会に行く途中、喫茶店のテーブルを囲んで黙々とPSPを構えるグループがいました。多分モンハン。それに対する上司のコメント。

「せっかくみんなで集まってるのにずっと黙ってて、何が楽しいんだろね?」

上司には彼らが無言に見えたのかもしれません。でも私は、あれは無言じゃなかったんだと思ってます。
オンラインゲームのチャットがわかりやすい例ですが、空気を震わせるのか、電気信号を使うのか、媒体に違いがあるだけで、言葉や意思の伝達であることに変わりはありません。仮想世界とは言え同じ場所に揃って、互いに行動し合うことも、立派なコミュニケーションと言えるはずです。むしろ仮想世界の方が、現実や肉体に縛られないことで、より柔軟な体験を共有できたりします。
(もちろん現実世界が仮想正解に劣るという意味ではなくて、私は放課後の校舎での鬼ごっこやサバイバルゲームの臨場感は、電子ゲームでは絶対勝てないと思ってます)
 

人間同士の「コミュニケーション」の方法が拡大していることに、気付かなければなりません。この拡大はゲームに限らず、日常生活からビジネスにまで及びます。
そこで新たに必要とされるスキルを身につける場の1つが「ゲーム」なのです。

以下は『ロボット兵士の戦争』の一節ですが、述べられていることは戦争に限られた話ではなさそうです。

同時に携帯電話で話しながら、青春をオンラインゲームに費やしてきた若い無人飛行機パイロット達にとって、複数の仕事をこなすことは、すでにDNAに組み込まれているので楽勝だ。(中略)

こうしたパイロットは一度に複数の任務をこなすことにかけては驚異的だ。座って一度に4つの画面を見つめて、地図や兵器や燃料などいっさいを監視すると同時に、傍らにいるパイロットの画面までのぞいて、彼が何をみているのか知ろうとする。すべてああいったゲームの影響だ。私のような一昔前のパイロットは、チェックリストを一つひとつ見ていくように教わった。若いやつは一度に全ての画面を見る。

『ロボット兵士の戦争』より

 

ゲームに最適化されていく世界

一般の生活やビジネスをゲームの方法論に落とし込んでみる、というゲーミフィケーションという考え方があります。

ゲームデザイン手法や仕組みを用いて問題の解決やユーザー契約などを獲得すること。例えば、既存のシステムやサービスへの、ポイント性、順位の可視化、バッジ、ミッション、レベルシステムの採用など。さらにゲームの要素を盛り込むことによって楽しみながら意図せずそれらと関わっていってもらうことが目的で行われる場合もある。

ゲーミフィケーション -wikipedia

多くの人がゲームという共通体験を持ち、行動原理を身につける(あるいは全員が潜在的に持っている)ならば、ゲームは一つのプロトコルと見なせるでしょう。いま、このプロトコルが現実に適用され始めています。
ゲームを「人をいかにしてゴールまで誘導するか」という学問だと捉えると、これまで大規模な社会実験が行われていたことになりますね。その実験の成果の応用段階にあるわけです。

現実の世界がゲーム化されていくなかで、ゲームの方法論を知ることは、これからは欠かせないスキルになってくるかもしれません。

 

ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足 ゲームにすればうまくいく―<ゲーミフィケーション>9つのフレームワーク

 

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